7月に行われる参議院選まで2か月程度となりましたが、あまり盛り上がる感じがしません。その中で最近、新田哲史氏の予想が週刊フジに掲載されています。新田さんの経歴は読売新聞記者から雑誌の編集長などを経ているのですが、池田信夫さんのアゴラの編集長をしていた時期もあり、私も知っています。
知っている人だからどうこう言うわけではないですが、参議院予想がまだ少ない中、ざっと目を通しました。ざっくり言うと野党優勢の選挙区もあるが、野党がまとまっているわけでもなく、与党の過半数割れとは「紙一重」と述べています。氏の具体的な予想数値を見ると議席数を減らすのが自民、公明、共産、社民でその分、増えるのが国民と立憲でほかの野党は増えても1議席程度と読んでいるようです。

野田代表・斎藤代表・玉木代表・石破首相 各党・首相官邸HPより
現時点で細かい数字まで予想する意味があるのかという疑問はありますが、新田氏の考えはある程度世論の期待している数字でもあり、違和感はありません。
政治と世論の感性はある程度の時間軸でうねるものです。アメリカが二大政党による交代劇をするのも、韓国で凝りもせず、汚職や弾劾で相手方を引きずり下ろすといった流れもうねりの一環だと考えています。オーストラリアにしろ最近選挙があったドイツにしても似ています。また与党が選挙時に世論の関心を引くためにより中道的な政策を打ち出しやすいのもよくある手です。一方、アメリカのように二大政党の場合は相手を徹底的に叩きのめすようなやり方をする場合もあります。いずれにせよ、世論は現状に満足し続けることがないので時間軸と共に与党政策に飽きが出てくる中、与野党の攻防が繰り広げられ、その趨勢をみるのがポイントになるのでしょう。
では石破丸はどうでしょうか?週刊文春がまたすっぱ抜きをした様です。首相にある男性が長年、石破氏に献金してきたもののそれが政治資金報告書に記載されていないというものです。その総額3000万円超。文春は特定の男性を指しており、その男性の声を反映しているのでその男性がウソを言っていない限り、石破首相は再び苦しい弁明を余儀なくさせられることになります。
文春を含め週刊誌報道ではこの手の特ダネは割と古くからつかんでおり、報道するタイミングを計っています。報道する側としては当然雑誌の売れ行きを考えたビジネス的判断でありますが、すっぱ抜かれる本人にとっては最もタイミングの悪い時期にあたるわけです。
今回の選挙は参議院選なので政権へのインパクトは限られるといえば限られますが、与党が過半数を取らなければ政権運営は非常に苦しいものになり、負け方次第では首相の責任問題に発展しやすくなります。
石破氏への支持率は各社いろいろありますが、概ね1/3がYESで2/3がNOを突き付けています。数字としてはさほど悪くはない気がします。つまり石破氏のスタイル、個性ではなく政治信条が与党なのに野党っぽく、中庸でマイルドな感じが世論からするとどうやっても引きずり下ろしたいという憎しみ的な反石破体制が生まれにくいのだとみています。
当然、野党はこれではやりにくいわけで今回のように文春砲が出ると野党からすれば「よくやってくれた文春さん!」と小躍りしている野党幹部もいるのではないでしょうか?
しかし、「盛り上がらない参議院選」というタイトルの通り、それでは敵失であって野党が長打やホームランで点を挙げたわけではないのです。当然盛り上がりはかけてしまいます。
ところで国民民主がなぜ人気急騰なのでしょうか?もちろん「103万円問題」を提起したこともあります。ですが、私はそれよりも組織が比較的一丸となっている点が大きい気がします。立憲は割れているし、維新も吉村氏の兼任が多すぎて捌ききれないから前原氏に一部任せているのですが、それで維新の顔がボケてしまったように見えるのです。共産は田村さんのカリスマ性がなさすぎです。時代が共産支持とはかけ離れている中、勢力を盛り返すには党の名前を変え、強いリーダーシップが必要なんです。ビジネスの世界でいうリストラや再構築ができていない野党が多すぎるのです。
国民民主の人気は玉木雄一郎氏の性格もあります。これは私が石破氏は個性よりも政治信条を重視したのに対して玉木氏の場合は賢いのに不倫問題噴出といった英雄色を好む的な「しょうがないなぁ」と思わせる緩さがあるのです。もしもこれが石丸伸二氏だったらどうか、といえばバッシング的盛り上がりを見せるはずです。(事実、石丸氏は抱えていた訴訟が最高裁で敗訴したこともあり、都議選の戦略では苦心しているようです。)安倍晋三氏もトランプ氏のそうなのですが、強い性格の人は批判も多いのです。それをかわし切ってよじ登れるか、批判に負ける道を歩まねばならないのです。
その意味で今の政党の党首には強い性格の方がいないと思います。公明の斉藤さんなんて国交大臣をやっていた時を含め、存在感ゼロでしょう。
これらを見ても盛り上がる選挙にはなりにくいと思います。むしろ6月22日の都議選の方が面白いかもしれません。これが逆に参議院選の盛り上がりを欠く原因の一つになっているとも言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月8日の記事より転載させていただきました。