政府がついに備蓄米を放出の方針:転売ヤーはどうする?

アゴラ編集部

2024年夏以降、「令和のコメ騒動」と呼ばれるコメの品薄状態が発生し、米価が急騰しました。2024年のコメ生産量は前年比18万トン増の679万トンと報告され、需給バランス上は供給が需要を上回るはずでしたが、流通現場ではコメの争奪戦が続き、価格高騰が収まりませんでした。

2024年8月、坂本哲志農水相(当時)は「新米が出回る9月頃には状況が解消する」との見通しを示し、備蓄米の放出に否定的でした。この背景には、事実上の減反政策で米価を維持したい農水省の思惑がありました。

しかし新米流通後も価格高騰が続いたため、政府の予測は外れました。特にJAなどの集荷業者の集荷量が前年比で20.6万トン減少するなど、流通の目詰まりが顕著でした。この状況を受け、政府は備蓄米の放出に踏み切る方針を決定しました。

2025年1月24日、江藤拓農林水産大臣が備蓄米の放出ルール見直しを表明。従来は大凶作や災害時のみに限定されていた放出条件を、流通に支障が生じる場合にも適用可能とする方針を打ち出しました。

農林水産省の審議会がこの見直し案を了承。2月7日には江藤大臣が「できるだけ早く実施する」と発言し、2月14日には最大21万トン(茶わん約32億杯分)の放出を決定しました。放出対象はJA全農などの集荷業者で、最大21万トンの備蓄米を入札形式で売り渡します。

放出されるのは主に2024年産米と2023年産米です。これは一時的な措置であり、1年以内に同量を買い戻す条件が付されています。これにより、米価の過度な下落を防ぎつつ、流通の円滑化を図るねらいです。

専門家の間では、放出決定のアナウンス効果により、既に米価が下がる可能性があるとの見方があります。ただし、乱高下リスクも懸念されています。

生産量が増えたにも関わらず集荷量が減少している背景には、一部の転売ヤーが高値を期待して在庫を抱えている可能性が指摘されています。農水省は小規模事業者への調査を強化し、流通の透明性を高める方針です。

農水省は、2027年度からのコメ政策見直しも公表しており、長期的には生産抑制策の見直しや流通経路の多様化を進めるとしています。しかし、短期的な米価安定には、備蓄米放出の効果が鍵となります。2025年夏に再びコメ不足が起きる可能性も指摘されており、抜本的な対策が求められています。