中国経済が復活を遂げる可能性はあるか?:底打ちは既に完了の兆し

私は中国経済の先行きについてはそんなに悲観的ではありません。巷では崩壊するといった極論もありますが、だいぶ前に申し上げたように人口が作り上げるコアの経済がある訳で必ず、底はあります。ではその底打ちは何時なのか、そして反転の兆しはあるのか、これがポイントだと思います。

この議論をする前に日本の90年代から2000年代を振り返ります。当時は80年代経済を繫栄の時代と思い、バブル崩壊後の社会は不安の真っただ中にありました。対比の関係です。誰と話しても自分の勤める会社の行方を案じ、どうせ年金ももらえないといったネガティブな考え方が蔓延しました。これが30年に渡るさまよいとも言えるのですが、今やバブル後ではないと感じるのは世代交代が進んだからであります。バブルを知らない人たちが社会を主導する時代になり、スタンダードが変わったとも言えるのです。

1つわかりやすい例を出すと日経平均は89年の高値をずっと抜けませんでした。証券市場では常に「あの時の高値が…」という話を繰り返していたのですが、それは当時のスタンダードとの比較でしかなかったとも言えます。あの高値を奪取するのではなく、日本が体質改善され、その結果として昨年その高値を超えたと理解すべきなのです。

直近のデータで見れば日本の物価上昇率はG7で最も高く、都心の不動産価格は1億円どころか1.5-2億円のレンジに移ってきています。企業は初任給を大幅に引き上げ、ベアを含め賃金の引き上げを断行しています。私の予想では日本の物価は数年から30年代初頭までには先進国並みになる、とみています。これはグローバル社会では一国だけでは成り立たず、特に輸入に頼る日本は世界物価へのすり寄りがなされるのは至極当然の流れだと考えています。

では中国。私が見る中国はミニバブルを作ろうとしている政府の姿勢を感じているのです。習近平3.0発足のち、中国は政権が機能しなかった上にコロナがあり、貿易戦争もあり、リアルの戦争もありで経済浮上を放置したきらいがありました。更に習氏の訳の分からない様々な経済規制が民間企業の投資意欲をそいだこともありました。そこに見えたのはイデオロギーとしての中国の強化でありました。ところが不動産会社の巨額損失問題が次々と露見し、社会問題にまで発展してからは姿勢が大きく変換しました。昨年春頃から政府は中国は経済問題を重視するようになり、小出しながらも経済政策に取り組む姿勢を見せたのです。

習近平国家主席 中国共産党新聞HPより

本格的になったのは今年に入ってからで大型経済パッケージを発表し、李強首相もようやく首相としての声を出すようになったのです。日本との関係も石破首相になったころから着実に良化しており、かつてのケンカ腰の姿勢から議論のやり取りに変わってきています。これは石破氏が取り組みやすいこともありますが、アメリカとの関係を考えた時、中国にとって日本が戦略的国家になるのが自明だからでしょう。

多くの経済アナリストは中国はまだ駄目だ、としています。データからすると確かに厳しいと思いますが、それはかつての2桁成長の時代と比べるからだろうと思うのです。中国が置かれている環境は中国バブルの頃とは無縁で再構築の過程にあるとみています。その中で中国製品が世界で売れつつある点は見逃せません。

中国の輸出は過去最高水準にあり、自動車、工業品、半導体などが伸びています。アナリストは25年はトランプ関税により伸び悩むと予想していますが、むしろ逆でアメリカを回避する動きが出てくれば中国製品に代替特需が生まれる公算があるとみています。特にBYDにみられる自動車産業の伸びが著しいことは経済のファンダメンタルの強化としてはプラスです。

また、上海株価指数をみると24年9月に二番底を付けた後、政府の経済対策の発表などもあり、大きく上伸し、その後も堅調な動きになっています。海外アナリストは昨年あたり「中国株は底で買い」を推奨し続けていましたし、個別銘柄を見ても確かにそこから既に2-3割上昇している銘柄が増えてきています。

政府が引き続き経済のテコ入れを続ければ日本が30年近く苦しんだ失われた時よりも早く復活する公算はあるとみています。ただし、先々GDPが今年目標の5%を大きく超えるような話ではなく、中成長から安定成長の時代に推移するという意味です。先進国の成長率が2-3%前後だとすればいずれそこに収斂すると思いますが、巨大国家だけに年数%成長するだけでも大きなインパクトになるでしょう。

中国経済は体質改善の真っただ中で人口減が見込まれる中、輸出を伸ばし、海外拠点を増やしていく姿勢を取りながら経済の安定飛行を目指すものと思われます。私の目からは底打ちは既に完了しており、ここからジワリと回復し、中国が自信をつければ確たるものになるとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月25日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。
preload imagepreload image