
Wavebreakmedia/iStock
出版不況と言われて久しいですが、それでも作家になりたいと願う人は多くいます。
売れる作家と売れない作家の違いとは何でしょうか?現役作家の著書を基に考察します。
「作家とお金」(本田健著、きずな出版)
売れる作家、売れない作家
売れる作家と売れない作家とでは、何が違うのでしょうか。本田さんは両者の違いについて、「面白い本が書けるかどうか」「人の役に立つかどうか」だと主張します。
「あなたも、いままで読んだ中で、面白くて、読むのをやめられなかった本のことを思い出してください。ページをめくるのがもどかしいぐらい、『次どうなるの??』と思わせるような、ワクワクしたり、すごく共感したり、面白い内容の本です」(本田さん)
「本が売れないのは、内容が薄いか、分かりにくいか、二番煎じか、つまらないかのいずれかです。一般的に言って、作家になりたいと思う人は、独りよがりな傾向が強いようです。文章に思いをぶつけるわけで、人間関係が苦手だったり、そういう人は、自分のことを分かってほしいという思いから、文章を書きがちです」(同)
本が売れないのは「内容が薄い」「分かりにくい」「二番煎じ」「つまらない」のいずれかです。それでは人の役に立ち、面白いと思ってもらえるような本にはならないのです。
「ベクトルが、自分の方に向かっているからです。『私のことを分かってほしい。だって、こんなに苦しいんだから。こんなにつらくて悲しいんだから』といったことを延々と書かれても、読んでいる方は戸惑います。たとえば、両親との葛藤を抱えた作者が、虐待などの赤裸々な思い出を延々と書き連ねていくと、読者は苦しくなってしまいます」(本田さん)
「作者が絶望の中から、希望を見出して再生していく様子が描かれていると、読者もまた、希望を見出すことができます。売れる作家は、自分の中にある葛藤、苦しみ、悩み、絶望を自分の中で熟成させて、作品に昇華しています。作家の内面で起きた浄化プロセスのおかげで、紡ぎ出される世界に、読者は心をわしづかみにされ、共感や感動を覚えるのです」(同)
それでも作家志望は多い
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2024年の出版市場(推定販売金額)は前年比1.5%減の1兆5716億円で、3年連続の前年割れです。ただ、紙の書籍については既存店で回復傾向が見られ、文芸書、学習参考書、ビジネス書が好調です。
出版不況と言われながらも、出版には根強い人気があります。有名な著者が開催するセミナーは満員御礼で、出版コンサルタントと名乗る人たちも増えました。本書では、作家になって20年以上になる著者が、日本のみならず、海外での出版経験、世界中を講演している経験から知った出版事情を紹介しています。
作家という仕事のほか、その働き方について非常に参考になる本です。作家志望の人はぜひ読んでみるのをお勧めします。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
■
2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)