ミドル社員の昇給の停滞を脇目に初任給30万円以上の企業が倍増

日本経済新聞社が2026年度の新卒採用計画について行った調査によると、2025年度に初任給を「月30万円以上」とする企業は131社にのぼり、前年度の58社から倍以上に増加したとのことです。

初任給全体の平均も過去最高を更新し、前年より約5%高い25万4228円となっています。

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大手企業だけでなく、地方銀行でも初任給の引き上げが目立っており、特に都市部よりも人手不足が深刻な地域での対策として行われています。福井銀行は、2024年春に20万5000円だった初任給を26万円に引き上げ、地元でのUターン就職を促す狙いがあるとしています。

さらに、大和ハウスグループは初任給を10万円引き上げて35万円とし、金額ベースでは全体で最も大きな引き上げとなりました。同社は「これまで当社を選択肢に入れていなかった優秀な人材の獲得を期待している」としています。

さらに、サントリーホールディングス(HD)や大成建設は、転居を伴う転勤者に対して高額の一時金を新たに支給する制度を導入しています。

採用人数についても増加が見られ、2026年春に入社予定の大学卒業者の採用計画は、前年より11.5%多い14万302人となりました。増加率こそ前年よりも鈍化しましたが、4年連続で2桁の増加となっています。文系(7.9%増)よりも理工系(16.0%増)の伸びが顕著で、特に技術系人材のニーズが高まっているそうです。

業種別では、ドライバー不足が課題となっている陸運業で33.4%の大幅増となっていますが、大手以外で対応するのは難しい面もあります。

企業は人手不足に対応するだけでなく、インフレへの対応や社員全体の処遇改善も意識しています。

業種別では、銀行業や鉄道・バス業界で初任給の引き上げ幅が大きく、採用競争が激化しています。ただし、その初任給の賃上げの原資は、ミドル世代の昇給を抑えることでねん出している側面もあります。

そもそも氷河期世代は政治からもなかったものとされてしまいました。

一方で、アメリカのトランプ政権による関税政策などで世界経済の先行きが不透明になっており、企業業績が悪化すれば、新卒採用計画を縮小する企業も出てくる可能性があります。

ただし、新卒の初任給が30万円以上となっても、それに見合ったパフォーマンスを出すにはしばらく時間がかかりそうです。

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