正気ではないトランプ氏の行動:日本はアメリカに頼り過ぎた点を反省すべし

トランプ氏が相互関税を大統領執務室の横にあるローズガーデンで午後4時から発表する、と聞いた時、相当インパクトがある内容になるだろうと予想していました。まず、ローズガーデンでの発表は極めて重大な案件の発表の時に使うこと、もう一つは株式市場の場引け後の発表は一般的に市場へのインパクトに対する配慮だからです。たぶん、政権幹部の誰かがトランプ氏の耳元で囁いたのでしょう。「閣下、市場が開いている時間にこれを発表すると市場が大混乱のまま終わってしまうのでアジア市場が開く前に発表し、我が国の市場が開くときにはある程度発表内容をこなれさせた方がいいですよ」と。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

果たしてこなれたか、といえば結局、アメリカが一番インパクトがある状態になっています。日本が2.77%下落、上海は影響なし、ドイツ、フランス、英国は1-3%下落でした。それに対してアメリカはS&P、ナスダック、ダウが4-6%の下落になっています。

関税措置で囁かれていたのが「この関税は米国国民に最も影響が出ること」、そしてその言葉通りの展開になっています。

「正気ではないトランプ氏の行動」と書いたのは私には関税措置ひとつとっても尋常な判断力を持った人のまともな判断とは思えないからです。様々な声を無視し、取り巻きの応援団にちやほやされて、「どうだ!」と言わんばかりのトランプ氏は本当に精神疾患ではないかという気がするのです。

数日前、トランプ氏が「自分は大統領第3期目を務めることを本気で思っている」と述べました。そのヒントはプーチン氏がどうして政権トップの座にあれだけ長く君臨できたかを考えれば察しの良い方はその方法がどこにあるかお分かりになるでしょう。次回大統領選でバンス氏を大統領候補として送り出し、自分を副大統領に指名させるか、議員にならなくても就任できる下院議長に据えてもらい、バンス氏が(及び後者のケースは副大統領も)執務不能で辞任した時点で自動的に大統領に返り咲く、という方法です。そこまでしたらアメリカという国は国の名前を変えるべきでしょう。

今回の相互関税も関税比率の決定が極めてずさんであったことを露呈しています。対アメリカ貿易黒字額÷当該国の貿易額÷2であります。そして全世界に10%のベース課税をします。この10%は貿易当事国が対米で赤字でも黒字でも関係ありません。人が住んでいようがどんな小島だろうが、自動的に加算され、さらに重要国(=放置できない国)に上乗せ関税を計算したものであり、日本の場合は24%と出たわけです。

さて、ここからが問題です。市場は崩壊するような下落を演じています。相互関税発表で「あく抜け」期待を裏切ったのはそのインパクトが大きすぎたからでしょう。市場の動きを見る限り目先反発期待はなさそうで、特に日本は弱り目に祟り目状態で「終わりの始まり」になるようにも見えます。アメリカの株式が高値から20%下落となれば弱気相場入りで通常は回復するのに年単位となります。日経平均も以前、チャート的に3万円程度までの下落はあると私は申し上げましたが、視野に入ってくるかもしれません。

日本の株価を下押すもう一つの理由は為替で、想定通り円高に向かってきています。円高というより、ドル指数が猛然と下げており、世界通貨に対して「ドルの一弱状態」になっています。この状態が長く続けばドルの信認問題にもつながってくるため、巷で言われる国際貿易秩序の問題どころかドル基軸を揺るがす公算すら出てきてしまいます。

多少知識がある方から見ればトランプ氏の政策はブレーキが壊れた蒸気機関車のような爆走状態であり、本人が現実を受け止めることができるのかという点が気になります。もしも氏の精神状態に問題がなければこれから各国と交渉をし、10%を下回らない範囲で関税率引き下げとなるでしょう。しかし、その作業は膨大で、事務工数的に時間を要すると思います。一方、ブチ切れたままならばお手上げでしばし続くことになります。

6月にカナダでサミットがあります。私はトランプ氏は来ない気がしています。自分でカナダは51番目の州だと繰り返し述べたことで「カナダに行けばおれば暗殺されるかもしれない。そんなところにのこのこ行くわけにはいかない」と。それは表向きの理由でトランプ氏はG7で6人の敵、そのうち4人は特に難癖をつけるであろうその相手に「俺は一対一の交渉しかしない」という中で逃げたいというのが本音だと思います。

最後に、ここから日本は何を学ぶべきか、2つ提示したいと思います。1つ目は日本はアメリカに頼り過ぎた点を反省し、自立すべく新たな国際戦略を官民が一体となって作ること、2つ目はアメリカに言うべきは言うという姿勢を見せることです。石破氏では全くできません。毅然とした態度を示せる人がリーダーになるべきでしょう。

日本は生産立国からノウハウを中心とした知識集約型国家に変貌する必要があります。その際、世界のリーダーシップをとれるような人材育成も極めて重要になってくるでしょう。我々がもつ世界観が変わりつつあるのかもしれないし、4年後にはまた元に戻るのかもしれません。ただ、今の日本に4年間、耐え忍べと無為な時を過ごしている暇はないのです。だからこそ、今、立ち上がらねばならないのです。くだらない与野党の綱引きをするよりも挙国一致でどうやってこの事態から脱却できるか議論すべきでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月4日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。