米国の第47代大統領就任式は、予想される厳しい寒さのため40年ぶりに屋内で行われる模様。その40年前とはあの第40代ロナルド・レーガン大統領の就任式だった。
中曽根康弘首相(当時)は1983年1月に初訪米し、レーガン大統領と会談し、日米は運命共同体と表明し、ロン、ヤスと呼び合う〝ロン・ヤス〟蜜月関係を公的にも個人的にも築き上げた。
そういえば、ちょうどこの訪米中にヤスは米紙によるインタビューのなかで「日本を不沈空母化し、ソ連爆撃機の侵入を阻止する」と発言したと報じられた。後にロンは〝不沈空母〟とはいってないと風見鶏発言をもって否定している。
さて、2025年1月20日に第47代大統領に就任するのはドナルド・ジョン・トランプ氏。
ドナルド氏が大統領についた第1期目、当時の日本の安倍晋三首相は、両者がともに大変愛好するゴルフを通じて、ロン・ヤス以来、最も親密な日米首脳関係を築いた——〝シンゾー・ドナルド〟関係である。ロン・ヤス関係を超えたとも言われた。
さて、いずれ訪米することが決まっているわが国首相石破茂氏(ゲル首相)は、一体どのような関係をトランプ大統領と築こうとしているのか————
ハードルはかなり高いと思われる。しかも自らがどんどんハードルをあげてきている。
何か秘策はあるのか。
相変わらずコロコロ変わる——それは後退であり〝流してしまった〟のである
「アプレンティス(見習い)」という映画のことをゲル首相(石破茂氏)はおそらく予告編などで知ってしまったのだろう。優男だった青年トランプがいかにしていまの一歩も怯まないトランプ大統領になったのかが実話に基づいて巧みに映像化されている。
(なお、ゲル首相のルーツと誕生については、既論『ゲル長官からゲル総裁、そしてゲル首相へ』を参照)
その真実を知ったゲル首相はビビリまくったに違いない。
安倍昭恵さんは12月15日、トランプ氏(次期大統領)や妻のメラニア夫人と南部フロリダ州にある氏の自宅「マー・アー・ラゴ」で面会した。割と突然の出来事のように私たち庶民には見えた。
安倍昭恵さんがトランプ次期大統領らと会食をした頃から、映画「アプレンティス」の内容の情報や予告編がネットで、やがて地上波TVなどでしばしば取り上げられるようになった。
ドナルド・トランプ氏は、昭恵さんにゲル総理へのプレゼントとして自著を託してメッセージを込め、〝いつでも会おう〟と呼びかけたようだ。
それ以前にはゲル首相はトランプ氏の大統領選勝利宣言を受けて、〝できるだけ早い時期に〟にと焦ってアプローチ。それこそ11月中にでもといった勢いだった。しかし、先方からは「大統領就任前に外国要人と会うことはしない」というつれない返事。完璧に袖にされたわけだ。
拙速に過ぎた。切羽詰まった挙句、時間切れで流れた。そこにはむしろ自らの本質的な無策・拙策しかなかったのではないか。主体的に創る策がなければ大事はいともたやすく流れてしまう。
そして12月、昭恵〝特使〟が作ってくれた好機を逃すまじ、遅くとも1月20日の大統領就任式以前に会談MUSTというような楽観論が盛り上がったが、これも流れた。事態の成り行きはやっぱりゲルらしいものだった・・・主体性はコロコロ変遷し熱意のなさがさらけでる。後退して流転して流してしまった・・・・やっぱりビビったのだろう。
しかも年末までと就任式までという2回のチャンスも流してしまった。
あれは単に周辺や一部のメディアのから騒ぎにすぎなかったのか。
今や1月20日の大統領就任式後の適切な時期を探っているという、後退また後退、甘言また換言。全くもって期待も信用もままならない虚しい体たらくだ。
古事記によれば、イザナギとイザナミは日本の国づくりの最初の子蛭子を流してしまったが、二度目はうまく乗り切って大繁栄の礎を確固と築いたのでなかったか。きっちりと主体的に策を練ったのだ。
アプレンティスのプロット(あらすじ)を知るだけでも、ちょっとしたボタンのかけ違いでとんでもなく惨めな結果に終わると恐れおののいたのであろうか。
後退また後退——それはまさに不戦敗への道。
アプレンティスが暴いた3つの猛毒
映画アプレンティスの正式タイトルは『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』。
トランプは若い頃どちらかといえばおどおどしたところがあるナイーブな青年だった。しかし、その彼が一念発起、脱皮の道を歩み始める。彼が師匠として目をつけたのがロイ・コーン。ロイの受け入れのもと、容赦ない見習い修行が始まる。ロイ・コーンはかの赤狩りを主導した男で、コイツと目をつければ執拗に追い込み罪を暴き電気椅子に送り込む。果てはなんの罪もないその男の妻までも電気椅子へ。
そんな冷酷無慈悲なロイ・コーンがトランプ青年に植え付けた3箇条の猛毒プリンシプルはこれだ。
- 攻撃、攻撃、攻撃
- 非を認めず全否定しろ
- どれだけ劣勢に立たされても勝利を主張しろ
これを「勝利のための3つの法則」という。
おおおー、なーるほど。どの点にも私たちがこれまで見てきたかなり異形ともいえるトランプ大統領の行動様式が凝集されている——しかもコンク(濃厚)に。
あ、あの国(R)のこの国(C)の、さらにそれらの隣国(Dprk)のボスにも共通してないかい、この3つの猛毒プリンシプル。
トランプ氏は、この作品がよほど気に障ったようである。フェイクで品がない映画であると激しく攻撃し、法的手段をとると明言している。つまりよほど的を射ているということだ。
ゲルの大嘘つき?——同日選挙なし、大連立なし
2月とも言われるトランプ大統領との面会が実現した暁、ゲル首相はこの確信的猛毒プリンシプルに果たしてどう立ち振舞えるのであろうか?
2度もの面談の好チャンスを自らの主体性の欠如で流してしまったゲル首相、一体この間とりわけ年末年始彼は何をしていたのか。
この間の言動を見ていこう。
ゲル総理大臣は2024年12月28日(土)、読売テレビの朝の番組に生出演し「衆参同日選挙」の可能性を問われた。それに応じて「政府として、こういう予算や法律が正しいと思う——と説明し、審議を尽くしても、国会に『ダメだ』と言われた場合、国民に決めてもらおうというのが憲法の仕組みだ」とのたまった。
実にゲルっぽい話法である。
そして「参議院選挙と衆議院選挙を同時にやってはいけないという決まりはない」と述べた。そりゃあそうだ。さらに、次期通常国会で内閣不信任決議案の可決や予算案の否決が成った場合、「夏の参議院選挙にあわせ衆参同日選挙(いわゆるダブル選挙)も可だよね」旨の持論をはいた。まあ、理屈ではそうかもしれないが、これどうも自分の考えとしてついつい調子こいて口走ってしまったのではないかと思われる。地金の悪癖がでたのであろう。こんな重大なことをいとも軽々と。
それから4日後の元旦。
今度はラジオ番組(文化放送:午後2時30分〜3時25分)で、立憲の野田佳彦代表と日本維新の会の前原誠司共同代表との関係に触れ「中道政治を目指し、相通じるものがある。長い友人で信頼でき、裏切られたことが一度もない」と。
石破と前原は〝政界鉄ちゃん〟同士の熱々仲間。
そして、石破と野田は同い歳で、政界進出も同年、キャンディーズの大ファンでともに〝みきちゃん推し〟。きわめつけは二人とも底なしの大酒飲みで、政界特に自民党に飲み友達がいないゲル石破にとってはかけがえのない〝飲めるお友だち〟なのである。
新春でもあるし、屠蘇もかなり盃を重ねていたかもしれない。放送時間もたっぷりとってある。アンカーマンが野田と前原の名前を引き合いにしたのも老獪絶妙である。機は熟した。
アンカーマンは、おもむろにゲル総理に対し大連立の可能性に矛先を持って行った。野党との大連立という甘い罠への誘導、さらには野田・前原のお友愛感が浮遊感をもたらし「(与野党大連立も)選択肢としてあるだろう」とフワッと口を滑らせてしまったのだろうか。
ところが一転。「松の内」もすぎた1月11日、ようやく酔いも覚めてきたのか、ゲル首相は、訪問先のインドネシアの記者会見で、「大連立もダブル選挙もどちらの〝ダ〟の字も言ったことはない」と堂々と答えたのだった。
確かにいずれの発言でもゲルご本人は衆参ダブル選挙については「これはある」、大連立については「選択肢」と応えただけで明示的にはどっちの〝ダ〟も言ってないのだろう——でもそれはガキでもわかるマヤカシである。
ゲルは自身を首相に戴く内閣の発足(10月1日)を受けて会見を行なった。その会見の内実を知って私は〝すでに大嘘つきというほかない〟と断じた。
持論を公然と口走って、党に戻れば総理にあるまじき軽率を党の重鎮筋からなじられ、やすやすと前言を翻す。選挙民を弄ぶ愚か者、大嘘つきはこの2ヶ月半でなんら変わっていない。なにも学習していない。真の髄からパープリン※1)なのか・・・
こんな体たらくでどうやってアプレンティスにより猛毒3プリンシプルを仕込まれ見事に体現した異形トランプ大統領に相対することができるのだろうか。
『ブウ・ドン』関係を築こう!—— 猛毒3プリンシプルの解毒剤
ゲル首相はいっそのこと〝魔人ブウ〟のコスプレでトランプ大統領にあってはどうか。
かつて小泉純一郎氏が、当時のブッシュ大統領に見せつけたこれぞヘタレと言わんばかりのプレスリーよりははるかにマシである。いや、石破氏の魔人ブウは本家を凌ぐ完成度と洗練さ、そして愛嬌がある。
魔人ブウの最大の特技は、なんといっても限りない回復力である。 ダメージを受ければ尚一層ガンガン体力を回復していくという粘り強い性能をお持ちだそうである。
トランプ大統領の発する強大で破天荒な攻撃力、しかも3猛毒が仕込まれている。その猛毒パワーもブウいやゲル首相はそれを糧(エサ)として自らのエネルギーに変換しつまり解毒にて凄まじい回復力をガンガン発揮する。まるでそれは兵器マニアのゲル首相が日本の自衛隊の誇る高性能レールガンのエネルギーを自らの肥やしにするがごとくである。
会談の後半を見事に盛り上げ最終的に〝シンゾウ・ドナルド〟関係を超える『ブウ※2)・ドン※3)』関係を築いて行ってくれるのではないだろうか。
〝ブウドン〟なかなかいい響きではないか。まるでひとつの何者かに融合昇華したかのようである。
そしてブウドン関係の盛り上がりのなかで、ブウは日本の高性能技術が誇る自衛隊レールガンをドンに売りつけるという奇手を発揮してくれるのではないだろうか。
逆に「オレんとこのレールガンをお前が買え」と凄まれ、返り血を浴びるかもしれない。
ドン曰く、
どうだブウ、この際オマエがオレから買うか、それともオレがオマエから買うのかゴルフの〝マッチプレー(名づけてレールガンマッチ)〟で決めようじゃあないか。オレは自他共に認めるスクラッチプレーヤーだ。オマエも高校生の頃からやってたと聞くが、ブウはどうなんだぁ———まあ、ハンディは甘めにつけてやってもいいぞ。ただし、ハンディのほか日程と場所はオレが決めるので指定のところに来い。
これはありがたい、万が一の賭け、敵前逃亡不戦敗から敗者復活への道をドンから提案とは。
塾高ゴルフ部の底力を見せてやれ!
一緒にラウンドしたら、もしかするとコイツは結構面白い、おまえの無際限かつ無定形な心意気やそのなんとも妙なゴルフスタイルやよしと意気投合するかもしれない。
ハンディ次第では勝ちもありうるぞぅ————
おおいに空想的期待を膨らませてくれる所以であるブウ。
どちらに勝利の女神が微笑もうが、この日米ブウドン・レールガンマッチが日米関係の礎をより強靭にしてくれるはず・・・と私は思う。
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マンガの本家〝魔人ブウ〟の最期は、自制心が全くない悪そのものの存在である真の姿——それを純粋ともいう——へと還元していったとされる。
多分ドンの行く末もそんな感じなのではないだろうか。
果たして日米安保体制の確認、さらには尚一層の関係強化は成るのであろうか。
ブウの着ぐるみ腹芸とゴルフパフォーマンスの合わせ技に誉れあれ!
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※1)昭和に大ヒットしたギャグ漫画「東大一直線」(小林よしのり作)で流行ったワード。(頭が)パーなのでまるで脳がプリンの意味だといわれる。当時、バカや気違いは差別用語だったので、代用語として造語されたらしい。
※2)ブウはわれらがゲル首相の愛称
※3)ドン(Don)はDonaldの愛称