青春18きっぷを使って千葉を旅しています。JRに乗ってやってきたのは成田駅。この日は1月3日でこの駅で降りた人のほとんどの方は成田山新勝寺に向かって歩いていきますが、わたしはスルー。
やってきたのはJR成田駅から徒歩5分ほどのところにある京成成田駅です。この駅からも多くの方が成田山新勝寺に向かって歩いています。
芝山鉄道
今回私が向かおうとしているのは、芝山千代田という駅です。
年末年始、99%の方は空港第2ビル駅や成田空港駅に向かうのですが、今日はわたしは超少数派に徹します。東成田駅と芝山千代田駅の間に「芝山鉄道線」の文字が見えます。このひと区間だけは京成電鉄ではなく芝山鉄道という別の会社の路線。走行距離は2.2キロで第一種鉄道事業者(自己で保有・運行する鉄道事業者)としては日本一路線が短い鉄道です。
芝山千代田行きの車両に乗り込みます。車両は京成電鉄と同じものでした。芝山鉄道が京成電鉄からリースを受けている芝山鉄道カラーの車両もあるようです。
京成成田駅を出た列車はほどなくして地下に潜り、東成田駅に到着しました。ここまでが京成電鉄で、この先2.2キロだけが芝山鉄道線になります。
列車は再び地上に出てきました。成田空港のすぐ近くを走っていて、飛行機を近くに見ることができます。短い区間ではありますが車窓はなかなか楽しい路線です。
なんて言っている間に芝山千代田駅に到着しました。所要時間4分。芝山鉄道、完乗です。
さて、では改札を出よう。と思ってSuicaをかざそうとしたところ、タッチする場所がありません。なんと芝山鉄道、Suica・Pasmoの類は使えません。そんな接続する京成の駅は全部使えるのに…
とりあえず220円払って改札を出ました。京成成田駅から東成田駅までの形成区間の料金は収受できないので京成の駅に申し出てくれ、と。これは不便極まりないので改善してもらいたいですね。
気を取り直して駅を見つめます。
芝山鉄道が管轄する唯一の駅、芝山千代田駅は成田市の南に位置する芝山町にあります。空港ができることによって芝山町から西の町へ行く道路が奪われることの代償として建設が決まりました。
芝山町のすみっこにあり、町の中心部はまだ遠いですが、パークアンドライドで利用している方も多いようです。また、この駅の仮称が整備場前であったように、空港の裏手にあって整備場に通う職員の方が利用している駅でもあります。
将来は芝山町の中心部を経て横芝光町、九十九里浜まで向かう構想もあるようで、線路も未来の延伸を見越して駅の先まで延びていますが…実現するかはわかりません。
せっかく来たので近くの温泉に入ることにします。「成田空港温泉空の湯」はこの町きっての温泉施設。露天風呂からは着陸する飛行機が見ることができます。普段あまり長湯しないんですが、ここの露天風呂は次々飛行機が来て飽きることがありません。電車の時間ぎりぎりまでずーーーっと見ていました。空港の近くでないと見ることができない特権です。
芝山千代田駅の周りを歩いているだけでも数分に一度飛行機が飛んでいきます。航空機ファンにはたまらない場所ですね。ただこれだけ頻繁に来ると地域の方は騒音に悩まされていないのかとちょっと心配になりました。
京成・東成田駅
芝山千代田駅から電車に乗って東成田駅に戻って来ました。ここは京成電鉄と芝山鉄道の境界駅。にしてはかなりひっそりしています。もっといえばこの近くには成田空港があります。それなのにほとんど人がいません。
今いるホームの向こうには使われてなさそうなホームがあります。一番奥の駅名標、なんて書いてあるのでしょう…?
え、成田空港駅?ここは東成田駅。成田空港駅は別のところにあるのにどういうことでしょう。
実はこの駅は1978年に京成電鉄が成田空港にはじめて線路を伸ばしたときに成田空港駅として開業した駅です。この当時は成田空港には東京から成田新幹線が通る予定であったため京成電鉄の成田空港駅は空港ターミナルから遠い場所に設けられ、この駅からバスか1キロほど徒歩でターミナルまで行かなければいけませんでした。大荷物を持ってのこの移動は苦行です。
その後各方面からの反対運動があったことで成田新幹線計画は消滅、1991年に新幹線のためにつくった施設を転用してJRと京成電鉄が新しい成田空港駅をターミナルのそばに開業させました。
この時にこれまで成田空港駅だったこの駅は東成田駅となり空港アクセスの役割を終えました。ただ空港関連の職員が利用することから廃駅は免れました。一時20000人/日を誇った乗降人員は今は2000人/日となり京成電鉄の駅の中でも低い方に入ります。
どのくらいひっそりとしているのかといえば、このくらいひっそりしています。
ここは本当に成田空港の敷地内なのか…?思わず疑ってしまいます。
改札階まで出てきました。昭和から時が止まったかのような構内。積極的にメンテナンスはしていないので古さが目立ちます。
駅の外に出る階段がありました。エスカレーターも利用者が少ないためか利用停止されています。
駅出口にでてきました。かつてはバスやタクシー待ちのお客さんで賑わっていただろうこの場所も人っ子一人いません。元来空港のど真ん中にあるので用がなければ人が通る場所ではないのです。かつて人を集めた栄光ある姿をこの待合所から想像するしかありません。
階段下のこの広い空間もかつての映画を偲ぶことができる場所です。1980年に設置されたレリーフは平安時代の貴族の遊び「曲水の宴」を再現したもの。これを見た多くの外国人観光客が「ああ、日本にやってきたんだ!」と感動したんだと思います。
この東成田駅、成田空港のアクセス駅としての役割は終えましたが、実はアクセスしようと思えばできます。改札脇にある連絡通路を使えば空港第2ビル駅にアクセスが可能なのです。その距離500m。空港職員や、芝山鉄道から来た方は利用すると便利です。わたしも物見遊山で歩いてみることにします。
いや、何この無機質な感じ。海外旅行行くのにこの通路通っていくのはイヤですね。。。ワクワク感が全くありません。ここを歩いている方、2、3人はいました。まぁこの数なら連絡通路があるだけ親切なのかもしれません。
空港第2ビル駅に出てきました。連絡通路の入り口にはしっかり「日本一短い鉄道」がPRされていました。
空港第2ビル駅には先ほどまでの東成田駅の静けさは嘘のように観光客で賑わっていました。おそらくこの日帰国した人たちでしょう。東成田駅の通路に向かう人はおらず、スカイライナーや成田エクスプレスの待つ空港第2ビル駅に吸い込まれて行きました。
おわりに
成田空港建設に絡み造られたミニ鉄道・芝山鉄道。そして成田空港アクセスの方針転換によってその役割を失った東成田駅。成田空港を巡るさまざまな問題が鉄道を翻弄し、今の路線図が出来上がっていることを実感しました。
日本一のミニ鉄道に乗って温泉に出かけたり、都会ではなかなか経験できない静寂の地下駅を体験したり。都心からほど良い距離ですのでぜひ立ち寄ってもらいたいと思います。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。