世の中は「映え」がお好き

近年の飲食店はレベルが上がったと思います。いや、上がらないと経営できないところまで追い込まれています。それはインスタ映えが味や価格と同じくらい重要な選択エレメントになってきていることもあるでしょう。事実、メニューに並ぶ写真にしろ、実際の盛り付けにしろ「WoW!」というものが増えてきたように感じます。

ブルームバーグによると、2025年にはやる食べ物は巻き寿司だとか。それも海苔を全部巻くのではなく、上の部分は巻かずにシャリの上に具材のトッピングで魅せるのです。おにぎりの巻き寿司版ですね。絵的には確かにこちらの方が圧倒的に受けます。カラフルな色合いの様々な具材がのった手巻き寿司を「はい、どうぞ」と手渡されれば思わず、「おいしそう」という言葉がこぼれてきそうです。これなどもインスタ映えを意識したトレンドの典型です。

では「映え」は写真だけなのか、と言えば私が感じた最近のトレンドは、自己アピールも「映え」が必要なのではないかという気がするのです。

daruma46/iStock

数日前にご紹介したTimeleszのオーディション番組、「タイプロ」で節目となる第5次に進む12名の審査発表があったのですが、その番組を見て思ったのはハンサム、ナイスルッキング、踊りも歌も上手で格好良い若者たちがよく泣くのです。特に審査で落選した6名の泣きぶりはカメラワークもあったのでしょうけれど「パフォーマンスか?」と思わせるほどでした。多分、これが「映え」になるのではないかと私は分析しました。

最近は自分の感情を表に出すことなく、能面面(のうめんづら)で日々の生活が楽しいのか、苦しいのかすら読み取れない方々が増える中で、ダンスの躍動感と笑顔や涙という人間らしさが私には奇妙に懐かしかったのです。昔テレビで見た甲子園球児のような感じです。その点でオーディションに出る人たちは20代中盤ぐらいの人が多い中で「そうかぁ、もしかしたら彼らは10代の青春時代に感情表現をする機会がなかったのではないか」とすら勘繰ってしまいたくなるのです。

「映え」的に押したのが石丸信二氏だったと思います。「今年の人」と言えばタイム誌が選ぶ特集が有名ですが、あれは世界バージョン。日本だけ見れば私は石丸信二氏が作り上げた「人間映えスタイル」が日本、特に若い世代を変えたと思います。

日本のみならず世界全般を通して言えるのは、社会を均質化しようとする流れです。特に業務に於いてはかつてのマニュアル縛りというより、AIやロボット、IoTといった機械相手の仕事が増えてきたために、人間のやる仕事が機械に制御されている状態になってきています。これは着実に没個性化を進めます。スマホを片時も離さないのも個人的には知らず知らずのうちに人間の同質化を進めていると思います。AIが判断する答えは枠組みから外れないのです。

その中でそう来るか、と思わせたのが石丸氏であり、兵庫県の斎藤知事に対する賛否も「映え」的には面白い題材だったと思うのです。そこには読めないドラマがあるのです。

最近、有名人のコメンテーターたちの番組がつまらなくなった気がするのですが、理由は彼らのコメントに「映え」がないのです。かつては「そうきたかぁ」と思わせるコメントも多く、メディアが煽ることで一時的なブームだったと思いますが、彼らは所詮コメンテーターであり彼らそのものが「映え」ではない点で飽きられてきたと思います。

では「映え」の横綱は誰か、といえば私は迷うことなくトランプ氏とイーロン マスク氏を挙げます。理由は言うまでもありません。この2人の言動は先が読めないのです。故に注目され驚きの発言をするたびに注目が集まる「映え」が完成するのです。

同じ驚きの発言にしても、例えば1年ぐらい前に話題になった成田悠輔氏も学者としての発言なら面白かったのに、バラエティ番組のコメンテーターに成り下がってしまったからちっとも面白くなくなったとも言えるのです。つまりトランプ氏にしろマスク氏にしろ本業としての発言とその発言に対する実行力を伴っていたことに最大の意味があるのです。

フィリピンのドゥテルテ元大統領やアルゼンチンのミレイ大統領もその発言と行動が伴っている点で話題になっていると考えています。特にミレイ氏の場合、「自分は経済学者である」という自負を持っているところがポイントなのです。

もしも皆さんの中に自分も「映え的生き方」をしたい方がいればそれは良い傾向だと思います。なぜなら自分で考え、発言し、実行までしなくてはいけないのです。時として時代に逆行し、バッシングや批判を受けるかもしれません。失敗すれば韓国の大統領のようになるかもしれません。が、私はスマホ縛りの人生よりずっと楽しいだろうと思います。それこそ、「やってみなはれ精神」で枠から飛び出す人生もアリじゃないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月29日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。