最近、中野サンプラザの解体問題が全国的に注目を集めています。特に懸念されるのは不透明な事業計画です。
今回は懸念点について再度整理してみましょう。
DNAに関する議論
サンプラザは中野の象徴であり、区民にとっては特別な場所です。今回の再開発の見直し案では、住宅割合を増やし、ビルの高さを低くすることで建設費を抑え、事業者の収支改善を図るとしていますが、詳細な計画案はまだ出されていません。
中野区では、サンプラザのDNAをシルエットの外観の特徴や形状を指していますが、それは正しいとは言えません。物理的な形状だけでなく、その場所が持つ歴史や記憶、社会的な影響力など、もっと包括的な意味を持つべきです。サンプラザが持つ本質的な機能や社会的な役割、歴史的な価値を含まなければDNAとは言えないでしょう。
中野サンプラザは1973年に「全国勤労青少年会館」として開館し、地域文化の発展に大きく寄与してきました。さらに、コミュニティの核としての役割、多目的ホールとしての特性を活かして、コンサート、展示会、会議など多様な用途に対応してきました。
つまり、地域住民の交流の場だったのです。これらの役割は、建物の形状ではなく、その空間が持つ社会的な価値によって実現されてきたものです。DNAとは、果たしてきた役割や社会的・文化的な影響を含む広い概念であり、これを踏まえたものであるべきです。
高騰する再開発費用
建設費高騰を見越せなかった区や事業者の責任はどうなるのでしょうか。ツインタワーにすることで、まちづくりとしての一体感は維持できるのか甚だ疑問です。現状を踏まえたうえで、再設計すべきではないでしょうか。
建築費が高騰したことで用途が曖昧になっています。今後金利が上がったらどうなるのでしょうか?再開発自体が頓挫する可能性も否定できません。状況をシミュレーションする必要があるでしょう。未来の子どもたちに負債を残さないためにもゼロベースで再検討する必要があります。
現在、マンションは供給過多の状態です。税金でタワーマンションを建設することに区民は賛成しているのでしょうか。晴海や豊洲のように転売目的の企業や海外の投資家に買われる未来しか想像できません。さらに、最近では再開発が失敗した事例も散見されます。汐留や麻布台ヒルズの閑散とした状況はまさに好例と言えるでしょう。
中野区は「敷地売却」を前提とした契約が締結されています。つまり、格安でディベロッパーに売却されようとしているのです。建物は、高さ262メートル、60階、1100戸の超高層タワーマンションです。この規模は池袋のサンシャイン60を凌ぐサイズです。
果たしてニーズはあるのでしょうか?区民にとってメリットのない再開発に賛成する人はどの程度いるのでしょうか。区議会でしっかり議論してもらいたいと思います。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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