S字に沿って価格が上昇するという投資の極意

東京の中心は、東京駅と皇居との間に広がる丸の内と大手町で、神保町は、その北、日本橋川を渡ったところである。神保町は、大手町から歩ける距離にあり、複数の地下鉄が乗り入れていて、交通至便である。大手町と神保町とを比較したとき、利便性に差はない。

賃料は、大手町を起点として、そこから北に離れると低下していくが、距離に比例して直線的に低下するのではなく、大手町と隣接地の神保町との間に急な崖を形成し、崖下の神保町から先は緩やかに下る。つまり、賃料は、S字カーブを形成して、高いところから低いところへ推移している。

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東京の中心部は外延を急速に拡大させていて、例えば、東京駅を挟んで丸の内の反対側になる八重洲、日本橋、室町、京橋方面は、多数の大規模開発により、景観が激変している。遠くない将来、神保町周辺にも背の高い建物が林立し、大手町と神保町との賃料格差は解消に向かうであろう。

地価は賃料の関数だから、神保町の賃料が上昇すれば、地価が上昇し、神保町を開発した業者は大きな利益を得ることになる。不動産開発は、この利益が誘因となっているので、当然のこととして、丸の内と大手町に近接する地に集中し、中心部を拡大させようとする。そして、実際に中心部が拡大していけば、隣接した崖下の地価は飛躍的に上昇し、不動産投資に大きな利益をもたらすわけである。

投資は、その本質的な側面として、より安く買って、より高く売ることに帰着するが、それをS字カーブで表現すれば、カーブの崖の下で買って、崖の上で売ることになるから、投資の極意は、様々な領域において、巧みにS字カーブを発見することになり、より積極的には、S字カーブを創造することになる。実際、東京の中心部を手掛ける大手の不動産開発業者は、中心部と外延との間にS字カーブを創造して、大きな利益を得ているのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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