信用を落とす「やめるべき3つの権威付け」

黒坂岳央です。

社会を有利に、効率的に渡っていくには「権威付け」を上手に活用するべきだ。「人は中身が大事」という言葉があるが、現代社会はあまりにも情報過多で忙しいため、権威付けをしなければ相手にされないという本質がある。

YouTubeなど情報発信をする際は「現役医師が教える医学部受験対策」とか「弁護士が解説する◯◯事件」など、チャンネル名やタイトルで権威付けをしているからこそ「では話の中身がしっかりしているに違いない」と見てもらえる。

筆者にはよく海外企業から仕事の依頼や請負提案が来るがメールの文面には「弊社はアメリカのNASDAQに上場している会社で…」と自社の権威付けがなされている。

だが、この権威付けを間違って使うことで、逆に信用を落として損をすることも少なくない。

RyanJLane/iStock

自費出版とKindle出版

SNSで「これまで◯冊出版済」という過去のビジネス実績をPRするアカウントを見かける。興味が湧いて覗いてみると、中には自費出版、Kindle出版というケースがある。

もちろん、何も悪いことはしていないし、嘘も言っていない。問題は「過去のビジネス実績」として輝かしいPRとしてそれを使ってしまう点にある。過去に本を出した人間なら、おそらく知らない人は皆無だろうが、書籍出版には「商業出版、自費出版、Kindle出版」の3つがある。

出版社からオファーをもらい、原稿料と印税契約を経て「お金をもらって本を書く」のは商業出版だけである。自分からお金を払って「お客様の立場」で自分史など、基本的に好きなことを書かせてもらえるのが自費出版。出版社を通さず、誰でも好きなことを書けるのがKindle出版である。

Kindle出版は誰でもできるし、自費出版はお金を払えば誰でもできる。しかし、商業出版は基本的に向こうからオファーが来るのを待つケースがほとんどだ。

自費出版、Kindle出版で誇らしげに「とうとう全国の書店に念願の本を出します!」といった体で権威付けしようとすると「商業出版が出来なかったから自費出版に頼った人」といった負の印象を持つ人は一定数いるのだ。ちなみに自費出版では有名書店に並ぶ保証などないことで知られている。

真に出版実績を誇らしげにPRしたいなら、商業出版であることは当然として「重版の数」を出すべきだろう。

最高月収(月商)

SNSでちょくちょく見るプロフィールが「最高月収(もしくは月商)」という表記で、「いかに自分のビジネスがうまくいっているか」をPRするケースがある。そもそも論として、こうしたPRを下品に感じる人、怪しいと感じる人を増やしてしまうという話ではあるが、このPRのやり方の何がダメか?ということを取り上げたい。

ビジネスをある程度やるとわかるが、重要なのは最大瞬間風速的な売上ではなく、安定的な売上である。なぜなら高い月商はその気になれば作れるからである。極端な話、「最高月収1000万」よりも「月収100万円を10年連続」という方が遥かに難しいのだ。

たとえばどんなビジネスでも強い追い風が吹く瞬間というのがある。その時に広告宣伝費に糸目をつけずに投下すれば、1年分の売上を1ヶ月で出来てしまうこともあるのだ。また、通販業界では有名テレビ番組に取り上げられることで、半年分の売上が数日で来ることだってある。

中には数年間、資産運用で銘柄を「ガチホ」した後に、利益確定をした瞬間を「最高日利」としてPRする人もいる。厳密に言えば、数年間かけて利益を蓄積したわけなので日利ではなく、◯年利という方が正しいだろう。

最高月商、最高月収をPRされればされるほど、「おそらく”最高月以外”は売上が低迷しているのだろう」と痛くない腹を探られるということが起きる。

全身ブランド

筆者も若い頃、一時的にくだらない承認欲求を爆発させ、つまらないPRをしていた時期があったのであまりえらそうなことはいえないが、全身ブランドでお金持ちPR的な威嚇は止めたほうがいいだろう。

中には「自分は純粋にブランドが好きで自慢するためではない。周囲も儲かっている人に囲まれているのでブランドが自慢の種という認識ですらない」という意見もある。それ自体は事実かもしれないが、問題はあくまで周囲や利害関係者がどう感じるか?という「メタ認知」ができるかだ。

自分がどう考えても、全身ブランドに眉をひそめる人は一定数存在する。それでビジネスや対人関係で損をするなら、やるべきではないという構図になる。全身ブランドづく目の人に嫌悪感を示す人が、わざわざ彼らのブランド理論に耳を貸してくれる、とは考えるべきではないだろう。結局、人は見た目で判断されるからだ。

権威付けは強力な武器になる。たとえば「医師」という肩書きを見せられれば、ほとんどの人はそれだけで無条件に相手の話を信用してしまうだろう。だが、自分が権威になると思っているものが、実は信用を落とす逆効果になることもあり得る。誰もがSNSを使う時代だからこそ、相手から自分はどう見えているか?というメタ認知が重要なのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。