6人起訴の政権、崩壊寸前のスペイン:それでも辞任しないサンチェス首相

関係者6人が起訴されても辞任する意思のないサンチェス首相

スペインのサンチェス首相に関係する6人が汚職などの罪で起訴され、公判中となっている。それにもかかわらず、彼は辞任する意思を示していない。それどころか、起訴を担当した判事を批判し、「自分は司法の犠牲者である」と訴え、国民の支持を得ようとしている。まさに典型的なポピュリストの手法だ。このような人物が、すでに7年近くスペインの国家運営を担っているのが現実である。

スペインの立憲君主制において、国王フェリペ6世の存在は国の安定にとって重要だ。しかし、サンチェス首相には国王への敬意がほとんどない。それどころか、彼はスペインを第3共和制へ移行させ、その初代大統領になることを夢見ている危険な人物といえる。

起訴された関係者の顔ぶれ

現在、起訴されている6人は以下の通りだ。

  1. サンチェス首相の夫人
  2. 彼の弟
  3. 彼の政党の元組織委員長で、元運輸建設大臣
  4. その顧問秘書
  5. 検事総長
  6. 汚職の実行役となった元フィクサー

この顔ぶれを見れば、政権の腐敗ぶりが一目瞭然である。しかも、今後さらに起訴される人物が増える可能性も指摘されている。

首相の座に固執し、民主政治を犠牲にする

首相の夫人と弟が汚職で起訴されたというだけでも、辞任に値する事態だ。彼らは首相の家族という立場を利用して不正を行った。しかし、サンチェス首相はそれでも辞任しない。

昨年10月、バレンシア県で発生した洪水の際にも、彼は首相としての責任を果たさなかった。復興対応をバレンシア州知事に一任し、自らは積極的に関与しなかったのである。さらに、国王夫妻と共に被災地を訪れた際、一部の被災者が政府の対応の遅れに不満を抱き、泥を投げつける事態が発生した。この時、国王夫妻は冷静に被災者と対話を続けたが、サンチェス首相は「暴力を受けた」として国王夫妻を残し、現場を去った。国王を置き去りにして逃げる首相など、前代未聞である。

機能不全に陥る議会と予算の未承認

サンチェス政権は、すでに統治能力を失っている。議会では、新たな法案を可決させるのが困難になり、審議未了の法案が山積している。現時点で、政府が提出した法案の7割が議会にかけられないままとなっている。議会で承認される見込みがないためだ。さらに、今年度の国家予算すら承認されておらず、政府は予算なしでの運営を余儀なくされている。こんな状況でまともな政権運営ができるはずがない。

しかし、サンチェス首相にとって、こうした問題は二の次である。彼の唯一の目的は、スペインの民主政治を犠牲にしてでも、首相の座に居続けることなのだ。

野党の弱腰と不信任案の行方

このように政権が機能不全に陥っているにもかかわらず、野党第1党である国民党は内閣不信任案を提出しようとしない。政府はバスクとカタルーニャの独立政党と手を組み、かろうじて過半数を維持しているため、不信任案が可決される可能性は低い。そのため、野党は勝算のない戦いを避けているのだ。

しかし、それこそが問題である。野党党首は慎重すぎる官僚型の政治家であり、大胆な行動を取ろうとしない。この消極的な姿勢が、結局のところサンチェス首相の延命を許してしまっている。そして、その犠牲になるのは、スペイン国民なのだ。