パナソニックHD、黒字でも1万人削減へ:足りないのは「人手」じゃない?

パナソニックホールディングス(HD)が約1万人規模の人員削減に踏み切る方針を発表しました。

黒字を維持しているものの、固定費の高さと収益性の低さに対する危機感が背景にあります。

楠見雄規社長は9日の会見で、「同業他社と比べて販売管理費率が5ポイントほど高い」と説明し、固定費構造に抜本的な見直しが必要であると述べました。

パナソニック採用パンフレットより

人員削減と併せて、収益性の低い事業の整理も構造改革の柱に掲げていますが、現時点でその具体的な内容は明らかにされていません。同社は現在、車載電池、空調、サプライチェーン向けソフトウエアの3分野を成長領域と位置付けています。

 

かつての競合であるソニーグループや日立製作所は、経営不振をきっかけに事業ポートフォリオの再編を進め、それぞれエンターテインメントやデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に軸足を移して成長を遂げました。一方、パナソニックHDは依然として家電中心の事業構成にとどまっており、抜本的な改革が急がれます。

https://twitter.com/keru_career/status/1920763194856833200

楠見社長は、「人員に余裕がある状態では創意工夫が生まれない。少し足りないくらいがちょうどよい」と述べ、限られた人員体制での生産性向上が重要であると強調しました。また、「固定費を抑えることはグループ全体に再び根付かせたい理念だ」と述べ、人件費削減の必要性を訴えました。

今後は、不振の事業を2025年度中に見極め、撤退や事業譲渡を含めた再編を進める方針です。人員削減にとどまらず、非中核事業の撤退や拠点の統廃合など、事業構造全体の見直しが進められる見通しです。

なお、労働市場では深刻な人手不足が続いており、その中での大規模な人員削減には懸念の声もあります。特に待遇面で人材確保が難しい現場では、「人手不足」と「人員余剰」が同時に語られる矛盾も浮き彫りになっています。

今回の決断は、単なるコストカットではなく、競争力を高めるための構造改革であり、日本企業に求められる経営の転換を象徴する動きとも言えます。終身雇用や年功序列に基づく従来の働き方が見直される中、就職活動においても「大企業=安定」という考え方の転換が求められているようです。