トランプ関税に異議を唱える訴訟(NYタイムズ)
■ 関税差し止め訴訟の開始
- 保守系団体「新市民自由連盟(NCLA)」が、国際緊急経済権限法(IEEPA)を使った中国への関税は違法とし、連邦政府を提訴。
- IEEPAはもともと「経済的緊急事態」対応のための法律であり、「関税の導入には使えない」と主張。
■ 新制度の仕組み
- ほぼすべての国に10%の基礎関税。
- さらに「貿易赤字に基づく計算」で国別に1〜40%の追加関税。
- 例)中国:+34%(累積79%)、ベトナム:+46%、カンボジア:+49%。
■ インフレと生活コスト
- 食品価格がすぐに上昇:果物、コーヒー、エビ、アルミ缶のビールなど。
- 低所得層ほど打撃大。平均で家庭ごとに年$2,100の追加負担(イェール大学調査)。小規模メーカー(例:香辛料輸入企業など)は原材料コスト高騰で苦境。
■ 市場と企業の反応
- S&P500が4.8%、ナスダックが6%下落(コロナ禍以来の大幅下落)。
- アップル、ナイキ、デル、ビール業界、食品企業などに大打撃。
- 自動車メーカー(フォルクスワーゲン、ステランティス)は価格転嫁や生産停止へ。
■ 報復と政策転換
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- 中国:34%の報復関税を即日発表。
- カナダ:25%の報復関税をアメリカ車に課す。
- メキシコ:報復せず、国内生産強化で対応(食料・エネルギー・繊維など)。
- EU:交渉継続を希望するが警戒強化。
■ 関税は交渉カードではない
- トランプ氏:「関税は国家緊急事態への対処。交渉ではない」。
- 財務長官ベセント:「企業と話す方が国と話すより重要」
「抵抗は無駄だ。合意を結べ」世界に向けたトランプ関税のメッセージ(WSJ)
■ トランプ政権の戦略
- トランプ大統領は、報復に対してさらに大規模な追加関税を課すと警告。
- 一方で、報復せずに交渉に応じる国には優遇の可能性も示唆。
- 「主導権は米国にある」と強気な姿勢。
■ 各国の初期対応:報復を控える動き
- オーストラリア(10%関税):報復合戦には参加しないと声明。
- 日本(24%関税):報復の具体策は発表せず。
- 中国とカナダは一部報復関税を発動したが、最も強力な対抗手段は温存している。
■ トランプ氏の報復警告の具体例
- カナダ:オンタリオ州が米国への電力に25%の課税 → トランプ氏は関税倍増の報復を警告。
- EU:ウイスキーに50%関税 → トランプ氏はシャンパンなどに200%関税を示唆。
■ 各国のジレンマと交渉の動き
- EU貿易担当のシェフチョビッチ氏は米国と交渉の意思を表明、「24時間体制で合意を模索する」とコメント。
- EUやカナダは、報復を行いながらも交渉の余地を残す「二正面戦略」を選択中。
■ アメリカのサービス産業が報復の的に?
- 欧州はアルファベット(Google)やメタ(Facebook)などの米IT大手を標的にする案を検討中。
- 知的財産権の制限や市場アクセスの制限といった非関税的手段も視野に。
トランプ大統領は関税で19世紀に逆戻り(Economist)
■ トランプ大統領の主張
- アメリカは他国に「略奪されてきた」と発言。
- カナダとメキシコは例外とされたが、アメリカの平均関税率は1930年代の大恐慌時代よりも高くなる。
■ 大統領の誤った歴史観と経済理解
- 高関税政策が経済を成長させたという誤解を持っている。
- 実際には関税は経済を悪化させ、1930年代の大恐慌の原因の一つだった。
- 貿易赤字を「外国への富の流出」と捉えているが、実際にはアメリカ人が貯蓄よりも多く投資していることが理由。
■ 技術的なミスと政策の根拠のなさ
- 関税の計算が雑で、貿易赤字の割合から適当に決めた可能性が高い。
- 通貨操作や付加価値税などの問題を理由にしているが、正確な評価とは言えない。
■ 影響と批判
- 消費者はインフレに苦しむ。
- 企業は競争力を失い、株価も下落。
- 特に海外生産に依存する企業(アップルやナイキなど)は大きな影響を受ける。
■ 世界の対応
- 各国は報復関税を控えるべき。報復するとさらに状況が悪化する可能性がある。
- アメリカ抜きで貿易の流れを強化する道もある(EU、CPTPPなど)。
- 中国との関係も再考すべきで、国内需要の拡大や投資のルール見直しが求められる。