2025年の聖週間が始まった

2025年の復活祭(イースター)が差し迫ってきた。イエスは十字架で処刑された後、3日目に復活し、バラバラに散った弟子たちを見つけ出し、福音を宣べ伝えた。その後、40日目に昇天する。人類の罪を背負い、十字架で亡くなったイエスの復活を信じるキリスト教は世界に広がっていった。イエスが歩んだ期間(公生涯)は3年間。その3年間という短い歩みが世界の歴史を大きく変えていったわけだ。

バチカンのサンピエトロ広場で聖枝祭が挙行された。聖週間が始まった。2025年04月13日、バチカンニュースから

今年の復活祭は東西両教会が同日に祝う記念すべき年だ。ローマ教皇とコンスタンティノープル総主教の相互破門がきっかけでキリスト教会が分裂(大シスマ)して以来、東西教会は信仰の基本は共通しているものの、聖堂の建築様式や典礼のスタイル、聖歌のメロディなど、文化的な違いが出てきた。ミサの形式も異なり、そして別々の暦で復活祭を祝うようになった。

ローマ・カトリック教会(およびプロテスタント教会)は通常、グレゴリオ暦を使用して復活祭の日付を決定する一方、正教会の多くはユリウス暦に基づいて復活祭の日付を計算する。そのため、正教会の復活祭はカトリック教会よりも1週間から5週間遅れることが一般的だったが、今年は同じ日(4月20日)に祝うのだ。

少し話は飛躍するが、ロシア正教会の敬虔な信者プーチン大統領と米福音教会の信者トランプ米大統領は20日、教会主催の復活祭に参加するかもしれない。前者はクレムリン宮殿で、後者はホワイトハウスのオフィスでそれぞれ短く祈りを捧げながら職務を継続するかもしれない。

考えにくいシナリオはプーチン氏が家族と一緒になって自宅で復活祭を祝い、プレゼントを交換することだ。一方、「不確実性の権化」のトランプ氏の場合はその日が来るまで何もいえない、というか、何もいわないほうが無難だろう。多分、夫人を連れてホワイトハウスの近隣の教会に出掛けるかもしれない。もちろん、多くのカメラマンを連れてだ。プーチン氏にとっても、トランプ氏にとっても、キリスト教最大の祝日「復活祭」は最高の書割となることは間違いないからだ。

話を戻す。フランシスコ教皇が今回、復活祭のミサを担当するか否かは現時点で不明だ。バチカン関係者によると、その日の天候次第という。医師団は「療養中の教皇にとって野外ミサはまだ無理がある」と受け取っている。

フランシスコ教皇は2月14日、ローマのジェメッリ総合病院に入院した。88歳のフランシスコ教皇の病状は、入院当初は気管支炎といわれたが、その後、両肺に炎症が広がっていることが分かった。教皇の容体が悪化し、一時期、持続性喘息性呼吸危機の症状となり、酸素呼吸が行われ、血液検査で血小板減少症と診断され、輸血が必要となったほどだ。同教皇は3月23日になってようやく退院したが、あと数週間は絶対療養が必要といわれている。

ちなみに、フランシスコ教皇は今年3月でペテロの後継者のローマ教皇に就任して12年目を終えたが、同教皇は2020年4月12日、「信者のいない復活祭」を体験している。バチカンでは復活祭はローマ教皇がサンピエトロ広場で世界から信者を迎えて記念礼拝を行い、最後には世界に向かって「ウルビ・エト・オルビ」の祝福を発することが慣例だが、2020年の復活祭はそれが出来ないという異例の復活祭となった。

その直接の原因は中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(covid-19)の影響だ。新型コロナの感染を防ぐためにバチカン側は「信者のいない復活祭」を挙行することにした。サンピエトロ広場ではなく、大聖堂内で復活祭の記念礼拝が行われた。フランシスコ教皇と儀典長グイド・マリーニ神父のほか、枢機卿、司教たちの数人の姿だけが見られた。今年は先述したように東西両キリスト教会が同日挙行する記念すべき復活祭だ。フランシスコ教皇はぜひともサンピエトロ広場で記念ミサを行いたいところだろう。

13日は聖枝祭だった。ローマではイエスのエルサレム入城を記念する厳粛な行列が行われた。聖週間(Holy Week)の始まりだ。そしてイエスの受難と復活が続く。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年4月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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