同姓同名を簡単に間違える
米オープンAIの対話型のAI(人工知能)「ChatGPT」がどんな情報を集め、分析してくるか、時々、試しています。自分のよく知らない対象ではなく、ブログを書いている私自身をどうみているかは、Chatの能力を容易に判定できますから、私のブログの評価を聞いたりしています。

OpenAI HPより
今日は「新聞記者OBの中村仁さんのブログをどう評価しますか」と、質問してみました。私はGOOでブログを書き、それをアゴラに転載してもらっています。GOOよりアゴラのほうが社会的評価が高いせいか、アゴラへの投稿、それへのコメントを情報収集の対象にしているようです。
Chatさんからきた回答を拝見して、驚いたのは「中村仁さん(元日経新聞記者)は・・・」という書き出しでした。私は読売新聞の経済記者で、財務省、日銀、通産省などを担当してきました。それがなぜ「元日経新聞記者」になったのか。ブログにも明確に書いてある出身の新聞社の名前を簡単に間違える。
そこでChatさんに「その部分は間違いではないですか」と、質問すると「おっしゃる通り、中村仁さんは元読売新聞の記者であり、私の回答に誤りがあったことをお詫び申し上げます」との返事です。
さらに「Chatさんはよく勘違いがありますね。なぜですか」と、聞いてみました。そうしますと、「Chatは似た情報を学習しているため、『中村仁』という名前、『新聞記者OBなど類似したプロフィールを持つ人物を混同することがあります」、「私は『記憶』ではなく、その場での推論(確率的な文章生成)に基づいて応答を作っています」と述べました。
「ユーザーからの質問が短かったり、情報が曖昧だったりした場合、文脈の補完を試みます。その補完が外れることがあり、間違った回答になることがあります」との返事もありました。短い質問ではなく、ある程度、詳しくすれば、勘違いの回答を減らせる」ということなのでしょう。
ついでにと思い、しばらく時間をおいて「新聞記者OBの中村仁さんという人物はどんな人ですか」と尋ねてみました。驚いたのは、別人の「中村仁さん」の写真が添えられ、私の職歴、ブログ活動、さらに昨年春、新型コロナにかかり重度の急性肺炎で入院、しばらく自宅療養をしたことまで付記してありました。写真の間違い以外は正確で人物、ブログの評価はバランスがとれ、好意的でした。問題は別人の写真の掲載です。
下の二枚の写真をご覧ください。左が私です。右側が別人の「中村仁さん」です。人物検索をすると、別人の「中村仁さん」は恐らく実在の人物で、飲食店向けの予約システムの会社を経営しています。私より若くイケメンです。Chatさんに「別人の写真が掲載されています」と指摘しました。
人物検索では、同姓同名(中村仁)のレーサー、研究者、声楽家、証券会社運営、弁理士などが複数の人物が紹介されています。Chatさんは「確かに別人の可能性があります。同姓同名の人が複数存在すると、こうした間違いが起きることがあります。アゴラのサイトを掲載しておきましたので、著者紹介をクリックすると、新聞記者OBの中村仁さんの写真が載っております」とのことでした。それにしても、新聞記者OBの写真が別の職業の人物にすり変わるのか理由が分かりません。
一年半前に経済学者の野口悠紀雄氏が「超創造法/生成AIで知的活動はどう変わる」(幻冬舎新書)を出版しました。その中で「AIの答えは間違いだらけ。事実の誤り、論理の誤り、数学的誤りが多い。ウェブのある資料をまとめているに過ぎない」と、批判しました。
その後、生成AIは技術進歩をしているだろうと想像していましたら、ご紹介したような単純なミスを今も繰り返しているようです。何年か前、ソフト関係の知人の経営者のことをChatさんに聞きましたら、全く別の「ブックオフ(古本販売)の経営者」と紹介してきました。
為替レート、例えば、「2013年から10年間の年間平均相場はいくらですか」と聞いたことがあります。ほとんどが正しかったのに、突然、直近の相場としてとんでもない数字を回答してきました。この為替相場、人物の職歴、本人の写真などをメディアが間違えれば、訂正ものです。SNSやChatさんのような場合、間違っていても、厳しく批判されません。Chatさんなどは使い方では社会的に極めて有用ですから、今後とも正確を期して下さい。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2025年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。