こんにちは。自由主義研究所の藤丸です。
アメリカのトランプ大統領が就任してから、本日(4月20日)で3か月です。
今月上旬、「トランプ関税」の発表により、世界を驚かせたアメリカですが、今後の各国との関税交渉に注目されています。
関税の是非については、前回の記事もぜひ御覧ください。

関税については、アメリカ国内はもちろん、トランプ政権関係者内でも意見の大きな相違があります。
トランプ大統領の貿易・製造業担当上級顧問のピーター・ナヴァロ氏は、関税政策について「関税は減税だ」として推し進めています。
今回は、これに対して激しく批判を展開する、アメリカのReason誌の記事「Elon Musk Says Peter Navarro Is ‘Dumber Than a Sack of Bricks’」を全文翻訳し、紹介したいと思います(翻訳掲載については、Reason誌から許可を得ています)。
※元の記事は以下です。

ピーター・ナヴァロは、アメリカ合衆国の経済学者・公共政策学者です。
現在、ドナルド・トランプ大統領の貿易・製造業担当上級顧問であり、トランプ政権の1期目では新設された国家通商会議(後に通商製造業政策局)のトップを勤めました。
2016年に文藝春秋から翻訳出版されたベストセラー「米中もし戦わば」の著者でもあります。
※ 本文に出てくる「レンガ袋」ですが、Dumb as a sack of bricksなどと使われることが多く、「能力や意志のない、くだらないもの」という意味の英語独特の表現です。
※ 太字は筆者です。
イーロン・マスク、「ピーター・ナヴァロはレンガ袋よりも愚か」と語る
マスクは正しい。
ナヴァロは愚かな経済観を持つ社会主義者で、何かの責任者に任命されるべきではなかった。
ドナルド・トランプ大統領の貿易顧問のトップが、「捨てられたレンガが詰め込まれた膨らんだゴミ袋」だったとしたらどうだろうか?
いや、本当に考えてみてほしい。
トランプが重要な会議のために閣僚を集めたとき、なぜか部屋の隅には大きな袋が置かれている。その黒いポリエチレンの側面は、中に積まれた何十個ものレンガと思われるものの鋭利な角を収めようとして、ぎこちない角度に伸びている。巾着の上部から抜け出た赤土のほこりが床に残っている。
ホワイトハウスのインターンがその袋を移動させようと苦労している。その袋は何もしゃべらないし、何も伝えない。何も考えていない。貿易赤字の意味について意見を述べたり、アメリカ経済の状況について誤解を招くデータを作り出すこともない。
そして自問してほしい。もしトランプがピーター・ナヴァロではなく、その「文字通りのレンガの袋」に助言を求めていた方が、アメリカはより良い状況にあったのではないか?
イーロン・マスクはそう考えているようだ。
ここ数日間、マスクは一連のツイートでホワイトハウスの通商政策最高顧問であるナヴァロを批判し、ナヴァロを「愚か者」と呼び、「ナヴァロは何一つ作り上げたことがない」と指摘した。
火曜日の朝、マスクはさらに核心を突いた。「ナヴァロはレンガ袋よりも愚かだ」と述べた。
Elon says Peter Navarro “is truly a moron” and that he’s “dumber than a sack of bricks” pic.twitter.com/pmQoFFXS7d
— Shelby Talcott (@ShelbyTalcott) April 8, 2025
私はどちらの人物とも直接会ったことがないため、それぞれの知性について直接的にコメントする資格はない。
しかし、より重要な問い―ナヴァロと文字通りのレンガの袋のどちらがトランプの貿易政策を導くべきか―に関しては、答えは明白だ。
ナヴァロを解雇し、レンガ袋を雇うべきだ。
ノア・スミスは先月Xで、ナヴァロがFox Newsで「関税は減税だ」と主張したことに対して、「ナヴァロはアメリカで最も間抜けな経済学者でありながら、最も影響力のある経済学者でもある」とコメントした。真実はナヴァロの言うことの逆である。つまり、関税は大増税なのだ。
Navarro is both the dumbest economist in America, and the most influential.
We’re being ruled by the worst people https://t.co/xuVX9aH7Go
— Noah Smith (@Noahpinion) March 31, 2025
それ以来、ナヴァロの欠点はさらに明らかになっている。
彼はケーブルニュースのインタビューでさらなるナンセンスを語るだけでなく、外国がトランプと関税引き下げ交渉をしようとするのを妨害していると報じられている。
昨日、EUとベトナムが、アメリカが同じことをするなら関税引き下げ交渉に応じる意向を示した後、ナヴァロは即座にその考えを一蹴した。
「EUやベトナムがゼロ関税を提案してきたとしても、それは我々にとって何の意味もない」とナヴァロは言った。
ナヴァロの経済的無知の根は深い。
2020年のReason誌の記事で詳述したように、ナヴァロは左翼的な政治キャリアが失敗に終わった後に、トランプ政権の最初の任期で最も力を持つ人物の一人となった。長年カリフォルニア州の政治評論家であるジョー・マシューズは彼を「サンディエゴのバーニー・サンダース」と呼んでいる。
この類似性は、現在の状況を多くの点で説明している。サンダースは、関税を長年支持し、自由貿易に反対し、消費者は市場での多様性や選択肢を必要としないと考える人物である。サンダースがアメリカの貿易政策を担当した場合、ナヴァロと何かが違っただろうか?
ナヴァロは選挙に負けたり、彼の立場を支持するために架空の経済学者をでっちあげたりするだけでなく、反成長的な地域コミュニティ組織を設立し、カリフォルニア州に今も害を与えている住宅建設規制のいくつかを固定化する手助けをしている。
確かに、そんな人物をに経済の大部分を任せるべきだとは思えない。
おそらく、トランプ政権にナヴァロを招き入れたのはジャレッド・クシュナーだろう。トランプの娘婿であるクシュナーは、選挙運動中にトランプが中国についてもっと具体的に話したいと思ったとき、ナヴァロをチームに引き入れたと言われている。
Vanity Fair誌のサラ・エリソンは2017年に、トランプがクシュナーに自分の見解の要約を渡し、調査を依頼したと報じている。クシュナーはネットで検索し、ナヴァロの本の一冊を見つけたのだ。
ナヴァロは現在、MAGA(Make America Great Again)の一員であるかもしれないが、その本質は社会主義者だ。
COVID-19パンデミック中、彼は「連邦政府の力が民間企業の力と融合することの美しさ」について詩的に語った。アメリカの貿易政策に対するナヴァロのビジョンは、ウラジーミル・レーニンが誇りに思うような自給自足経済のようなものだ。
これらの見解が十分に不適格でないならば、トランプはホワイトハウスでの実績によってナヴァロを解雇すべきだ。彼はトランプ政権の最初の任期中、ホワイトハウス国家貿易委員会のディレクターとして、ジョーンズ法(国内での船舶輸送を高額にする保護主義の法律)の改革を阻止する主要な役割を果たした。
この法案は、トランプ政権が苦境に立つカメラ会社イーストマン・コダックに7億6500万ドルの契約を与えるという愚かなアイデアを推進する原動力でもあった(その契約は幸いにも、証券取引委員会が調査を開始した後にキャンセルされた)。
明らかに、文字通りのレンガ袋はそのどちらも行わなかっただろう。
現在、ナヴァロは、株式市場から数兆ドルを蒸発させ、国を深刻な景気後退に陥れる可能性がある関税政策を推進している。それはトランプの他の政策や彼の遺産に明らかに深刻な結果をもたらすだろう。チャンスをもう一度与えるというのもありだが、ナヴァロはとっくにトランプからの信頼を失うべきだった。
マスクとナヴァロの対立は示唆に富んでおり、その結果は第2期トランプ政権の将来を大きく左右する可能性がある。
マスクには欠点がないわけではないが、彼は貿易の価値を明確に理解しており、これらの関税で意図的に経済を悪化させるのは大きな間違いだと認識している。彼は成功したビジネスを築き、市場が機能するようにすることが経済成長に必要であることを知っている(彼自身も政府契約を喜んで受け入れているが)。
一方、ナヴァロは何も築き上げていない。彼は失敗した政治家であり、うそつきだ。彼の愚かな経済思想は、予想通りの結果をもたらしている。
トランプはアメリカの貿易政策を社会主義者に任せるべきではない。レンガ袋の方がましだ。
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Reason誌記載の記事の翻訳は以上となります。最後まで読んでくださりありがとうございました。
「関税は減税」は意味不明ですね。消費者にとって大増税であるトランプ関税は今後どのような展開を迎えるのでしょうか。各国との交渉により、結果的に関税がより下がり、自由貿易の方向へ進むことを期待したいです。
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。