分かっちゃいるけどやめられない飲酒癖

年始早々嫌なニュースが飛び込んできました。アメリカ保健福祉省の医務総監がアルコール飲料のボトルや缶に「がんのリスクがあります」という警告文を載せよ、と主張しているのです。

ガンになりやすいものといえばタバコが代表選手ですが、そのタバコはこの30年ぐらい徐々に厳しい規制を強いられ、今ではタバコを吸う人が激減し、そもそもどこで吸うのかね?という状況になっています。

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カナダでは公共の建物の出入り口の外で吸う場合でも6メートル以上離れないと吸えません。最近ではめっきり少なくなった巻きたばこ喫煙者が、ごくたまにオフィスビルの外で申し訳なさそうに隅の方で吸っているのですが、6メートル以上離れていてもタバコの匂いは結構するもので、私もそそくさとそこから逃げるような足取りになります。自分も20数年前は吸っていたのにずいぶん身勝手なものです。

なので東京に行くと今でも飲食店街の一部には「タバコ吸えます」と小さく書いた店もありますが、私からすれば「それなら素敵なお店でもスルーします」となってしまいます。嫌煙になったのはあの煙ががんになるかもしれないという自分の中で勝手な方程式を作り上げているからで、識者に言わせれば「そこまで気にしなくてもいいよ」と言われるかもしれませんが、人は気になると止まらないのであります。

そこで現れた「飲酒はガンになりやすい」という警告文がもしも皆さんが買うビール瓶や焼酎のボトルにでかでかと張ってあったらどうしますか?カナダではタバコの警告文が初めは文字だけだったのですが、その後、喫煙で真っ黒になった肺のカラー写真をたばこの箱にでかでかと載せ始め私は「もう無理」と禁煙への背中を押したのです。

ではアルコール飲料に警告文を載せる場合、飲食店ではどうするのでしょうか?私が想像するにアルコールのメニューをフードメニューと切り離し、アルコールメニューにでかでかと「がんになるリスクあり」と表示させるのではないかと想像しています。これで飲みに来た客には一定の警告掲示義務を果たしたことになりそうです。

これを毎度見せられると正直、アルコール消費量は落ちると思います。もちろん、始まってすぐに激減はしないと思いますが、着実に減少し、若い人がアルコール摂取をしなくなる可能性もあります。

これではアメリカの禁酒法を再現し、世界にその影響力を行使するのではないかとすら思いたくなります。日本でそこまで踏み切るのか、これは見ものでしょう。

私は医者から肝臓がアルコール打ち止めと言っているから禁酒せよと1年以上前に言われ、一時的に家で飲まず、外で飲む時もビールに限定して2杯までなどとルールを作っていたのですが、正直、失敗しました。

それはある日本人の医者が「肝臓は飲まない時期がしばらくあればすぐに戻る」と言ってくれたからですが、私の肝臓をみたカナダの医者は「肝臓の状態は若い時からの積年の結果であるのでそういう話ではない」とし「君はもう打ち止め」とくぎを刺されたのであります。

どちらが正しいのか、また個体によりケースは違うので敢えて正解を求めませんが、こういう小さな積み重ねがアルコールから少しずつ遠ざかるきっかけになるのでしょう。

ところで日本はかつて「仕事は5時から始まる」と言われたことがあります。本音をしゃべらない日本人サラリーマンが一旦アルコールが入った途端、「口角泡を飛ばす」というか「ビールの泡が口から飛んでくるほど会社の悪口や噂話をし、「実は…」話で盛り上がるのが日本の典型的文化でした。

これは案外日本のみならず、韓国やドイツなどでも同じで、ドイツでは幹部会議を夜遅くまで延々とやる中で飲みながらやるところもあるとに聞いています。

人間の歴史の中でアルコールの文明はとてつもない広がりを持ったと思います。人の心を落ち着かせたり、あるいは日本では通夜に日本酒を飲んで故人を偲ぶのもこれまた歴史と文化でしょう。

私は幼少の頃、アルコール入りの甘酒を「正月だから一口」飲んでいましたが、今ではノンアル甘酒なのでしょう。切ないというか、なかなか楽しいことは副作用があるということをしみじみ感じさせる話ですね。

正月なのでアルコールとのお付き合いがいつも以上に増える時期です。健康という観点からは考えなくてはいけないのかもしれません。

では今年はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。