2025年アメリカ経済の見通しは修正すべきか?:トランプ大統領次第の下方修正

トランプ氏が大統領選に当選した11月頃はアメリカ経済は引き続き巡航速度を保ち、消費も衰えないだろうという強気の見方が支配していました。日本を除く主要国やEUではインフレ率が低下し、度重なる利下げを行ってきました。現在、利下げをした国々や地域では目先の下限に近付き、一旦利下げを打ち止めするかどうかというところにあります。一方、アメリカは利下げをしたものの他国と比べ「こびりつくインフレ」と称し、利下げ幅は5.5%から現在の4.5%の1.0%ポイントにとどまっています。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

先行きの見通しも専門家は25年中あと1回か2回の利下げという見通しが主流となっています。

ではアメリカはそんなに景気が良く、そんなに消費が維持できるのか、これが本日のテーマです。

まず事実関係を見てみましょう。

株式市場ではダウ平均は11月5日の大統領選挙42200㌦台でしたがトランプ期待で12月4日には44950㌦まで駆け上がります。またこの頃はAIブームも大きく加担していました。その後1月8日に44850ドルをつけ形の上ではW天井になっています。現在は43000㌦台半ばまで下落しており、今後、45000㌦と42000㌦とのレンジ相場になるか、下に抜けるかの判断になります。ナスダックも3営業日で1000ポイント下げており、GAFAMやエヌビディアに高値警戒感が出ています。アメリカ株式市場が本気モードになれないのはトランプ氏の政策、特に関税政策がどうなるのか、読みにくいことがあり、投資家が様子見を決め込んでいることがあります。

次にドル指数を見てみましょう。ブルームバーグ指数では1月9日に109.95のピークをつけてから下落の一途で現在106.3程度です。たいして下がっていないじゃないか、と思われますが、ドル指数は比較的長いトレンドを示す傾向があり、指数の向きが将来を予見しやすいものとなっています。

FRBのパウエル議長が利下げを急がないと言っているので本来であればドル指数は高値を維持するはずですが、どうもセオリー通りに動いていないのです。例えば高値を付ける日本円ですが、なぜ日本円は買われるのか、という問いに答えは2つあり、一つは日銀の強気な利上げ姿勢が今しばらく続くであろうということ、もう1つは久々に聞いた安全通貨「円」であります。

安全通貨「円」というのは今から10数年前ぐらいまではスイスフランと並び世界で不和が起きれば安全な円やスイスフランを買うという動きがあったことに由来します。その後、米ドルが安全通貨の代表格にのし上がり、円やスイスフランは蚊帳の外となっていました。ところが最近のトランプ氏の動向、関税や一般外交からウクライナをめぐる姿勢まで非常に偏りのある判断とその動きにドルからの逃避を促しているようにも見えるのです。

私は年始にある会合で為替の話に触れ、ドル円は80円弱から160円強のレンジ相場であり、プラザ合意のような枠組みの変更がなければこのレンジからはみ出すには相当の理由が必要と述べました。この話はこのブログでも数か月前に触れたはずです。今のところ、この予想は当たり円は140円台まで戻しています。私のこのレンジ相場説が正しければレンジの真ん中である120円程度が最もコンフォートなゾーンであり、基本的にはそこに向かって修正されるであろうとみています。多分、2年ぐらいかかると思いますが、レンジ相場の基本はその中心を軸に動くものなのです。余談ですが、原油価格も仮にアメリカが増産しても需給のバランスがとれる70ドル台がレンジの中心であり、現代社会が原油に依存している限りこのレンジは変わらないのであります。

アメリカの消費ですが小売業売上高で見ると1月分は5か月ぶりに前月比マイナスになりその要因をロスの山火事だと分析しています。私は本質は違うとみています。カナダでは昨年の秋ぐらいから明らかに消費が伸び悩んでおり、それがインフレ率の下落につながっています。一方、アメリカの消費は強気と言われますが、自動車売り上げが低迷し、決算発表したウォルマートが大失望となりました。低所得者の拠り所とされるウォルマートは今や中流階級の人も好んでいくスーパーとなりましたが、それでも業績見通しが悪いとなれば我慢して消費してきたアメリカに陰りがでているとみてよいでしょう。

トランプ氏の関税が仮に発動されれば高いお金を払うのはアメリカ消費者であることをトランプ氏が気がついていないはずはありません。関税は確かに税務当局にとり税収増になりますが、輸入する企業はその負担をカバーするためにエンド価格を引き上げます。すると消費者は関税分高いものを買わされるわけで関税は誰が払っているのか、といえば実質アメリカ国民が払うことになるのです。

これをするとアメリカがスタグフレーションになるリスクが高まってしまいます。こうなれば金融政策のかじ取りは異様に難しくなると同時にアメリカ株式市場から資金は流出しやすくなります。ドルも下落しやすくなるのでドル建て表示の資源や商品価格は上昇しやすくなります。金(ゴールド)が買われやすいのはここにも要因があると思います。

2025年のアメリカ経済の見通しは修正すべきか、の答えはYESです。ただし、どのように下方修正するかはトランプ氏次第ということになります。個人的にはトランプ氏の破壊的関税の脅しは半分以上が却下されるか、実施されないとみています。トランプ人気は思った以上に急落するように見え、そうなれば次回の大統領選挙まで極めて長い冴えないアメリカの時代を迎える可能性もあるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月26日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。