日産、7500億円赤字で無配転落:それでもホンダに“対等”を求めた末路

日産自動車は2025年3月期の連結決算について、最終赤字が最大7500億円に達する見通しを発表しました。

これは1986年以降で最大規模の赤字であり、主因は世界的な販売不振と、生産拠点の資産価値を見直したことによる5000億円超の減損損失、さらに構造改革費用の増加です。

営業利益は従来の1200億円から850億円に下方修正され、前期に15円だった配当も無配に転落する見込みです。

また、世界販売台数も従来見通しの340万台から335万台に引き下げられました。こうした業績悪化のなか、4月に就任したイヴァン・エスピノーサ社長は「資産の徹底的な精査を通じて再建に取り組む」と述べていますが、再建への道は平坦ではありません。

日産・内田誠社長と本田・三部敏宏社長 日産HPより

ふたたび注目されたのが、日産とホンダとの経営統合の協議が白紙となった件です。もともと政府やメインバンクが後押しするかたちで統合の話が進められていたものの、ホンダは最終的に統合を拒否しました。その背景には、日産側の財務状況が深刻であるにもかかわらず、「対等合併」を求め続ける姿勢に対する不信感があったとされています。業績の実態を隠したまま交渉を進めようとしたのではないかという疑念も一部で指摘されています。

さらに、日産の企業体制に対しても厳しい声が上がっています。執行役員が60人以上にのぼり、役割が重複しているポストも多く、組織のスリム化が進んでいないとの指摘があります。社内の意思決定が保身的で、経営責任の所在も曖昧であることから、「この状況で合併を断るとは何様なのか」「役員報酬の返還を求めるべきだ」といった批判も強まっています。

このような状況下で日産は、英Wayve社と提携し、生成AIを活用した自動運転技術の開発を進めています。2027年度には市販車への搭載を目指すとのことですが、開発費の削減が続けば、商品力の低下や競争力の喪失にもつながりかねません。

日産には、「かつてのようにヒット車種で市場を沸かせてほしい」という期待の声がある一方で、組織の硬直化とガバナンスの欠如に対して根本的な改革が求められています。

エスピノーサ社長が掲げる「こんなものではない日産」を再び示すには、業績回復だけでなく、経営体制そのものの刷新が急務です。