令和は「お客様は神様」から「働く人に配慮する」時代

各種団体の新年会ラッシュが始まりました。今日は富士商工会議所の賀詞交歓会があり、建設業界、製紙業界、ホテル業界などの声を現状を聞くことができました。政治家と団体とのつながりを利害の問題と捉えて悪く言う人がいますが、我々にとっては現場の課題を知る実に貴重な機会となっています。各団体、課題は様々ですが、共通しているのは深刻な人手不足です。

そこで思い出したのが、この正月に感じた時代の変化でした。

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令和の時代に昭和の正月を思い出す

両親が高齢になってきましたので、ここ数年は年末年始は滋賀県の実家に帰省するようになりました。両親と久々にゆっくり話す時間が持てて、とても良いひとときを過ごすことができました。

私の実家は近江八幡という田舎にあるのですが、今年は近くのスーパーが三が日、全て休業していました。私が滋賀で育った昭和の時代は、正月にスーパーが閉まっているのは当たり前でした。平成に入って、ダイエーなどの大型スーパーが三が日も営業を始めるようになり、正月の風景は大きく変わりました。

私は、正月にスーパーが休んでも全く問題ないと思います。あらかじめ分かっていれば必要な物を買いそろえておくこともできますし、生活に大きな支障は出ません。このように、消費者の都合よりも働く人々に配慮する時代に、日本社会のあり方が変化していると感じました。

正月にお店が休んでいる光景を目の当たりにして感じたのは、「お客様は神様」という考え方が終わりを迎えたということです。平成の時代は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが消費者本位の営業を追求し、年中無休が当たり前のようになりました。しかし今では、働く人手が不足し、人件費の高騰や社員の負担増加が問題となり、特に地方では従業員に配慮する経営が必要な時代に突入しています。

歯ブラシを買うのに苦労したドイツでの記憶

思い出したのは、仕事でドイツを訪れた際の出来事です。日本のホテルには歯ブラシが置いてあるのが当たり前ですが、ドイツのホテルには歯ブラシが設置されていませんでした。現地で購入しようとしたのですが、これがなかなか難航しました。

昼間は仕事の予定が詰まっており、ドラッグストアに駆け込めたのは午後5時の閉店寸前の午後4時45分ごろでした。店は開いていましたが、商品を売ってもらえませんでした。

「もう帰る準備をしているから」

店員のこの一言に私は衝撃を受けました。営業時間内であっても、閉店準備のために販売を早めに終了するルールが徹底されていたのです。この経験を通じて「働く人の都合を優先する文化」に触れた気がしました。

労働省の官僚に聞いたところ、ドイツでは消費者が働く側に配慮することで、自らの働くものとしての権利が守られるという意識が定着していると話してくれました。

たしかに、ドイツでは日曜日や祝日にお店が閉まっているのが普通で、消費者はそれを当然のこととして受け入れています。それに比べると、日本は「消費者本位」の文化が非常に強く、24時間営業や年中無休のサービスが当たり前になっています。その背景には働く人々の負担があることを忘れてはなりません。

従業員の身だしなみの多様化に理解を求める張り紙を見て

あるスーパーでこんな張り紙を見かけたことがあります。

「従業員の身だしなみについて、当店では髪色、ピアス、ネイルの自由を認めています。ご理解いただけますようお願い申し上げます」

以前はお店のルールで髪色などの自由を認めていなかったのか、もしくはお客さんからのクレームに対応が必要だったのかもしれません。客が従業員のプライバシーに介入するとなると、もはやカスハラだと私は思います。

流通、飲食、医療現場、トラック輸送など、働き方改革が問題になっている業界が変わるかどうかは、消費者が働く側にどこまで配慮できるかによって決まってきます。

何でもドイツを見習えば良いと言っているわけではありません。日本のホスピタリティの高さは世界に誇れるものだと思います。コンビニで買い物をする時も、タクシーに乗る時も、親切丁寧に対応してくれる従業員の方々に心を打たれることが多々あります。彼らに感謝の気持ちを言葉にして伝えることで、サービスを提供する側もさらにやりがいを感じられるはずです。

社会を変えるのは法律や制度だけではありません。消費者の意識が変わってこそ、令和の働き方改革が成功するのだと思います。


編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(自民党・静岡5区)のブログ 2025年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。