北朝鮮製ミサイルの命中度が向上した

ドイツ民間ニュース専門局nTVによると、ウクライナでの戦闘で使われている北朝鮮製ミサイルが突然、より正確に命中するようになったという。北朝鮮の部隊がウクライナに派遣された当初、西側軍事専門家は北製ミサイルの性能の悪さを嘲笑していたが、今年に入ってミサイルの命中度が劇的に向上したという。この情報はウクライナと米国がロイター通信の質問に答えたもので、nTVが6日報じた。ただし、なぜ北製ミサイルの性能が突然、向上したかという疑問に対して西側軍事専門家はまだ自信をもって答えられない。

ミサイルの威力示威射撃を指導する金正恩総書記 北朝鮮HPより

米高官がロイター通信に答えたところによると、「年初以来発射されている北朝鮮製のミサイル約20発は、以前よりも著しく目標に近づいている。現在、標的の50~100メートル以内だ」という。
北朝鮮のミサイルはこれまで目標を1キロから最大3キロも外れたという。ウクライナ側も北朝鮮の兵器の信頼性に疑問を持っていた。発射された24発のロケットのうち「比較的正確」だったのは2発だけだったという。それが突然その性能を向上させたのだから、軍専門家は首を傾げるわけだ。

なお、北朝鮮のミサイルには核弾頭を搭載できる短距離および中距離ミサイルが含まれる。北朝鮮にとって問題は、これまで兵器を実戦実験できなかったことだ。しかし、ロシアに派遣され、ウクライナ戦争で実戦でミサイルを使用できる機会を得たわけだ。

ロイター通信の報道によると、北朝鮮のミサイルはその積載量と射程はロシアの飛翔体をある程度上回っている。一部のタイプは最大1トンの弾頭を搭載でき、一部のミサイルの射程は800キロメートルだ。一方、ロシアのイスカンデル-Mロケットの射程は500キロメートルだ。

ロシアと北朝鮮は、平壌がクレムリンにミサイルを供給したことを否定している。しかし、両国は昨年6月、「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。それ以来、ロシアは兵力や武器の供給と引き換えに北朝鮮へ対空ミサイルや対空装備を提供している。ミサイル部品や資金援助でも北朝鮮を支援していると見られる。

なぜ、北朝鮮のミサイルの性能が突然向上したかについては目下、専門家も推測する以外にない。北側のミサイル専門家がロシア軍からフィールドバックを受けていることは間違いないだろう。北製ミサイルにロシア製の優れたナビゲーションシステムまたは改良されたステアリング機構が装備された可能性も考えられる。また、ロシアは制御システム用の改良されたコンポーネントを提供したこともあり得るだろう。

北製ミサイルの性能向上は平壌とモスクワにとって朗報だが、韓国や日本など朝鮮半島周辺の国々の安全にとって懸念される内容だ。性能を高めた北製ミサイルや武器が海外に密輸される危険性も排除できない。

北朝鮮から約12000人の兵士が派遣された当初、西側諸国は「北朝鮮兵士はウクライナ軍の大砲の餌食となる」と軽く考えてきた。北朝鮮兵士は現在、前線から撤退したとも言われる。北朝鮮兵士にとって実戦経験がないこと、戦場が山や森といった環境ではなく、平地のため、平地戦、市街戦の経験のない北朝鮮兵士にとって危険が多い。しかし、経験を積んでいけば、北朝鮮の兵士の戦闘力はアップするだろう。ウクライナ戦争が終わり、帰国した北朝鮮兵士は韓国側にとって手強い敵となる。ミサイルは命中度を増し、兵士は戦闘経験を有するからだ。

最後に、北朝鮮ミサイルの命中度が向上したというニュースを読んで、ある面で少しほっとした。なぜなら、ウクライナには欧州最大の原発サポリージャ原子力発電所がある。北兵士の派遣先のクルスク州にもクルスク原発(4基の原子炉)が操業中だ。戦場で北朝鮮のミサイルが発射され、そのミサイルが目標と数キロ離れた原発に命中したならば、それこそ第2のチェルノブイリ原発事故となるからだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。