地上げ屋 ドナルド商会:世界に次々と地上げ候補を見つけ出したトランプ大統領

少し前、トランプ大統領を「関税男」と申し上げました。これは本人がそう言ったのですから違和感はありません。次に日米首脳会談を受けて「仲裁者 ドナルドトランプ」と申し上げました。日本製鉄とUSスチールの介入を指して申し上げました。今日は私が新たに命名した「地上げ屋 ドナルド商会」の話をします。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

不動産開発事業者には街中に古い建物やふさわしくないエリアを嗅ぎ分ける能力があります。私も端くれですが、街ブラをするときはピカピカの建物より化け物でも出そうな建物を見つけては「おっ、これいいね。地上げできるよ、これ」になります。

「地上げ屋ドナルド」は大統領になるかならないかのうちに次々と地上げ候補を見つけ出しました。カナダ、グリーンランド、言ってみればパナマ運河もそうでしょう。そして最新はガザで、下手したらウクライナも狙っているのではないかという気もします。当地の報道では「トランプ氏はガザにリビエラを」とあります。森進一の歌のリビエラの語源はイタリア語の海岸の意味で、狭義では地中海のイタリアや南フランスのリゾート地を指しています。ガザは地中海の東の奥でデベロッパー目線から見ればそりゃ素晴らしい価値ある土地であります。特に欧米は日本と真逆で西日を好みますので西側に海があるガザのリゾート地としての潜在価値は冗談抜きで素晴らしいポテンシャルがあります。

トランプ氏はがれきの山で居住できないような状態のガザ地区をきれいにして、リビエラなり桃源郷なりを作るのだ、というわけです。世の中、何の制約もないならこれほど素晴らしい発想はありません。アメリカが全部がれきも撤去してくれてインフラも整備してくれるならそれは素晴らしい。しかし、そこに誰が住むのか、というのが質問です。

これのわかりやすい回答としてメキシコがとって来た昔の外貨獲得政策が参考になります。メキシコはかつては貧しかったため、海岸地のリゾート開発を行い、アメリカ、カナダをはじめとする先進国の金持ちを誘致する政策を取りました。その第一弾がアカプルコです。映画で名前を知っていても行ったことがある方はほとんどいないでしょう。私は行きましたが、メキシコ政府は観光地として力を入れていないはずです。理由は海が下水の排水で汚くて入れないのです。街もごちゃごちゃで犯罪も多いのです。そこでメキシコ観光局が進めたのは人里離れたジャングルの海岸地帯にリゾートを開発し、ホテルは「オール インクルーシブ パッケージ」を提供、リゾート客をホテルの敷地に缶詰にするプランが成功したのです。

仮にデベロッパー目線でガザ開発を想像した時、ユダヤマネーがたっぷり注ぎ込まれ、そこに来る客は欧州中心の白人。そこで働くのがパレスチナ人。海水は汚水浄化設備を経て海に流せばよいですがさて、どこまでできますか?世間で批判のネタとなっているのはガザの土地をアメリカが長期保有するという点。これはいくら何でも唐突過ぎて、お笑い以外の何物でもないのですが、あえてまともにお答えするなら99年借地でガザ地区の一定地域にリゾート開発を許す代わりに150万人分のパレスチナ人居住用の低廉な価格の住宅と生活環境を整えるというなら全然できない話でもないでしょう。

但し、問題の根源であるユダヤとイスラムの取り合いという問題が残ります。つまり仮にガザにユダヤマネーが大量に入り込んだ場合、実質的にユダヤの支配する土地となりえます。そこでそれを制御するためにサウジなどからオイルマネーを大量に注ぎ込み、一定比率を維持するという発想があります。

ここまで読み進まれた方はハタと気がつくでしょう。ガザ地区の再生は実は第三者による総合プランが最適だと思うのです。あのあたりにマネーはあるのです。それを引き出せるだけの魅力あるプランができればよいだけでそれをアメリカが自分で独り占めするというから猛反発を食らうわけです。

グリーンランドに目をつけたのも不動産屋目線では素晴らしいの一言です。地球温暖化が進めばグリーンランドはまさに名の通り、緑豊かなグリーンランドに変貌する可能性があります。グリーンランドを防衛面で押さえているのは実はとっくの昔からアメリカです。デンマークが偉そうに言いますが偵察機1機、犬ぞり警備隊あるいはごくわずかな艦船を持っているだけで、アメリカが派遣している防衛チームははるかに上を行きます。そしてその最大の基地はグリーンランド北端、北極からわずか1500㌔にあるピツフィック宇宙軍基地でアメリカの戦略上、極めて重要な役割を果たしているのです。

今後、ロシアなどと対峙し、温暖化が進み、北極海ルートが開通すればグリーンランドはとてつもなく化ける、これは確かなのです。そしてトランプ氏がカナダを51番目の州に、というのはグリーンランドがカナダの隣であり、地理学的にはグリーンランドは北米の一部とみられるからです。つまりトランプ氏は北米はグリーンランドやメキシコ湾ならぬアメリカ湾までを含む一帯を全部「アメリカと称したい」わけです。強欲なデベロッパーであります。なおかつ、北米大陸においてネックなのは大西洋と太平洋をつなぐ部分のパナマ運河。そこでその管理運営権をアメリカが持てば北米大陸の支配における大動脈まで確保できるわけです。

ではガザは何なのか、といえばユダヤ人への配慮だと考えます。確かにガザはひどい状態になりました。しかし、レバノンやシリアも酷い状態なのです。しかし、そこじゃない、やっぱりユダヤマネーが入るとすればガザしかないわけです。

トランプ氏を大統領という目線ではなく、「地上げ屋ドナルド」としてみると実は彼の主張していることは実に明快、わかりやすいのです。ただし、それが実現不可能だというのも本人もある程度は理解しているでしょう。では最後に、習近平氏とトランプ氏が次回会った時、初めのあいさつで何というでしょうか?

習 「トランプさん、あなたも中国の思想を学びましたね。大中華圏という思想は素晴らしいでしょう。是非ともアメリカと中国で世界を支配しましょう」
トランプ 「習さん、勘違いしないでくださいね。大中華圏は中華思想の拡大でしょう。私は大モンゴル帝国のように土地を支配したいのですよ」。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月17日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。