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大勢の人に対し情報を発信するブロード・キャスティングは、新聞、ラジオ、テレビなどの形態ですでに実現している。
一方、大勢の意見を一人が聞くのはむずかしかった。一人5分と区切っても、100人から聞くのには6時間以上かかる。1000枚の投稿を読むのも大変だ。都知事選挙に立候補した安野氏は、AIを用いて意見と意見の距離を測定し、類似の意見を要約していくという技術を用いれば、ブロード・リスニングが実現できると話す。
地方公共団体には、住民登録から始まって、納税、教育、医療、福祉などのデータがある。これらにブロード・リスニングを組み合わせると、地域住民のニーズが詳細に把握できる。集約したニーズという合理的根拠に基づいて政策を立案していくEvidence Based Policy Making(EBPM)が現実のものとなりつつある。
EBPMをスマートシティの構築に利用して重点領域に注力すれば、地域住民のニーズを反映した未来都市が生まれていく。
国際社会経済研究所の年次フォーラムでこんな話を聞いた。データに駆動された地域行政は、確かに現状を変えていく力がある。
ひとつ気になったことがある。住民の声を直接ブロード・リスニングできるのであれば、地方議会は不要ではないか。
僕はそうは思わない。ブロード・リスニングの機会を設けても、発言する地域住民の数は限られるからだ。ネット上の「炎上」でさえ、ネット民の数パーセントの反応に過ぎないのだから。
ブロード・キャスティングが多様なメディアで行われているように、ブロード・リスニングにも多様なルートがあるのが望ましい。老若男女の地域住民各層をそれぞれ代表する議員、障害を持つ議員や帰化した議員もいて、それら議員がそれぞれにブロード・リスニングで意見を集約する。そうすれば、多様なルートで意見が集約されて、地域住民主体のスマートシティが見えてくる。
地方議員は、今まで以上に、地域住民の声を聴き、また行動を促すファシリテータの役割を果たすのがよい。地方議会不要論に対抗するために地方議員は動いて欲しい。