「海外で稼いで、国内で生活する」のが賢者の戦略

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昨年は新しいNISAが導入されたことで若い世代を中心に投資ブームに再び火が付きました。その中でNISAに組み入れる人気商品となったのが通称「オルカン」と呼ばれる全世界株式に分散投資をするインデックスファンドです。

昨年1年で約2割の上昇となり、アメリカ株のインデックスであるS&P500に連動する外国株式インデックスファンドと並ぶ大量の資金流入となりました。

世界全体から見ると、日本経済の相対的な衰退は明らかです。為替の円安傾向もあって日本国内で得られる所得も外貨換算では上がらず、日本よりも海外で仕事をするべきという意見もあります。

しかし、忘れてはいけないのは海外に行けば収入は増えるかもしれませんが、生活費も高く必ずしも経済的に豊かになれるとは限らないことです。

言葉の壁もありますから、ITリテラシーや寿司職人のような特殊なスキルが無ければ、むしろ収入が下がる可能性もあります。

また、海外での生活には治安の問題もあります。終電で寝ていても、財布を落としても盗難騒ぎに巻き込まれないのは日本くらいのものです。

更に食の問題もあります。日本は物価が上がったとはいえ、大都市にいれば牛丼は未だに24時間3ドルで食べられます。高級寿司も高いとはいえ、ニューヨークやロンドンに比べたら半値以下。しかもクオリティは東京の方が高いのです。

「コスト・オブ・リビング(生活費用)」と「クオリティ・オブ・リビング(生活の質)」を考えれば、少なくとも日本人にとっては日本で生活するのがベストです。

とすれば、最適な戦略は「海外で稼いで、国内で生活する」ことです。

海外で稼ぐためには自分が海外に行く必要は必ずしもありません。自分の持っているお金に海外で稼いでもらえば良いのです。

その意味では昨年から加速している個人投資家の外貨投資という流れは理にかなった投資行動と言えます。

海外移住を考えるのなら、その前にまず自分のお金に海外で稼いでもらう方法を考えて実践すべきです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。