埼玉の下水道管破損に伴う陥没事故は一定の応急処置はいずれ出来ると思いますが、将来を見据えたプランを含めた恒久的改善を考えると数年は要するものになると思います。また今回の陥没事故の復旧だけで埼玉県は40億円を予算を特別計上していますが、それで収まるかです。地域住民の生活の不便さもありますが、商店などへの営業補償も出てくるかもしれません。我々は地中に埋まったインフラなど存在すら気がつかないぐらいですが実に繊細なものであり、その上で我々は生活しているのです。今後、行政は既に寿命が来つつあるそれらのインフラをどう更新していくか、全国規模で思ったより大きな課題になるとみています。
では今週のつぶやきをお送りします。
冴えない株価、どこへ行く?
ぱっとしない、それがぴったり当てはまると思います。東京市場は決算期ということで大暴騰と大暴落の銘柄が混在する一方、比較的順当な決算だった企業に買いが入らない傾向が見られます。つまりサプライズ銘柄とかフジテレビや日産といった材料株がにぎわう状況です。80年代のバブルの頃、上がりすぎて一息つくときに必ず出てきたのが仕手株。今はまさにそのようなタイミングで多くの投資家が判断に躊躇しているとみています。
理由はトランプ政権の行方が見えにくいこと。これはアメリカの株価が今一つ冴えないのを反映しています。もう一つは日銀が金利引き上げ姿勢を鮮明にしており、円相場も遠くに140円台が見えてきたことがあります。円高は株価には厳しいのです。好調だった銀行株もずいぶん上昇し、好決算も織り込み済みなのかほぼ無反応。銀行株は株価のリード役なのでここで息切れしたのはちょっと残念です。半導体関連といった相場のリード役がないこともあるでしょう。全員参加の株式市場、懐かしい言葉ですが、これが今の相場に欠けているのです。
世の不安は金(ゴールド)相場に反映されています。ついに一時、2900㌦を超えてきました。ピッチとしてはかなり早い上昇ですが、新興国の中銀が相当の勢いで金を購入しているとされます。個人的にはトランプ氏の無謀な発言の連続でドル離れが加速する予兆も感じています。通貨は一国一つのハードカレンシーだった時代から変わりつつあります。この変化は今後数年中により明白になるはずで今はドル高ですが、ドルの攻防がいずれ議論される時が来るでしょう。世の中の変化はそれぐらい早く、投資家もそれについて行けるか、その先を読めるかにかかっています。
仲裁者ドナルド・トランプ
石破首相との会談を経ての記者会見。心の中で今回の記者会見のハイライトは日本製鉄とUSスチールの話になるのではと思い始めたのは前日にトランプ氏がUSスチールのCEOと会談したためです。バイデン政権を訴訟するという日本企業しては前代未聞の行動に及んだことがトランプ氏の心を何らかの形で動かしたのでしょうか?トランプ氏はそれを利用してイシバに貸しを作ることもあったかもしれません。
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2025-02-石破首相とトランプ大統領 ホワイトハウスxより
トランプ氏は日本製鉄のトップと来週会合すると述べています。橋本会長の出番でしょう。今回の共同記者会見でトランプ氏は日鉄は買収ではなく、USスチールに投資をするのだ、と結論付けています。そして「mediate and arbitrate(調停し仲介する)」とのべ、詳細の説明は避けています。思うにUSスチールは金がない、日鉄の技術も欲しい、それを満足させるためにUSスチールの新株を日鉄が買い、更に技術提供に関する協定なり契約を結ぶという形になるのではないかと推測しています。
もしもこの条件を橋本会長が飲まされるならおいしくないかもしれません。株式市場でもUSスチール株がこの報を受けて5%以上急落しましたが、ありえるのは株式希薄化。ただライバルのクリフスの株価も5%以上急落したのはクリフスによる買収の可能性がさらに遠のいたということ。ではこのディールで勝者誰だったでしょうか?私のランクは勝ちの順にトランプ、USスチール、石破、日本製鉄、クリフス、鉄鋼組合とみています。私はトランプ氏をあまり褒めないですが、これはフェアな意味でスマッシュヒットだったと思います。
参議院選で何が起きる?
夏の参議院選の話を半年近く前の今からするのかね、と思われるでしょう。が、私にはどうも国会論戦も含め誰も満足していないように見えるのです。「妥協の産物」、これが今の国会の姿です。妥協では明白なポリシーを貫き通せないわけで施策が中庸になるということです。一見、誰でも満足するにはそうするしかないだろう、という意見もあると思いますが、日本が真綿で首を絞められている状態の中でいかにも目先の延命策にこだわりすぎていると思うのです。もっと大所高所の「べき論」があってしかるべきですがそのような話は打ち消され、議員は「日々のお勤め」に徹しているのです。
公明党の斉藤代表が朝日新聞との単独インタビューで自民の体たらくを厳しく批判し、連立離脱について「常にその緊張感はある」と述べています。公明も閣僚のポジションを一つ貰って「俺たち花の与党だぜ」で無風地帯を闊歩してきたわけですが、池田大作氏の死去と安倍氏とうまく渡り合えた山口那津男氏が下りたこともあり、公明党とは何ぞや、をゼロから作り直さねばならないのです。一方、選挙にSNSが絡み合い、政治に無関心な若者たちが興味を持つのは日本の全体論ではなく、自分の身に差し迫る非常に限定されたイシュー。103万円の壁などはその典型です。
私が不満なのはそんな細かいことで時間を費やすのではなく、国家のベクトルと姿勢を示してほしいのです。2030年代はさほど遠くないのです。その30年代に日本の社会、経済、政治はどうあるべきか、テクノロジーが人間を凌駕した時、人々の幸福とは何かをしっかりとらえ、政権があるべき姿を指し示し、それに伴う法律を前倒しに準備する、それが政治家の仕事です。自民党議員も覇気がないというか、選挙に落ちる恐怖が先行して何もできないただのおっさんとおばさんに成り下がっています。「できるのなら見せてみぃ!」と私は言いたいです。
後記
12月1日から始まった毎年恒例の地獄の2か月。今日でようやく全部終わります。多い日で1日12時間、クリスマスの日も1月1日もノンストップ、週6日から6.5日業務でトイレに行くのも忘れるほど時間に追われながら作業し続けました。ふと思うのはこれ、自分の体力が無くなったらどうするかな、と。ルールや法律、業務プロセスが複雑になり事務処理量はテクノロジーの発達とは無縁で30年前と比べ、格段にボリュームアップ。人を雇っても10年務めてくれるコミットメントがないとほとんど役に立たない気もします。今週末だけは休ませてもらい、月曜日から東京出張、せめて「蕎麦屋のカツどん」とか旨いものを食べたいです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月8日の記事より転載させていただきました。