今朝ダイヤモンド・オンラインで『「日本は米に700%関税」トランプ氏はデタラメだと反発する日本人が知らない事実』という記事を出した。

トランプが「700%の関税率」と発言したことを理解できないという声もあるが、農水省のホームページには「768%」という数字が実際に記載されており、解釈の違いはあれど、完全なデタラメとは言えない。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより
それよりも深刻なのは、日本の米自給政策そのものが支離滅裂であるという点だ。その結果、日本人は、国際価格の数倍、あるいはそれ以上の高値で米を買わされている。
いまや韓国の賃金は日本を上回っているが、米5キロあたりの価格を比べれば、日本が4,000円以上に対して、韓国では1,500円ほどだ。中国では800円、バンコクでは400円以下である。
しかも、日本では米が不作になったり(たとえば1993年)、きっかけは小規模な不作であっても、政府の無策によりトイレットペーパー騒動のような買い占めが起き、「米がない」というパニックが発生する。
政府は「食料自給策」と言うが、実態はその自給策こそが、超高値と米不足を引き起こす要因となっており、もはや漫画のようなばからしさである。政府だけでなく、消費者もこの現状を受け入れているという点で問題がある。
記事では、江戸時代に始まる米政策の歴史を振り返りつつ、戦後の食管制度に触れている。現在は、極めて高い関税により、平均的な農家のコストがそのまま価格に転嫁される構造となっており、米価は国際競争にさらされないまま、ガラパゴス的に高止まりしている。
先進国において農業は、食料の安定供給のみならず、食文化の維持、地方振興、景観保全など、さまざまな観点から合理的な範囲での保護が必要だ。また、国産食品を愛好する気持ちも貴重である。しかし、国際常識からかけ離れた価格設定になっていたり、逆に安定供給を妨げるような事態を招いている現状は、本末転倒と言わざるを得ない。
繰り返すが、日本より一人あたりGDPが高く、自然条件も厳しい韓国において、米5キロが1,500円程度で売られている現実と比べて、倍以上の価格で米が販売されている日本の状況には、合理性がまったくない。バンコク並みとは言わないが、せめてソウル並みの価格帯でやっていけるよう、農業政策を抜本的に見直す勇気が必要だ。
なお、私はウルグアイ・ラウンドの農業交渉の際、フランス政府と互いに抜け駆けして降りないように言いくるめて、当時の通産省に「まだ、フランスは農業で降りないから、日本も米で粘って交渉を壊しても日本だけのせいとは言われないから頑張れ」とか言っていた立ち場で、実際3年間、合意は先延ばしになった。
また、1980年代から農業に関心を持ち、先進的な農業を実践している現場を専門家と共に数多く視察してきた。国土庁地方振興局の参事官としても、また物書きとしても、農業政策について経済誌などに執筆してきた経験があり、決して素人ではない。