日本は本当にオーバーツーリズムなの?

日本は全くオーバーツーリズムではない?

マスコミはことあるごとにオーバーツーリズムと騒いで主たる視聴者の高齢者にアピールするわけですが、何度も言っているように日本の産業では観光しか伸びているものはなく、インバウンドの国内消費はすでに3%に達しています。つまり

インバウンド要らない = 増税を認める

ということになるわけです。だって税収減るから当たり前じゃん。しかも賃金も一斉に下がります。インバウンドなんて要らないとか言ってる連中が代わりに払ってくれるんでしょうか。

さて、日本は本当はオーバーツーリズムではないとデービッド・アトキンソンさんが言っていました。

その根拠としてこちらの表です。

これは面積あたりのインバウンドの数で、日本は香港の1/220しか来ていない。

しかしこれだと山が多くて平地が狭い日本では単純比較はできない・・・・

と思っていたら

わたしはこちら派です。

図だけ出します。

「自国民に対して外国人をどれだけ見るか」

ということなので、このほうがしっくり。

オーストリアもギリシャも自国民の5倍も外国人が来ているのに対し、日本はたったの2割・・・

たしかにこれでオーバーツーリズムはないなと思います。

日本に来ている観光客は韓国、アメリカ、ベトナムと同じ程度。政府はいまの2倍は呼びたいとしていますが、それでもドイツやタイ程度ですから世界で見たらごく普通ですね。

なんでオーバーツーリズムに見えるのか・・・その1

ひとつには日本人が外国人を見慣れていないということがありますよね。

2024年の訪韓日本人が322万人、訪日韓国人が882万人で日本人は韓国からの観光客の1/3程度しか韓国に行かない。だいたいパスポートを持っているのがアメリカ約48%、韓国は約45%、ドイツでは80%以上で日本は17%・・・・コロナが明けても所有率は下がる一方。

パスポート保有率が高い都道府県のトップは東京都で約3割の人がパスポートを持っている。2位は神奈川県で23.6%、3位は大阪府で20.4%。保有率が低い3県、47位秋田県、46位青森県、45位岩手県の東北です。

後進国並みに低下してます。ということはほとんどの8割の日本人は

外国人しかいない風景を見たことがない

わけですよね。つまりちょっといるだけでもたくさん来ているように見えてしまう。昔から外国人観光客の多い京都や浅草を除くと最近になってちょっと来るようになっただけで「どえらく来ているように感じる」わけですわ。

なんでオーバーツーリズムに見えるのか・・・その2

コレが実は大事で国会答弁で大臣も同じように発言しましたが

濃淡が激しすぎる

わけです。来るところには集中し、来ないところには全く来ていない。

LewisTsePuiLung/iStock

このイラストはあるデータと相関関係がありそうです。つまりですね。パスポート保有率の低い県はインバウンドも来ていないのですよ。これは2019年なので保有率はいまより高いのですが・・・

ものの見事にパスポート保有率の低い県にはインバウンドが来ていない。仮説を立てるなら

  • もともと海外に興味がなく閉鎖的な県民性のところにはインバウンドは来ない
  • 海外に行ったことの無い自治体は外国人観光客が何を求めているのかさっぱりわからない
  • そもそもインバウンドが来ているのはニセコや白馬を除くと都市圏ばかり

東京にインバウンドがたくさん来ていると言っても山手線圏内と浅草あたりの話しであって、新宿から18分の我が調布市には全くきていない。深大寺にもいないし、調布駅のビッグカメラにもいない。吉祥寺でさえほとんど見ない。

という感じでしょうか。

しかし地方も稼いで貰わないと都会が保たない

何度も言ってますが、日本の財政の大半は高齢者の社会保障で消えています。

しかし社会保障の次は地方交付金。自分たちでは食っていけない自治体への補助金ですが、中には自前の税収が10%程度しか無くほとんど補助金でやっている「生活保護自治体」みたいなところも多くあります。

こうした自前でやっていけない自治体は多かれ少なかれ近いうちに消滅せざるを得ません。統廃合によって自治体の数は1/3くらいに減らされるでしょう。つまり生き残りたければ「自前で稼げる自治体」にならないといけないのです。そのために唯一、稼げるのはインバウンドしかないわけです。特別会計にも2割を占めるのが地方交付金です。その多くは地方自治体の運営とまたまた高齢者の福祉です。

今後のこの濃淡がはっきりしすぎてオーバーツーリズムでもないのにめちゃ来ているように感じる問題は、やる気の無いというよりそもそも呼び方が全くわからない自治体へのサポートが必要であり、これは国ができるかというとほぼ無理。さりとて東京の専門の観光コンサル会社によくわからないまま多額のコストでしゃぶられた自治体を見ると、丸投げはダメよと思います。

自分はこのあたりを仕事にしていますので、地方のやる気がある自治体、ヤンキーの虎の皆さんからのお問い合わせをお待ちしています。タダではもちろんやりませんけど。


山奥の小さな旅館に外国人客が何度も来たくなる理由: 「また行きたい!」を生む新インバウンド戦略


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2025年3月5日の記事より転載させていただきました。