クリスマス市場に車が突入、多数の死傷者

ドイツ東部のザクセン=アンハルト州の州都マクデブルク市(人口約24万人)で20日夜(現地時間)、市の中心部で開かれているクリスマス市場に一台の車が突っ込み、多くの訪問客がひかれ、少なくとも4人(一人の子供を含む)が死亡、205人以上が負傷した。そのうち、127人は重傷という。最寄りの病院に運ばれた。クリスマスを4日に控えた週末、多くの市民たちが家族連れで市場を訪問していた。市場内はパニック状況となった。

マクデブルクのクリスマス市場は事件後、閉鎖された
2024年12月21日、オーストリア国営放送オンラインのスクリーンショットから)

男は車を400メートル走行させた後、警察官に現場で取り押さえられた。犯行動機はまだ明らかになっていない。警察当局によると、犯行は単独と見られている。車はBMWのレンタカーだった。車の中に銃器や爆発物は見つからなかった。クリスマス市場は閉鎖された。

複数のメディアによると、市場内を暴走した男はタレブ・Aと呼ばれ、サウジアラビア出身の50歳の医者(精神科/心理療法の専門医)で、2006年からドイツに居住している。独週刊誌「シュピーゲル」の情報によると、容疑者は2006年3月に研修のためドイツに来て、同年7月に難民として認定されている。

男は長年活動家として、主にサウジの女性たちに国外脱出方法をアドバイスしたり、ドイツの亡命制度に関する情報を掲載したウェブサイトも運営していた。男はプラットフォームX上で自分がイスラム教の反対者であり、ドイツの極右「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持者であることを明らかにしている。

ドイツでは2016年12月19日、首都ベルリン市中央部にある記念教会前のクリスマス市場に1台の大型トラックがライトを消して乱入し、市場にいた人々の中に突入しながら暴走し、13人が死亡、70人以上が重軽傷を負うという「トラック乱入テロ事件」が起きた。

犯人はチュニジア人で、同月23日、逃亡中、イタリアのミラノ近郊で警察官の職務質問を受けた際、銃撃戦となり、イタリア警察官に射殺されている。ちなみに、ドイツ警察側は犯人を久しく「危険人物」としてマーク、イスラム過激テロ組織(IS)と接触していた事実も掴んでいたが、ベルリンの「トラック乱入テロ事件」を防止できなかった。

マクデブルク市の容疑者は、8年前のベルリンの無差別テロ事件を意識し、車両によるクリスマス市場でのテロを考え出したのかもしれないという(「大型トラックが無差別テロの武器」2016年12月21日参考)。

欧州では2015年、中東・北アフリカから100万人以上の難民が殺到した。その直後から欧州ではイスラム過激派テロ事件が頻繁に起きている。2016年のフランス革命記念日の日(7月14日)、フランス南部ニースの市中心部のプロムナード・デ・ザングレの遊歩道付近でチュニジア出身の31歳のテロリストがトラックで群衆に向かって暴走し、86人が犠牲となった事件が発生するなど、トラクターなど車両を利用したテロが頻繁に発生している。

欧州のテロ専門家は毎年、「クリスマス市場がテロのターゲットになる危険性がある」と警告を発してきた。例えば、ウィーン市最大のクリスマス市場、市庁舎前広場の市場では路上から市場に大型トラックが侵入できないようにコンクリート製のポラードが設置されている。マクデブルクのクリスマス市場でも市場入口に車両侵入阻止が一応行われていたという。

マクデブルクのクリスマス市場襲撃事件が報道されると、ドイツばかりか欧州全土に大きな衝撃を投じている。キリスト教社会の欧州では現在、クリスマス一色で多くの人々が24日のクリスマスイブを控え、浮き浮きした気分となっている時だ。ショルツ独首相は「絶対に許されない蛮行だ。犠牲者には哀悼の意を表する」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年12月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。