黒坂岳央です。
人生で最も長く一緒に過ごす相手は誰だろうか?
恋人? 家族? 親友?
多くの人が「家族かパートナー」と答えるだろう。しかし、米国の調査データをもとにOur World in Dataがまとめた統計がまとめた統計は、我々の予想を裏切る結果を示した。
実は、ほとんどの人(サラリーマン)にとって人生で最も多くの時間を共に過ごす相手は、「職場の同僚」なのだ。

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職場の人間関係が幸福度を決める
人生は「時間」という有限資源でできている。1日は24時間、1年で8760時間。すべての人に平等に与えられたこの時間を、我々はどう使っているのか。
特に20代から50代の働き盛りには、仕事に費やす時間が圧倒的に多くなる。そしてその時間を、我々は家族でも友人でもなく、職場の人間と一緒に過ごすことに使う。
多くの人は職場を「給与」や「福利厚生」で選ぶ。だが、日々一緒に過ごす人間関係の“質”は、報酬以上に人生の満足度を左右するといっても過言ではない。
例えば、ネガティブな上司や足を引っ張る同僚、愚痴ばかりのチームメンバーと長時間を共にする毎日は、精神的にも肉体的にも摩耗する。一方で、信頼できる上司、切磋琢磨できる仲間、前向きな空気のある職場であれば、その時間は人生を豊かに彩るものとなるだろう。
給与はもちろん大切だ。しかし「毎日、誰と過ごすか」は、給与以上に人生の幸福度を決定づける重要な要素なのだ。
家族や友人との時間は一瞬の煌めき
興味深いのは、「誰と過ごすか」という時間の配分が年齢とともに大きく変化していくことだ。
- 両親・兄弟と過ごす時間は20代で激減し、その後はほぼゼロに近づく
- 子どもと過ごす時間も、子育てが終わると急激に減少
- 友人との時間は10代がピークで、その後は下降の一途をたどる
つまり、最も大切にしたい人たちとの時間は、人生の前半でしか手に入らない。だからこそ、若い時期に過ごした“キラキラした思い出”が、後から思い返してもまぶしく感じるのだ。
とりわけ子どもとの時間は本当に一瞬である。幼い頃は親にべったりでも、成長するにつれ親の存在は徐々に遠ざかる。だからこそ、子どもが小さいうちは、仕事より子どもとの時間を意識的に優先すべきだ。
友人も同様だ。若い頃は「いて当たり前」だった存在が、大人になると簡単に疎遠になっていく。意識して繋ぎとめなければ、関係はすぐに消えてしまう。
一人の時間は、人生の後半に増えていく
そして、人生の後半に向けて増え続けるのが「ひとり時間」だ。
定年を迎え、配偶者に先立たれれば、日々の会話相手は誰もいなくなる。孤独は避けがたく、ひとりで過ごす時間が圧倒的に増えていく。
若い頃は一人の時間を楽しめる。筆者も学生時代は一匹狼で、一人行動を好んでいた。しかし、歳を重ねるほど「誰かと過ごせる時間のありがたさ」が身に染みてわかってくる。
だからこそ筆者は現在、仕事も独立直後と比べるとかなりセーブしている。代わりに家族との時間を長く過ごすことを優先したライフスタイルを送っているのだ。
誰と過ごすか?を重視せよ
人は、お金や時間の使い方には慎重だ。しかし、「誰と過ごすか」という最も重要な投資対象を見落としていないだろうか。
お金も時間も手段に過ぎない。結局、人の幸福は「誰とどう過ごすか」で決まるのだ。
だからこそ、職場選びでは“人的な質”を重視してほしい。誰と働くかは、誰と人生の大半を過ごすか、という問いに他ならない。
そして多くの場合、付き合う人のレベルは自分の実力に比例する。努力して自分を磨けば、自然と良い人間関係にも恵まれていく。
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人生は長いようで短い。そしてその本質は、「誰と過ごしたか?」なのである。
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