バイデン大統領が「予防的恩赦」を発表:退任直前に憲法違反の疑い?

1月20日の正午をもってバイデン大統領の任期は終わりましたが、退任直前に「予防的恩赦」という異例の措置が発表されました。

恩赦が発表された面々はミリー前統合参謀本部議長、米国のコロナ対策を指揮したアンソニー・ファウチ博士、また議事堂襲撃事件を調査したリズ・チェイニー氏などトランプ氏の政敵の多くが含まれていました。

バイデン前大統領インスタグラムより

通常の場合、恩赦は国家による刑罰権の効力を消滅させるために発令されるもので、その対象となる人物は犯罪を犯していることが前提にあります。しかし、今回恩赦対象となった面々は不当にトランプ政権から「報復」される恐れがあると危惧していたバイデン政権は「予防的恩赦」によって将来的な刑事訴追の芽を摘みました。

バイデン氏は「予防的恩赦」を発表した声明文の中で、「根拠のない政治的動機に基づく捜査」によって「標的とされた個人やその家族の生活、安全、経済的安定に大打撃を与え」、「最終的に冤罪が晴れるとしても、捜査や起訴されるという事実だけで、評判や財政に取り返しのつかないダメージを与えかねない」とし、自身の決定を正当化しました。

バイデン氏は声明文の中で、「恩赦の受諾は、何らかの犯罪に対する有罪の告白と誤解されるべきではない」としていました、従来の恩赦ではその対象となる人物が自分の罪を認める必要がありました。

米国最高裁も「恩赦の受諾」と「有罪の告白」が同等であるという判決を出しています。それゆえ、「予防的恩赦」は憲法との整合性が問われます。

バーディック対アメリカ合衆国の裁判では、恩赦の受諾は恩赦を受けた行為に対する有罪または責任の告白に等しい。私はニクソン大統領の立場で発言しており、トランプ大統領の立場で発言しているわけではないが、トランプ大統領の行動は公職生活を通じて一貫していると言えるだろう。 – RZ

バイデン氏が自分の息子を助けたるために出した恩赦も「予防的恩赦」に等しいものでした。

また、バイデン氏はハンター氏を恩赦する際、ハンター氏を捜査し、起訴した民主党関係者を暗に批判し、司法への信頼を損ねました。

バイデン氏の恩赦の「乱用」とも取れる決定によって、大統領が中世の王のように権力を行使しても良いというお墨付きが与えられてしまう懸念があります。

バイデン氏はトランプ氏によって壊された規範や制度を修正するために大統領に当選しましたが、トランプ氏以上に破滅的な権力行使をしてしまったのでしょうか?