食費高騰でエンゲル係数高い今、やってはいけないこと

黒坂岳央です。

日本のエンゲル係数が28.3%と急騰している。これは1981年以来、実に43年ぶりの高水準を記録したことになる。一方で個人保有の金融資産は昨年2,212兆円で過去最高を更新。端的にいえば「お金持ちとそうでない人との格差が広がっている」ということを意味する。

自分がかつて、貧しかった時期に収入のほとんどを食費が占める経験をしているので、その経験からやってはいけないことを取り上げたい。

pcess609/iStock

栄養をケチる

食費が高くなると真っ先に手を付けたくなるのが「食費をケチる」という行動である。だが、ハッキリいってこれをやってしまうとその先の発展性が閉じられてジリ貧になってしまう。

そしてここでのポイントは、食費削減と栄養価の維持は両立できるということだ。どういうことか?具体的に取り上げたい。

まず、食費と栄養価は必ずしも連動しない。確かに炭水化物は安くてお腹が膨れ、保存性に優れているので「お金がないからコメとパンで腹を満たす」という戦略は真っ先に手を付けたくなりがちだ。

しかし、それをするとタンパク質やビタミンが不足してしまい、パフォーマンスは著しく低下する。だが、炭水化物と比べるとタンパク質やビタミンは足りなくなる。どうすればいいか?

これはかなり極端な意見だが、あくまでコストを抑えた栄養だけを考えるなら、タンパク質は肉を控えてプロテインの力を借りるのだ。下記の表はタンパク質100gあたりを摂取するのに必要な価格を比較したものである。ChatGPT出力のざっくりな概算値を乗せているが、概ね傾向として正しいだろう。

タンパク質100gあたりの価格比較
プロテイン(粉):約133円
納豆:約190円
木綿豆腐:約286円
豚肉(ロース):約750円
牛肉(肩ロース):約1388円

こう見ると、肉はかなり割高な上に脂も大量にとることになる一方で、納豆や豆腐などの植物性タンパク質、もしくは粉プロテインは割安でしっかりタンパク質も摂ることができる。

筆者はパーソナルジム通いで体を鍛えており、プロテインを飲んでいるが最初は飲みづらくともすぐ慣れる。それでいて栄養価が高い上に、タンパク質なのに保存性は抜群で安い。インフレ下の今、検討する価値はあるだろう。コストをケチって白米やパンばかりの食生活なら、プロテインを取り入れるべきだ。

そしてビタミンは鍋料理である。鍋料理のメリットとして、多様なビタミンをまるごと摂取できる点にある。特に水溶性ビタミンは、茹でると流出しやすいが、鍋ならスープと一緒に摂ることができる。また、具材の自由度が高く、野菜(ビタミンA・C・K)、きのこ(ビタミンD)、肉・魚(B群)を一度にバランスよく食べられる。

仕事の現状維持

これは言うは易く行うは難しなのだが、業績が悪化し続ける環境下で、今の仕事があまり給与が十分でなく、将来性もあまりないなら現状維持はやってはいけない。

今、どの企業もインフレで苦しんでおり、社員に昇給できる体力のある会社は限られている。ジワジワと価格高騰の余波に苦しんでいき、潰れてしまえば今より薄給で転職せざるを得なかったり、最悪は路頭に迷う人も出てくるだろう。

そこで今真っ先にやるべきは過去記事でも何度もいってきた通り、スキルアップ一択である。このようなインフレが経済を直撃する状況下でも利益を伸ばす会社は探せばいくらでも存在する。いざと言うと時にすぐ転職ができるよう、勤務先が存続している間に爪を研いておくのだ。

筆者が会社員をしていた時はインフレ経済の真逆のリーマンショックのデフレ経済下だった。大変痛い思いをしたので、筆者は転職直後にもう次の就職先を見据え、より良い待遇が受けられるようスキルアップを続けていたし、勤務先で市場ニーズの高い経験が積めそうな案件には積極的に手を上げて応募していた。

特に35歳を超えると、ポテンシャル採用は難しくなり、それまでの実績でしか判断されなくなるのでとにかくスキルアップ、価値ある業務経験をどんどん積んでいく積極性が求められる。

スキルアップをして時間単価を引き上げることができれば、時間を差し出すことなく使えるお金が増えるので土日にスキマバイトをするのではなく、やるべきはこっちだ。

エンゲル係数の高まりで家計が苦しいという人も出てくる。そうなれば次は治安が沈むことが懸念材料になる。だが、ただただ痛みに耐えるのではなく、できることはまだある。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。