インフラの老朽化にどう対処するか?:第2の八潮市事故はいつ起きてもおかしくない

埼玉県八潮市の下水道管の破損を原因とした道路陥没事故はひと月半が経った今も目覚ましい進展はありません。特にトラックの運転手が見つかっていないことで下水のう回路を作るだけで3か月かかり、その後、復旧のプランを立てるとなると半年以上の作業になることは確実でしょう。先日テレビで近隣の方が「匂いに苦しんでいる」とコメントされてました。そりゃそうです。上水ならいくら漏れても臭いはしませんが、下水は最悪。これから春で暖かい日が来るのに窓も開けられないのは悲惨と言わずして何と申し上げればよいのでしょうか?

事故発生時の現場のようす NHKより

我々の住むそばの道路の下には様々なインフラが埋まっています。上水、下水、ガス、更には電気や通信ケーブルもあるでしょう。そして大都市の一部では共同溝といって人が中に入って作業できるほどの大きなトンネルの中にそれらのインフラが同居しており、適宜、それらのメンテを行う仕組みになっています。

私はマリーナ施設を所有しているのですが、船が係留されるそれぞれの場所に上水の供給と市の下水に繋がる排水用パイプが施されています。ところがそれらパイプは海水にさらされ、管が外に露出しているため、当然痛みも激しく、厳寒期になるとあちらこちらから水が吹きあがります。この冬も大体10回ぐらい水漏れがあり、スタッフが多い日には3か所ぐらい直していきます。手慣れたものですが、水が漏れるところは必ずしも蛇口のところに限らず、パイプの継ぎ目であったり、パイプが曲がるところであったり様々であります。

現在、検討しているのは上下水配管の全面やり替えですが、私が考えているのはある地点が水漏れでもバルブが各所に点在していれば漏水を部分的に止めることができる仕組みと配管のう回路を造れないか、という点です。こうすることでどこかで問題が起きても全体に影響が及ばず、応急措置が出来ます。

埼玉の問題ではあの下水管が主要下水ラインになっていてう回ルートがなかったことが極めて広範な地域にまで影響を及ぼした点です。もう1つは下水管が地面に直に埋まっている、これが問題なのだと思います。もちろん、管の内部をリモートカメラで監視する仕組みはありますが、マイナーな漏水は至るところで起きているはずでそれに行政はほとんど気がついていないだけだとみています。そりゃそうです。微小な漏水があっても水は土に帰るだけでどこにも反応はないのです。

日経には「老いる下水道、まち脅かす 耐用年数超えは最大6割も」とあります。第2、第3のの八潮市事件はいつ起きてもおかしくないということです。

私は基本的にはミニ共同溝を普及させるしかないと思います。人が入れて作業ができるサイズの共同溝を幹線道路のみならず、比較的狭い道路まで埋設していくしかないと考えています。敷設のやり方はいくつかあると思いますが、私は開削でボックスカルバートを敷設していくのが一番早いと思います。東京都の共同溝工事は交通量を考え、トンネル方式だったと思いますが、あれは金がかかるやり方なので地方財政が痛まず、かつ手早く作業ができる方法が良いと思います。

私がそれを考えるもう一つの理由は地震です。日本はこれを避けて通るわけにはいかないのです。そしていざ、地震が起きたらインフラに壊滅的ダメージが及ぶ可能性は高いのです。皆さんのスマホが充電できない、あるいはインターネットに繋がらないとパニックになるでしょう。その時なる早で復旧しやすい方法を考えなくてはなりません。その為にもミニ共同溝の中に管を埋設することで実質的な耐震機能ができるはずでインフラの損傷を最小限にとどめることが可能かと思います。

東京都はオリンピック前に電線の地中埋設化を推し進めました。その後はペースが落ちているのかもしれませんが、私が気になるのは広い道路より狭い道路にある電柱とおびただしい電線の量。あれは見栄えの問題よりも災害時には極めて危険な存在になると思います。故に私は幹線道路と枝道は同じぐらい重要な安全基準が必要だと考えています。

ではその費用の削減方法ですが、一案として地方自治体が自前で建設工事をやったらどうかと思うのです。例えばここカナダのBC州は道路の管埋設工事から舗装工事まで全部役所の工事部が直接やります。つまり入札はありません。仮に日本の自治体が極めて大きな規模のインフラ再整備をするとなれば業者に発注する発想ではなく、自前でチームを持ち、年間予算いくらで総延長どれだけやるという明白な目標を提示し、できなければチームの幹部を総入れ替えるぐらいの民間的な管理体制を敷けばできると思います。

我々が住む街はいつの間にか老朽化しているのです。そしてメンテ無き施設はないのです。同じことは古いマンションにも言えることでそのうち膨大な大規模改修工事がいたるところで必要になるはずです。古いマンションにお住まいの方はいつか特別大規模改修資金として一軒当たり数百万円の負担があってもおかしくない、だけど住民にそんな金ない、となれば住めないマンションに居住するのかという最悪の二者択一を迫られるでしょう。

我々はインフラのメンテなんて何も考えていません。そんなの誰かがやるだろうぐらいです。水漏れすれば役所に連絡すればいい、そんな甘い時代はいつまでも続かないでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月13日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。