バカほどSNSで自信満々な3つの理由

黒坂岳央です。

経済学者の成田悠輔氏が次のような投稿をした。

このことはダニング=クルーガー効果という認知バイアスの一種で説明できるのだが、成田氏ほどの人物がこのことを知らないはずはない。だが面白いテーマだと感じたので考察したいと思う。

※本稿の文脈におけるバカの定義とは「知能指数が低い」のではなく、認知のゆがみが極端に大きく、それ故に失笑を買う「一般化できない極端にズレた発言、ズレた世界観を持つ人たち」を指している。

尚、上から目線で見下す意図はなく、本稿は彼らの行動心理を考察する目的を持って書かれた。

watchara songprasert/iStock

バカは発言の裏取りをしない

バカがSNSへ投稿する時の特徴、それは「自分の見解、情報の裏取りを一切しない」という点で共通している。

ある程度、社会性がある人ならSNSという空間はリアルでの発言より、よほどリスクが大きくそれ故に気をつけて発言しなければいけない、ということを知っている。

だからこそ、誰もが発言をする前には「これは正しいか?」という答え合わせをすることになる。筆者は必ずそうする。最近では自分の発言に自信がない時は、必ずAIでチェックし時には修正の上で投稿するように意識する。

だが、バカはそれをしない。心で感じたこと、頭に浮かんだことを無編集でそのまま主観的に言語化する。彼らは自分たちが感じたことを信じて疑わない、だから彼らは極めて自信満々だ。

普通、情報の裏取りをすると発言のトーンはグラデーションのように濃淡が分かれる。確信が持てない点と、断言できる点とで勢いに差が出るのが普通だからだ。だが、すべてを信じる時、その発言は丸ごと自信満々になる。

バカは主観的である

そしてバカは常に主観的である。

もちろん、人間は多少の差こそあれ基本的には主観的な生き物で、それ自体問題がある訳では無い。この記事だって主観的な意見を述べているものである。問題は本来、客観的に扱うべき事項を、本人が気づかないまま主観的な発言として投稿してしまう時に起きる。

たとえば酒や煙草が健康や寿命を削るという研究結果に対して、「自分の祖父は毎日、酒もタバコもやったが90歳まで生きたぞ!だからこの研究はうそ!」といった投稿をしてしまうことにある。

本来、寿命や健康は個体差が非常に強く出る分野であり、個人的な経験という主観的な観点だけで健康効果を断言してしまっている点に問題がある。件についていえば、元々その人物の生命力は平均値より高く、仮に酒やタバコを一切やらなければ、さらに長寿で健康だった可能性を考えることができるだろう。

バカは個人の経験や感覚を、規模の大きい検証結果や統計以上に過信する。そうでなければ「自分の見聞きした経験」という極めて頼りない情報ソースだけで自信満々になることなどできない。

もちろん、科学は日々進歩しているので検証や統計が間違っている可能性も十分あるものの、それを言い出したら何も言えない。少なくとも、すでに行われた先人の検証や統計を考慮した上で、個人の経験や感覚を話すべきなのは言うまでもない。

バカは無知に気づかない

そしてバカは自分が無知であることを知らない。だからこそ、すぐ上から目線で周囲を見下してしまう。

非常にわかりやすいのがコロナ禍で大量にいた「自分は専門家に騙されないぞ!」という一派である。現場で膨大な数の患者を見ている医師に向かって「コロナなんて政府が作ったうそ」なんて自分にはとてもいえないが、ちょっとインターネット検索でかじった情報を寄せ集めて、自分がウイルス学の専門家より詳しいと勘違いしてしまう。

知識というのはあればあるほど、むしろ謙虚な姿勢を獲得する傾向があると思っている。なぜなら自分が深く学ぶほど、それだけ世の中には自分より優秀な人が数多くいて、さらに学びを深めなければいけないという感覚になるからだ。

だが、中途半端だとものすごく自信を深めて「世の中は間違っている!」と断言してしまう。

本当に知識がある人が簡単に自信満々に断言しない理由は、物事の善し悪しを判断する上では非常に多くのパラメータが存在しており、自分の認識外の存在を常に疑う姿勢を排除しないからだ。

以上が筆者の考察である。別に自信満々なことは問題ない。だが何でも物事を自分の主観だけで極端に一般化し、主語大きめで話すとノイジーマイノリティという厄介なカテゴリに入れられるので自分の主張が間違っている可能性を排除しない姿勢を持ちたいものである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。