「準備ができたらやる」が一生準備中で終わる理由

黒坂岳央です。

「今準備中ですが、いつか必ずやろうと思っています!」

これまで数え切れないほど聞いてきたセリフがこれだ。

熱く願望を語る人の気持ちを挫く趣味はないので否定はしない。だが、現実問題、準備して実行に移した人を自分がほとんど見たことがないのだ。

本稿ではその原因を論理的に取り上げ、ではどうすれば解決できるのかを考察する目的で書いた。

mapo/iStock

準備のまま終わる人が見落としていること

「今準備をしています」という人が一生準備中のまま、行動に移さない理由を考えたい。

まず、準備で終わる人は人間感情の脆さを知らない。人間の感情は瞬間的に高出力となり、そして持続せずすぐに消えるという性質を持っている。

たとえば誰でも侮辱をされたら、怒髪天を衝くような激しい怒りに打ち震えるだろう。しかし、24時間以上に渡って同じレベルの怒りを持続することはほぼ不可能に近い。

「脱サラして起業したい」といった規模の大きな願望も同様である。会社で嫌な思いをして「こんな会社やめてやる!」と瞬間的に考える。だが、実際に退職届を出し、開業届を提出するという行動に至るまでにその感情は雲散霧消する。

準備で終わる人は今、瞬間的な感情を捕まえて「今準備中だがいつか実現する」と言っているのだ。感情でなんとかしようと思っている内は実現しないと考えた方がいい。

持続的な行動、そして願望成就とは感情ではなく、環境整備と習慣化の技術の合せ技で実現するものだからだ。

理想は「走りながら考える」

ではどうすればいいか?それは「まずやってみる。そして走りながら続ける」である。これは習慣化の技術の一つである。

もちろん、最低限の準備はする。たとえば登山を趣味にしようと考える場合、クロックスとTシャツで挑むのはさすがに無謀である。だが、最強装備を整えて「いつかエベレスト登頂を」となれば、間違いなく一生準備中で終わる。

そこでやるべきは、一般的な登山スタイルで近場の初心者向けの山に登ってみるのだ。そうすることで文字通り、山のようにデータが取れる。「登山という競技は楽しいのか?」「登頂から得た知見と改善点は?」こうしたデータを分析して、また別の山に登る。これを繰り返す過程でレベルを上げていけばいい。

一般的に小さく始めることの効果の大きさは非常に過小評価されている。「エベレスト登頂を目標にするのに、高尾山なんかに登っても時間のムダ」と思ってしまうのだ。だが、そもそもの登山の適性や自分の体力の確認、装備品の改善点などやってみないと分からないデータを取るには、小さく始めるのが一番だ。

これがもしもやる前から「1つ目はここ、2つ目はここ」と綿密に計画を立てると一気に挫折率が高まる。なぜなら最初に「こうするぞ」と自分を縛り付けると、「やりたい」という願望が「やるべき」というタスクに変わり、そうなると仕事と同列に扱われることで億劫になる。そして「自分はまだ準備中なのだ」という行動しない言い訳をし続けて年単位の行動しない期間を作ってしまうからだ。

そのため、まず小さく始める。そして走りながら改善点を考える。そうして少しずつ経験値と改善を繰り返していけば、気がつけば初心者、中級者、上級者へとステップアップしていくのだ。

入念な準備は要らない

筆者はこれまでの人生で新たな挑戦をする上で「準備」はあまりしたことがない。YouTube配信は手元にあったPC内蔵カメラを使って始めたし、記事執筆はプリインストールされていたMicrsoft Wordに書いて出してみた。その他、気になったらまずやってみる。

「いやいや、しっかり準備しないと失敗するではないか」という反論もありそうだが、むしろ自分は早い段階でたくさんの失敗を出すべきだと考える。本質的にその活動が向いているかどうかを見定められるからだ。

「ちょっとやってみたがうまくいかないのでもうやめたい」なのか「失敗するほど”どうすればうまくできるか?”という探究心が湧き上がって、1日中そのことを考えてしまう」なのか。その違いで分野への適性も正確にわかる。特に適性は実際にやってみないと絶対にわからないので、小さく始めて早い段階で見定めたいところである。

人生は準備ばかりしていられるほど長くはない。やりたいと思ったら週末に即やってみるくらいの行動力がほしいところである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。