没落したハリウッド映画

クリスマスなのでソフトな話題を振ってみたいと思います。

実は私の周りで「Timelesz Project -AUDITION-」(略称 タイプロ)にはまっている日本人が多いのです。 これはアイドルグループTimelesz(旧 Sexy Zone)のメンバー補充に関するオーディション企画を現在進行形でネットフリックスを通じて行うという企画ものです。応募者数約19000人から審査を経て絞り込まれていく状況を毎週アップデートしていく内容です。新しい切り口としてユーチューブとクロス放送しており、ネトフリで見られない裏内容がユーチューブ番組にあったりするのでハマる人には久々の大ヒットになっています。今のところ1月終わりぐらいには結果が出そうです。

なぜこれにはまるのか、私も結構見てしまったのですが、20代の男性が今までかいたことがことがないような汗をかき、チームダンスに悪戦苦闘し、時として指導者からの激しいダメ出しや叱咤激励でプロの世界の厳しさを垣間見ることができるからでしょうか?決して女性向けの番組というわけではなく、20代の若者の葛藤と苦悩という観点から男性である私が見ても非常に興味深い内容です。

なぜ私がこれを見たか、と言えばネトフリに見たい映画番組がない、これに尽きるのです。まだ集計は終わっていませんが、日本の2024年映画興行ランキングは12月15日時点で1位から10位のうち8本が日本映画、2本が外国作品ですがそれは両方ともアニメ。つまり、2024年に実写の外国映画は1本もランクインしていないのです。

ハリウッド映画が衰退の危機にある理由は素人ながらいくつか思いつきます。まず、映画館に行くという行為が休暇の過ごし方の主流ではなくなったこと、この10年以上スーパーヒーロー(ヒロイン)ものの映画に頼り過ぎ、過去のヒット作の続編ラッシュであったこと、ハリウッドが新しいスターを生み出さなくなったこと。それこそ、アクションならトム クルーズで終わってしまった感があります。更にストライキも影響したし、映画製作費の暴騰もあります。

Rudy Salgado/iStock

ご承知と思いますが、映画の資金調達は企業による出資もありますが、投資家に頼ることが多いのです。その場合、必ずヒットする法則を求める傾向が強いため、過去のヒット作品の続編に資金が流れやすいのは投資家としては大失敗しないリスクヘッジだともいえます。これが逆に新味の映画を生み出さなくなったともいえるでしょう。

私はハリウッドは既に没落した映画帝国だと思っています。監督のこだわり、俳優の癖、出資者の意向、そして観客の反応が全てバラバラなのです。これでは期待した映画は作れないのです。

日本でもアニメ映画が流行るのは制作費の問題と共に俳優の扱いが楽なことはあるでしょう。日本の映画俳優だけ見ても昔は「銀幕のスター」でしたが、今では扱いは小さくなっています。映画撮影の裏側話では演技が下手で使えない俳優とか性格がひねくれていてマネージャーらがなだめすかし、おだてながらどうにか出演してもらう話なども耳にします。つまり面倒くさい俳優が増えたのです。

一方アニメは既にコミックで人気の尺度が分かっているので結果が見えやすいこともあります。同様に邦画の実写版も小説を題材にしたものが多いのはそのネタ本の出来栄えや評価、人気具合が分かっているからでしょう。平たく言えばアニメ映画はリスクが低く、コストも低く、制作プロセスも実写に比べてはるかに楽、ということでしょう。なんだかなぁという気はします。

以前、韓国の「イカゲーム」を見た方も多いでしょう。韓国発の映画やドラマシリーズは安定的にヒットしています。個人的にはエンタテイメント要素が強く、一度見始めると止まらなくなりやすい内容が多いと思います。邦画は作品の質を深く追求するので韓国のそれとは一線を画し、芸術作品としてみる必要がありますが日本の独特の文化を背景としたものがあるので外国では理解しにくいこともありそうです。

弊社の書店部門から見えるのはこちらの人は日本のホラー物が大好きです。漫画の場合、あの独特の絵のタッチがたまらなく良いそうです。アニメの世界はアメコミ(アメリカンコミック)とジャパニーズ アニメに分類できるのですが、ホラーもアメリカンホラーとジャパニーズホラーが二大ホラーと言ってよいでしょう。アメリカンホラーは殺人鬼に若干のサイキックなテイスト、日本はサイキックが主体ですが映画でも編集技術がアメリカのそれとは違った恐ろしさを醸し出しています。そのホラー映画も最近はアメリカも日本もパッとしたのがないのが寂しいところです。

ハリウッドスターやロスの映画業界が論外な報酬を求める以上、ハリウッドから刺激的な作品は消え失せるだろうとみています。アメリカが製造業を失っていったように映画産業も諸外国に流れてしまうのは現状では確実でしょう。ロスアンジェルスの映画界の没落でもあります。それに対して誰一人クレームしていないし、アメリカ人からハリウッドムービーに期待しているという声もあまり聞かないということは確実なゲームチェンジが起きているということでしょう。

正月映画と言えばジェームスボンドの007だったのですが、お正月の風物詩もどこへやら、ですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月24日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。