オワコン化進むEV
イーロン・マスクのテスラ社がトヨタ社を買収するかも知れないと言われている。加えて筆者は、合併に向かうホンダ・日産連合を安値で買い叩く可能性も見ておく必要があると考える。
1月20日のトランプ2.0政権の誕生による、バイデン前政権のCO2削減策、EV優遇策からの転換で、充電の不便さやバッテリー寿命等のために世界的に既に始まっていたEV(BEV:バッテリー式電気自動車、PHEV:プラグインハイブリッド自動車含め。本稿では以下同)のオワコン化の急加速が予想される。
マスクのテスラ社としても、これまで競合他社に後れを取ってきたが既にEVから自動運転技術中心に舵を切っている。なお、マスクは火星での燃料生産に関心を示しており、2021年12月には火星大気中の二酸化炭素を回収し、電気分解によってロケット燃料を生産する構想を発表している事を鑑みれば、CO2削減策でのEVへの拘りは実は余り強くなかったのかも知れない。
一方EVでの最大のライバルである中国のBYD社も自動運転に注力するが、北米、EUから締め出されつつあるEVを新規アジア市場では、まだ有望と見ている。
両社は、自動運転のシェア争いで優位になれば自陣の方式を世界標準化出来るので、勝負が決まってしまう。自動運転というとEV前提で語られている事が多く確かに親和性は高いだろうが、自動運転の技術の中核はステアリング(ハンドル捌き)と制動(ブレーキ)なので、EV縛りは強くない。
ここでテスラはHV(HEV:ハイブリッド自動車)や、進んではFCEV(燃料電池自動車)にテスラ式自動運転技術を搭載して一気にシェアを取りに来ると筆者は見る。一方のBYDは安値輸出でEV中心に自動運転化して行く基本戦略のようだ。
日系HV車の特徴
さてここで、日系HV車の特徴について見てみたい。ChatGPTに聞いてみた。なお、非公開等が多く正確な統計はないがPHEVを除くとHVはトヨタ筆頭に販売台数で日系が大部分を占めるようだ。
Q:日系HV自動車の方式の違いと燃費等の特徴を具体的な数値で一覧表で教えて
A:以下に、日系ハイブリッド車(HV)の方式の違いと燃費、排気量、出力、特徴を一覧表でまとめます。
【方式ごとの特徴】
1. シリーズ・パラレル方式(トヨタ)
- エンジンとモーターを効率よく組み合わせ、さまざまな走行条件で高い燃費を実現。
- バランスが良い。燃費性能が特に都市部で優れる。
2. パラレル方式(ホンダ)
- 基本はモーター駆動だが、高速域ではエンジンが直接駆動をサポート。
- 高速走行が多い場合に燃費効率が良い。
3. シリーズ方式(日産)
- エンジンは発電専用で、駆動はすべてモーター。
- 電動車のようなスムーズな走行感覚と応答性が特徴。都市部での効率が高い。
(以上、ChatGPT回答)
だそうだ。燃費の点でトヨタのシリーズ・パラレル方式(THS)が頭一つ二つ抜きん出ている事が分かる。体力の差やHEV特許等の事情があったとは言え、HEV中心に、ICE(内燃機関車)、PHEV、FCEV(燃料電池自動車) 、BEVに投資分散したトヨタに比べ、所謂バイデン政権的潮流に乗って一時はEVに全振り宣言したホンダと日産の凋落はこれからも続くと思われる。
自動運転世界大戦
マスクのテスラとしては、次の3つの選択肢があるだろう。
① トヨタの買収
② ホンダ・日産連合の安値での買い叩き
③ トヨタとの平和的連携
トヨタが買収されるようになったら無党派層も含め日本人のナショナリズムに火を着けかねず、①を提示し③で落とす事になる可能性が高いと思われる。
トヨタが岸破の媚中路線に乗る事は無いだろうが、中国市場への配慮から頑なにテスラとの連携を拒めば、スピード重視で②も在り得ようか。なお、トランプ政権の”Drill, baby, drill”(掘って掘って掘りまくれ)政策でガソリン価格が劇的に安くなれば②の可能性は高まるだろう。
一方のBYDは、台湾の鴻海精密工業社が、日産の買収に意欲を示していた事から類推すると上記の②を中心に進める感がある。すると、テスラ・トヨタ陣営 vs BYD・ホンダ日産陣営で他メーカーも巻き込んで自動運転世界大戦の図式になる事も大いに在り得よう。
ただ、その深化具合によっては、テスラ・トヨタが中国市場をほぼ放棄する事となる。この辺はトランプが目論む、プーチンとの実質「中露同盟」+αでBRICSに楔を入れて分断し拡大中国包囲網で習近平に戦わずして白旗を揚げさせる大戦略の進展にも大いに左右されるだろう。
さて筆者は、ここまでEVのオワコン化を前提に述べて来た。バッテリーが現在リチウムイオン電池等から研究開発過程にある全個体電池に置き換われば、充電時間や発火炎上等の事故率の問題は解消されて行くだろう。だが、そもそもCO2による地球温暖化原因説の眉唾度が上がっているため、EVの必然性自体が霧消して行く方向だ。
もし次にEVブームが来るとすれば、化石燃料枯渇リスク顕在化のタイミングとなるだろうが、少なくともこの先数十年は在り得ないのではないか。
マスクのテスラ社、また中国他各国メーカーも自動運転と共に人型AIロボットの開発にも注力しており、自動運転技術はロボットの歩行制御にも応用されるだろう。家庭内にも入って働くロボットには流石に内燃機関で動く事にはそぐわずバッテリーで動くのでEVはロボットに姿を変えると見る事も出来ようか。
そのマスクは、火星移住計画と共に、最近ではAI投資問題でトランプ政権内に波風を立て、予てから「自身のニューラリンク社で将来は健康人の脳に電極を埋め込んで外部AIと直結させないとAIの人類支配、失業問題に対抗出来ない」旨述べる等、天才故の破天荒さが目立つ。
もしテスラのHV自動運転車が席巻した時には、購入時に火星行チケットとニューラリンク手術の予約券が抽選により(キャンセル不可)で付いて来るかも知れない。
それはともかく、マスクが高転びに転んだ場合や、その後突如BYDと提携する可能性すらも織り込んだ戦略が求められる。トヨタの全方位戦略には、トランプとマスクの2大予測困難要素により、更なる複数シナリオのシミュレーションが必要とされる事になりそうだ。