「フジテレビ問題」から経営者が学ぶべきこと

タレントの中居正広さんの女性トラブルから広がったフジテレビ問題は対応のまずさもあって広告スポンサー企業からの強い批判に発展し、収束点が見えない展開になっています。

またフジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスへの株主からの圧力も強まっていて、他のテレビ局にも影響が広がる可能性も出てきました。

私が興味を持っているのは上場しているフジ・メディア・ホールディングスの経営状態です。同社株式のPBR(株価純資産倍率(Price Book-Value Ratio)は直近で0.48となっており、純資産の半分以下の評価になっています。

これはテレビ局という規制業種を持つことから企業買収が困難であることが理由の1つであるとされています。

業績については同社の決算報告書に詳しく掲載されています(写真)。直近の2025年3月期中間期(2024年9月末)の数字を見ると、主に3つの事業セグメントがあり、メディア・コンテンツ事業と都市開発・観光事業が2本柱であることがわかります。

売上で見るとメディア・コンテンツ事業が約75%を占めており主力に見えますが、利益面では都市開発・観光事業が2倍以上です。都市開発・観光事業とは大手不動産会社がやっているような賃貸ビルや不動産販売、ホテル経営などになります。

つまり、元々の本業であるテレビやラジオのような事業がメインのように見える会社でありながら、実態は「不動産会社」に近い業態になっているということです。

今後フジテレビの広告スポンサー離れが更に加速したとしても、収益的には不動産関連事業で補うことができる。むしろ不動産会社としてメディア・コンテンツ事業セグメントを切り離した方が企業価値が上昇するとも言えるのです。

この経営実態からもやはり会社にとって重要なのは、売上ではなく利益ということがわかります。

企業経営者はフジテレビ問題の芸能スキャンダルに目を奪われるのではなく、同社の決算データからわかる会社の事業ポートフォリオについての重要なヒントを学ぶべきです。

フジテレビHPより


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。