英語にderailという言葉があります。rail (レール)にde (離れる)という接頭語がついて「脱線」という意味になります。近年、世界がDerailし始めたのは2つの戦争からでした。今回、トランプ氏の無謀で未だ成果に乏しい政策は世界の国々を凶暴にし、眠れる獅子を起こしただけでなく立ち上がる民のボイスが大きくなりそうです。カナダも一丸となって対抗措置を取っていると思いきや、4月28日の総選挙を控え、国を二分する争いとなり、西部カナダと東部カナダの争いになりつつあります。欧州でもアジアでも地下マグマが熱く、いつ噴き出してもおかしくない状態のところもあります。人々は不満とストレスを抱えています。列車を再び軌道に戻すことはできるのでしょうか?
では今週のつぶやきをお送りします。
何処に向かう、大激動の経済界
あくまでもトランプ氏が様々な関税を維持し続ける前提に立てば世の中の価値観と常識が変わりつつあることを示しています。世界はアメリカにビジネスチャンスを求め、マネーが流入し、人が流入し、知識が集積され、巨額のマネーと高度な頭脳によるリーダーシップが期待されてきました。トランプ氏はそこに第2の国境の壁を立ち上げたのです。第1は言うまでもなくメキシコとの現実の国境という壁であり、今回は関税の壁であります。
欧州でもカナダでもアメリカとの経済共栄圏からの切り離しが視野に入ります。酒屋では既に手に入らなくなったカリフォルニアのワインの代わりにカナダ産のワインを飲めばよいし、クルマだってカナダには日本メーカーが工場を持っています。バイ カナディアン運動が強まれば一部の消費傾向は大きく舵を切ることになります。これは欧州でも同じ。カナダにはTPPがあるし、仲間の国はたくさんある、何も総悲観にならなくてもいい、そんな風潮すら見えてきつつあります。
株式市場は非常に読みにくくなっています。日本の一部専門家からは木曜日が底という声もありました。確かにボリンジャーバンドでマイナス3σを超えたということは確率論から現在は0.3%の領域を更に下げているわけですが、リーマンショックやコロナの時のように破壊的事象が起きるとそれらの統計的指標はほぼ役に立ちません。火事で燃え続ける中、雨が降って消えることを待つのみという状況です。金曜日の北米市場はセリングクライマックスだったのか暗闇の真っ只中かは判断できませんが、今日はOPEC+の原油増産が弱気の背中を強く推す結果になりました。新NISAに資金を入れている人にとっては「俺のカネ、返せ!」と言いたくなるでしょうね。

関税を発表するトランプ大統領 ホワイトハウスXより
東大が遂にハードルを越えた!
かつて東大総長が秋入学を計画したところ、様々な圧力と抵抗にあい、苦戦したことがあります。なぜ秋入学を目指したか、確か学生の国際化を目指すものの4月入学が他国にとって特殊であり、優秀な学生が集まらないからとされたと思います。しかし教育界は構造的変化を望まなかったのです。事実、東大の外国人留学生は2%程度とされます。欧米の一流大学に比べると論外の低さであります。もう一つの課題は就職でした。夏の終わりに卒業してもどこに勤める、という疑問に十分こたえられなかったのですが、今や企業では通年採用が増えてきました。
今般生まれた70年ぶりの新学部、カレッジ オブ デザインは秋入学、5年制で英語の授業、半分は留学生という目標設定で27年秋開校を目指します。5年制とは4年生の学部と1年間の修士課程を組み合わせたもの。更に1年目は何と全寮制で国際感覚とコミュニケーションスキルの向上に努めるのでしょう。学部長も外国人となり、これまた東大史上初の試みとなります。
個人的には非常にうれしい展開だと思います。まずアジアのリーダー国の最高峰である東大の世界評価が今一つだった中で世界水準の教育を提供できる土台が出来そうだという点につきます。私がある事情で日本の大学に留学するカナダ人を調べたところ、交換留学生を入れても二桁人数に達する大学は1つか2つ。聞けば大学教授あたりから「北米からわざわざ日本に学びに来る意味は少ない」と言われ、残念な思いをしていました。東大が動けば私大も動くでしょう。教育の流れが変わる第一歩となればと思います。
大統領が罷免された韓国の国民への手紙
大統領が罷免されるのは尋常なことではありませんが、貴国では朴槿恵氏に続き、尹錫悦氏も罷免されてしまいました。もちろん尹氏のあの時の行動は行き過ぎであったことは私も認めますが、どれだけ韓国の国政がデッドロックに乗り上げ、国家が二分していたかという背景を知らずして罷免の事実だけが独り歩きし国民がその勝ち負けで喜怒哀楽するのは不思議な光景です。貴国では大統領が任期満了後に逮捕されるのが通例でしたが、今やさらに進化し、任期中にクビになるという新しい流れをも作ったのでしょうか?
この次の大統領は「共に民主党」の李在明氏が6月の選挙を通じて選べばれることが有力視されているようです。対日本では強硬派と理解しています。貴国の世論は一部の高齢者層などを中心に狂信的ともいえる反日の方もいらっしゃいますが、歴史問題を含む日韓問題は双方の努力もあり、10数年前に比べ、落ち着いてきており、お互いが歩み寄り、若い世代に於いては双方向の交流を通じて感情問題はずいぶん解消されていると認識しています。一方、狂信者が必要もない火を焚きつることで世論を扇動しようとする火種もまだ残っていると思います。ですが、その手法はもはや古いことに気が付くべきです。
今後、日米韓の防衛と安全保障の問題がクローズアップされてくるでしょう。トランプ氏のスタンスは金を使わないために米軍駐留のコストを無駄だとし、日韓に金を出せと脅してくるでしょう。トランプ氏は「嫌ならいいんだぜ」と言い、「俺はバディの金正恩と直接駆け引きが出来る」と豪語するでしょう。この時、日韓がどういう態度で臨むのか冷静に考えるべきです。貴国も今回の関税問題で相当のダメージを受けるでしょう。その状況下で日本と疎遠になることは一文の得にもならないことは子供でも分かります。感情だけで先走るならそれはどうぞご自由にと申し上げますが、我々の地政学的特性だけはご理解いただきたいと思います。
後記
Marina New Office Apr 2025工場制作していた海上浮上型事務所が遂に200キロ離れた工場から船でえい航されてきました。一階部分は防水と傷防止のラップをしています。1月末には完成していたのに風が悪く、えい航に2カ月以上待たされました。えい航だけで3艘の船を使い、狭い湾内での作業用はえい航船を大型船から小型船に切り替え、前方に引っ張る船と共に後方にはもう一艘が後ろ向きで軽く推進力をかけ、浮上事務所がブレないようにして運びます。へぇ、凄いと思うでしょう。請求書はもっとすごいです。保険を含めたえい航だけで600万円は高すぎです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月5日の記事より転載させていただきました。