暗号資産の大きな可能性と日本の残念な対応

先週末から急によく聞くようになった「DeepSeek」という言葉。中国発のAIのスタートアップ企業です。

同社が開発した最新のモデルが圧倒的な低コストで、アメリカのオープンAIの「Chat(チャット)GPT」を超えるのではないかという衝撃から、株式市場や為替マーケットが大きく動きました。半導体関連企業の株式は大幅に下落しています。

その影響は暗号資産にも波及しました。私がウォッチしているリップル(XRP)は1日で20%近くの急落となりましたが、その後は急反発して結局以前の安定した価格のレベルに戻ってしまいました。ジェットコースターのような凄いチャートです(写真)。

暗号資産の場合、株式や為替と違いナゼ下がるのか上がるのか理由がわからないことが多いのです。大口の保有をしているインナーサークルの人たちが大量の売買を仕掛けることで、小口の投資家を振るい落とすような動きが度々見られます。

その結果、他の資産に比べボラティリティ(変動率)が高くなり、「暗号資産=危険」という反応に繋がっています。

また、取り扱いが難しいことも他の資産には無いデメリットです。ハッキングされて暗号資産を盗み取られた人は私の周りにもたくさんいますし、取引所でも被害に遭っているケースがあります。逆に厳重に管理しすぎて「セルフゴックス」と呼ばれる暗号資産を取り出せなくなってしまった人もいます。

さらに日本特有の事情もあります。日本国内ではビットコインやイサリアムのETFは認められていません。暗号資産を直接保有するしか無いのです。そして、その税制は個人で保有する場合は利益に対して雑所得と見なされ、法人でも決算時の時価評価が義務付けられています。

このように取り扱いが難しい資産ということは、裏を返せばそのような扱いにくさが改善されれば、大きく発展する可能性があることを示しています。

インターネットがウィンドウズやアップルのようなインターフェースによって誰でも使えるようになったり、動画の編集・配信がスマートフォンで簡単にできるようになって誰でも世界に動画配信できるようになった。

それらと同じようにもっと安全で簡単に暗号資産が取り扱えるようになれば、保有する人の数は爆発的に増えて、大きなマーケットに育っていくと思います。

ただ残念なのが日本国内での暗号資産に対する後ろ向きな対応です。このままでは日本人だけが大きな可能性を逃してしまうのではないかと心配です。

3月1日に開催する第20回世界の資産運用フェアでは、暗号資産に関しても暗号資産取引所大手のビットフライヤーからゲストを招いて情報提供してもらう予定です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。