世の中の複雑な出来事を一つの原因で説明する陰謀論は、頭の悪い人の特徴である。たとえばディープステートがウクライナ戦争を起こしたという類の陰謀論は今も世界にあふれ、トランプ大統領にも影響を与えているが、普通の人は信じない。
だが日本の政治は、一つの仮説で99%説明できる。それは経済学的に表現すると
- 目的関数:選挙向けにバラマキを最大化する
- 制約条件:老人のいやがる政策は出せない
という最大化問題の答である。
【自公維「教育無償化」など正式に合意】
教育無償化について、新年度予算案の修正をめぐる3党の合意では、来年4月から私立高校を対象に加算されている支援金の上限額の所得制限を撤廃し45万7000円に引き上げるとしています予算案は修正され成立の見通しですhttps://t.co/AhBnp1oA65
— NHK生活・防災 (@nhk_seikatsu) February 25, 2025
今回の予算案をめぐる三党合意では維新が国民民主を裏切って自民党に迎合し、この老人ポピュリズム仮説を証明したようにみえる。チャットGPTに聞いてみた。
社会保障支出の維持・拡大 → 老人ポピュリズムの影響あり
- 年金・医療・介護の社会保障費は増加しており、高齢者向けの負担増は回避されている。維新は「社会保険料の4兆円削減」という要求を土壇場で出したが、ゼロ回答。
- 日本の選挙構造(高齢者の投票率の高さ)を考えれば、これは政治的に合理的な選択。
- よって「老人ポピュリズムが優先された」という仮説と整合的。
バラマキ政策(物価対策・補助金)→ 参院選の選挙対策
- エネルギー補助金や中小企業支援など、短期的な支持を狙ったバラマキ施策が盛り込まれている。
- これが高齢者を特に意識したものかどうかは議論の余地があるが、高齢者は物価上昇に敏感な層でもあるため、一定の影響は考えられる。特に7月の参議院選挙に向けて選挙区でアピールする材料を出したものと思われる。
- よって選挙向けポピュリズムの影響と解釈できる。これは国政選挙が20ヶ月に1回あり、衆議院の小選挙区や参議院の1人区では投票者の過半数を占める老人の利益を優先せざるをえない事情もある。
国民民主には固有の事情もある
- 国民民主は今までは都市型のすきま政党だったので、コア支持層の利益を反映して「現役世代の手取りを増やす」と言っていたが、最近は現役世代といわなくなった。
- 参議院では地方の1人区に多数の候補を擁立するので、老人向けにシフトした。基礎控除の引き上げという悪手も、老人に不利にならない(年金受給者は有利になる)税制改革という逃げ道だった。
- 基礎控除55万円を上げるなら、公的年金控除110万円を減らすべきだという批判があるのに、老人に遠慮してそれを無視したため、財源問題で詰んでしまった。
最悪だったのは維新の迷走
- 与野党交渉で維新の窓口だった前原共同代表は、早々に「高校無償化」で自民党と合意し、自分で「満額回答」と表現した。
- これに維新の一般党員が反発し、土壇場になって「社会保険料の4兆円削減」という提案を出してきたが、具体的な要求はOTC類似薬と湿布の4000億円だけ。
- 維新が昨年の総選挙で掲げた医療費の窓口負担一律3割という要求は封印した。これが公明党などの攻撃を受けて惨敗したトラウマがあるからだ。
維新と国民を分断した「森山政権」の勝利
- 自民党の森山幹事長は国対委員長を4年以上つとめ、野党の弱みを知り尽くしたベテラン。永田町の土地勘がない石破首相に代わって、与野党交渉の仕切り役だった。
- 彼が目をつけたのは、国民民主から維新に移ったばかりの前原共同代表だった。維新の中では浮いており、国民民主とも話ができない。彼を交渉窓口にすれば、維新と国民が連携できないと見た。
- そのねらいを知らない吉村代表が交渉を前原氏に一任したため、彼は百戦錬磨の森山幹事長に簡単に抱き込まれ、自民党は100点満点の勝利を収めた。
- 維新も国民も、コア支持層の現役世代を捨てて老人ポピュリズムに走った自業自得。老人に迎合する手腕は自民党のほうが上手なのだから、1人区では勝てない。今回の交渉で分断されて野党共闘もできない。参院選は石破政権が勝利を収めるだろう。