黒坂岳央です。
仕事や学校の保護者同士で会話をしていて、「この人はどっしり落ち着いているな」という人と「ノリが若い頃のままで止まっているな」と感じる人がいる。実年齢はそれほど変わらないのに、精神年齢に大きな違いがある。
もちろん、気持ちは老け込むより若い方がいいのだが、困難に対して前向きにチャレンジするバイタリティや行動力と、まるで大学生のように大騒ぎして落ち着きのない40代とでは受け手の印象が違って来る。
落ち着いて冷静な大人と、幼い子供のまま中年になった人とは何が違うのか?結論、その人の置かれた立場と考える。

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立場が人格を作る
筆者はいろんな立場を経験して感じることがある。それは「人格を作るのは立場である」ということだ。
サラリーマンの頃、同じくらいの年齢で先に係長に昇進した人物がいた。平社員同士の時は彼と筆者は冗談を言い合って、とても仲良くしていたのだ。しかし、彼は昇進してからいきなり「係長」っぽくなった。
それまでは同じ課でよくジョークを言い合っていたのだが、一切雑談をしなくなり、課長や部長を意識して仕事をするようになった。
自分自身、サラリーマンの頃と独立してからは「物の考え方や価値観」がまったく変わったと感じる。さらに家庭を持つと、今度は「父親」という立場で考えたり行動するようになり、この数年間で精神年齢も一気に成熟したと感じる。
サラリーマン時代の筆者が今の自分を見ると、あまりの変わりように腰を抜かすのではないかと思うくらいの変化だ。
精神的な成熟にはきっかけが必要
一方で、20代前半から30歳くらいで独立に挑戦するまではあまり変化がなかった。毎日、家と会社を往復して仕事は頑張っていたが、ずっと同じ生活スタイルを続けていたのでその間の精神的な成長は今考えると停滞していたように感じる。気持ちや言動などずっと20代前半のままで止まっていた。
思うに、人が精神的な年を取るには「きっかけ」が必要なのだと思う。平社員から係長や課長へ昇進して、次々とマネジメントする部下の数が増えて責任の範囲が拡大する人と、一生平社員で同じ仕事をする人とではどうやっても精神年齢の年のとり方に差が出てくる。
これは後者の立場にいる人たちを下に見てバカにしているのではなく、魂や意識は年を取らないので、きっかけがないと必然的に誰しもそうなるという話なのだ。
筆者が「すっかりオジサンになったな」と感じる最大のきっかけは、子供を持ち、学校へ行くようになってからだ。
同じくらいの年代の親はどうみても中年なので、「自分も同じ中年カテゴリなのだな」と受け入れることになる。さらに子どもたちからは「おじさーん!これ見てー!」などとよく呼ばれるので、「よーし、おじさん今いくよー!」と受け答えする内に、子供たちの前では、自然と「おじさん」という一人称を使うようになった
この事例においても環境変化がきっかけで、社会的、客観的に自分がどう見えているか?という事実をありのまま理解することにより、精神年齢と社会的な年齢を一致させることに成功したと考えている。
仮に自分がずっと一人でサラリーマンを続けていたら、30代、40代になっても「社会的に見て、自分はまだまだ若い」みたいにズレた認識をしていた可能性もある。以上のことから精神的に幼い人は、おそらく年を取るきっかけがないまま年齢を重ねたのではないか?という仮説を立てることができる。
精神年齢を成熟させるには?
よく「痛い人」という表現がある。筆者はこの言葉を、「社会的な立場と精神的な振る舞いのギャップが大きい状態」と捉えている。
例えば、40代のビジネスマンであれば、社会的には「経験を積み、落ち着いて物事を判断しながら、周囲と協調して働く」ことが期待される。しかし、実際の言動がその期待と大きくかけ離れており、ちょっとした想定外で大騒ぎして焦る姿を見せると、「いい年なんだから落ち着いたらどうか?」と感じられることがある。
だが気持ちが若いこと自体悪いとは思わない。ポジティブな方向に若いなら周囲に与える印象も良いものになる。
たとえば「40代でも気持ちが実年齢より若く、チャレンジ精神が旺盛で変化への対応力も高く、勤勉で努力家で気持ちも明るい」という方向に若いなら嫌な顔をする人はいないのではないだろうか。
痛い人にならないためには?
痛い人にならないためには、社会的に期待されている年齢相応の振る舞いができる必要がある。それに必要なのが環境変化だろう。
ビジネスマンであれば、新卒からずっと同じ会社でずっと同じ立場、仕事を続けている人と、数年ごとにスキルと経験を磨きながら転職をしてスキルアップする人とで成熟度は違ってくる。
また、友達付き合いもズッ友より様々な年代や立場、考え方やバックグラウンドの違う人と交流をして異なる視点を獲得して柔軟な振る舞いができる人の方が成熟していると言える。意識して新しい風を入れ続けることで、精神年齢も成熟するだろうと考える。
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もちろん、人それぞれの価値観があり、無理に成熟を求める必要はない。ただし、社会的な期待とズレが大きくなると、結果的に周囲との関係性に影響するし、周囲からの評価が低いと自己肯定感も削られる。時々は自分の客観年齢を意識して、自己認識との悪いズレがないかを確認されたい。
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