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副反応疑い報告制度に基づき厚労省から公表されているコロナワクチン接種後の死亡事例は、わが国のワクチン接種後死亡を検討するにあたって、最も重要な情報源である。しかし、各自治体が開示しているデータと照合すると、ワクチン接種後死亡事例のうち、副反応疑い制度でワクチン接種との因果関係を検討されているのは、1%にも満たないことが明らかになった。
コロナワクチン接種後の死亡数:副反応疑い報告制度は実態を反映しているか?
最近、いくつかの自治体が、コロナワクチン接種後死亡事例に関するデータを開示している。開示されたデータには、死亡事例の年齢、性別、ワクチン接種日、死亡日、ロット番号が含まれている。副反応疑い報告例が記載されている厚生科学審議会の資料にも、死亡事例の年齢、性別、ワクチン接種日、死亡日、ロット番号が含まれているので、両者の照合がほぼ可能と考えられる。
浜松市では、ワクチン接種開始から2021年12月末までに、2,872人の70歳以上の高齢者がワクチン接種後に死亡しているが、そのうち、審議会資料に記載されていたのは9人(0.3%)であった。
大阪市も全年齢層におけるワクチン接種後死亡事例の件数を開示している。ワクチン接種開始から2024年2月末までの総死亡数は103,958人で、73,409人(74.8%)に接種歴があった。
図1には、死亡例におけるワクチン接種回数別の割合を示す。死亡例のうち、副反応疑い報告制度で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告されていたのは38人(0.05%)であった。
図1 大阪市におけるコロナワクチン接種回数別の接種後死亡数の割合
副反応疑い報告制度によって、PMDAに報告された事例の特徴を明らかにするために、浜松市と大阪市の開示データと厚生科学審議会の資料とが一致した事例を一覧する。浜松市では9人(表1)、大阪市では29人(表2-1、表2-2)の照合が可能であった。死因と因果関係の評価は担当した医師が報告したものである。
表1 浜松市からPMDAに報告されたコロナワクチン接種後死亡事例
表2-1 大阪市からPMDAに報告されたコロナワクチン接種後死亡事例(Ⅰ)
表2-2 大阪市からPMDAに報告されたコロナワクチン接種後死亡事例(Ⅱ)
浜松市と大阪市のデータを合わせて集計したところ、ワクチンの接種回数は1回目接種後が18人(47%)と最も多く、続いて2回目接種後が10人(26%)であった。大阪市における検討では、死亡例のうち1回目ワクチン接種後が占める割合は2%にすぎないことから、報告例では、1回目接種の占める割合が、極めて、高いことが判明した。
死亡日が、接種当日であった事例が7人(18%)、翌日が9人(24%)、2日後が5人(13%)と、半数を占め、接種後早期の死亡事例の報告頻度が高かった。
そこで、浜松市における接種後早期の死亡事例のうち、報告される割合を検討した(表3)。接種当日の死亡事例でも、9人のうち2人(22%)、翌日の死亡事例でも46人のうち2人(4%)と報告される割合が高いわけでもなかった。
表3 コロナワクチン接種後早期死亡事例のPMDAに報告される割合
担当した医師の診断を示す。死因が不明とする事例と、心筋炎や脳出血などの心臓や脳血管系の疾病が12人(32%)で並んだ。抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎を発症し、間質性肺炎で死亡した事例は、ワクチン接種後29日目に死亡している。ワクチン接種との因果関係は不明であるが、歌手の八代亜紀さんも同じ病気で死亡している。
アナフィラキシーや心筋炎は、コロナワクチン接種後に見られる重篤な副反応としてよく知られている。38人のなかには、アナフィラキシーによる死亡例が4人、心筋炎による死亡例が2人含まれている(表4)。6人のうち5人は解剖されており、その結果、4人については、死因とワクチン接種には因果関係があると担当医が報告している。しかし、厚生科学審議会副反応検討部会では、6人とも情報不足により評価不能と判定された。
表4 コロナワクチン接種後にみられたアナフィラキシーと心筋炎による死亡事例
これまで、厚生科学審議会副反応検討部会で検討された2,283人のうち、死因がワクチン接種との因果関係が否定できないとして判定を受けているのは2人のみであるが、そのうち、1人は、アナフィラキシーによる死亡事例である。
地元自治体が立ちあげた事故調査委員会は、患者安全推進部教授、救急医学教授、循環器内科教授、弁護士など6人の専門家で構成され、10回の専門家会議、3回の関係者ヒアリングさらに現地調査を含めた微に入り細を穿ったもので、報告書は74ページに及ぶ。
調査委員会は、本事例の死因を、ワクチン接種によってアナフィラキシーを発症し、非心原性肺水腫を併発したことによると結論付けている。この事例は、剖検も行われておらず、報告医はワクチンとの因果関係は評価不能と判定している。
ところが、厚生科学審議会副反応検討部会では、診断も確定せず、剖検もされていないのにもかかわらず、総合的判断で、ワクチン接種と死亡との因果関係は否定できないとして判定を下している。
筆者は、国会議員が開くワクチン副反応の勉強会で、厚労省の担当官と同席したことから、この事例がα判定を受けた理由を尋ねることができた。その質問に対して担当官は、接種から死亡までが短時間であることを理由にあげた。
今回の検討でも、接種当日に死亡した事例が7人含まれている。接種から死亡までが短時間であることがα判定とする理由であるのなら、今回の7人がα判定されない理由はどこにあるのだろうか。
今回の検討では、PMDAに報告されていない接種後死亡例の臨床情報がないので、副反応疑い報告制度に登録される事例が、報告されていない事例と比較してどのような特徴があるかを明らかにすることはできなかった。
副反応疑い報告制度の目的は、死因とワクチン接種との因果関係を明らかにすることではなく、ワクチン接種に関わる安全性シグナルを検出すことにある。その意味で、ワクチン接種後の死亡事例の報告率が1%にも達せず、とりわけ、2023年以降の報告率が激減していることは大きな問題である。
副反応検討部会は、これまで一貫して、コロナワクチンの安全性については重大な懸念はないと報告しているが、これほど報告数が激減した状況で安全性の評価は可能だろうか。早急に、2023年以降に、報告数が激減した理由を明らかにするべきである。