The Guardianは2月4日、気候変動の分野の指導的な研究者として知られるジェームズ・ハンセン教授(1988年にアメリカ議会で気候変動について初めて証言した)が「地球温暖化は加速している」と警告する論文を発表したという記事を掲載した。
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海水温のアノマリー(℃)
- 2℃目標は死んだ
- 気候科学者ハンセン教授は「2℃目標はもはや不可能」と警告。
- 化石燃料の使用増加と、エアロゾルの減少による大気汚染の予測以上の減少が主な原因。
- 温暖化の要因
- 2020年の 船舶汚染物質の削減 で、雲による太陽光の反射が減少した。
- 気候の敏感度が従来の予測より高く、2045年までに2℃上昇の可能性。
- 化石燃料を減らしたことによるエアロゾルの減少が温暖化を加速している。
- 極端気象とAMOC崩壊のリスク
- 現在の1.3℃の温暖化でも洪水、熱波、台風などが激化。
- 北極の氷が急速に融解し、30年以内にAMOC(大西洋子午面循環)が崩壊すると、海面上昇が数メートルに達するリスクがある。
- 今後の対応
- IPCCは温室効果ガス以外の要因を軽視してきた。
- 石炭を削減すると気温上昇が加速する可能性もある。
- ジオエンジニアリング(気候工学)による太陽光反射技術の研究が必要。
地球温暖化は加速している:国連と国民は十分な情報を得ているのか?
Environmentに掲載されたJames E. Hansen et al.の共著論文の要旨は次の通り。
地球の平均気温は予想より急速に上昇(Hansen et al.)
- 地球温暖化の加速
- 過去2年間で 地球の気温が0.4℃上昇 し、2024年8月には +1.6℃ に達した。
- 今後の気温上昇は +2〜3℃ に達する可能性があり、「ポイント・オブ・ノーリターン」に突入する恐れ。
- IPCCの気候モデルの限界
- 現在の気候変動の進行速度は、IPCCの予測よりも速い。
- IPCCはコンピューターモデルに依存しており、現実の観測データや古気候データをもっと活用すべき。
- 温室効果ガスの影響はこれまでもエアロゾルで相殺されていた。
温室効果ガスとエアロゾルの影響(Hansen et al.)
- エアロゾル削減と気温上昇
- 2020年の 船舶の硫黄排出規制 により、大気中のエアロゾルが減少。
- 雲の反射率が低下し、地球がより多くの太陽光を吸収 → 温暖化が進行。
- AMOCの崩壊リスク
- グリーンランドや南極の氷が融解し、海水の塩分濃度が低下 → AMOCの停止リスクが高まる。
- AMOCが停止すると、 海面上昇や極端気象の悪化 が起こる。
- ジオエンジニアリング(気候工学)の可能性
- 成層圏エアロゾル注入(SRM) などの技術が提案されている。
- 火山噴火のように成層圏に硫酸塩を注入し、太陽光を反射して冷却する方法。
- ただし、オゾン層の破壊や降水パターンの変化などの副作用も考慮する必要がある。
- 政策と国際的な対応の必要性
- CO2削減だけでは 気温上昇を抑えられない可能性が高い。
- より現実的な気候変動対策を10〜20年の間に考える必要がある。
- それはジオエンジニアリングなど従来とは異なる手法の検討を含む。
この論文は、地球温暖化がIPCCの予測よりも速いペースで進行 していることを指摘し、既存の気候モデルでは 実際の変化を十分に反映できない 可能性があると警告している。
2020年以降の 船舶エアロゾル削減 が温暖化を加速させた要因の一つとされており、2045年までに 気温が2℃上昇 する可能性が高い。
さらに、AMOCの崩壊 による海面上昇や極端気象のリスクが高まりつつある。これに対処するためには、CO2削減だけでなくジオエンジニアリングの導入も検討する必要がある。