八潮市の道路陥没、復旧に5~7年:老朽インフラは全国にリスク拡大

埼玉県八潮市で今年1月に発生した大規模な道路の陥没事故を受けて、県は復旧に向けた具体的な計画を専門家の委員会に提示しました。計画では、壊れた下水道管の補修に加えて、新たにもう一本の管を設ける「複線化」という方法を取り入れ、工事の完了までには5年から7年程度かかると見込まれています。

委員からはおおむね賛同が得られましたが、地質調査や工事ルートの検討については慎重な対応を求める声もありました。

現在、現場では行方不明となっているトラック運転手の救出作業が進められており、下水の流れを一時的に別のルートへ逃がす工事や掘削作業が行われています。救出後に本格的な復旧工事に取りかかる予定です。事故現場は、12の市町から排水が集まる重要な拠点であり、複線化することで今後の修理や点検のための代替ルートも確保できます。

工事は約2キロの範囲にわたり、さらに下流の処理施設まで延ばす案も検討中です。工事には新たな土地の取得が必要になる可能性もあり、予算はまだ決まっていません。

事故後まもない現場のようす NHKより

この事故は、他の地域でも起こりうるものであり、同様の事態を防ぐためには、老朽化した下水道管を早急に交換していく必要があります。昭和の時代に整備された「流域下水道」は、複数の市町の排水を1か所に集める仕組みですが、この集中型システムがかえって被害を大きくし、修復を難しくしているとの指摘もあります。今後は、リスクを分散させる新しい考え方も求められます。

全国では、下水道の管路のうち、すでに耐用年数である50年を超えた部分が東京から名古屋に及ぶほどの距離にのぼり、今後20年間でその規模がさらに12倍に増えると見込まれています。老朽化した下水管が損壊すれば、八潮市のような事故が繰り返され、市民生活に深刻な影響を及ぼすことは避けられません。

これまでの「コンクリートから人へ」という政策もありましたが、日本のような災害が多い国では、インフラ整備や公共事業に継続的に予算をかけていくことが、今こそ必要なのではないでしょうか。減税の声もありますが、国民の安全と生活を守るためには、ある程度の税収を国土強靭化に活用する選択も重要だと考えます。