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会社では様々な場面で「責任」を引き受ける機会があります。すべての責任を無条件に引き受けることも、すべてを避けることも、どちらも適切ではありません。重要なのは、自分の能力、組織の状況、そしてリスクと機会を総合的に判断することです。
困難な案件への向き合い方
会社にはリスクを伴う様々な責任が存在します。困難な案件を避け続けていると、挑戦を避ける人という印象を持たれる可能性があります。一方で、無計画に責任を引き受けると、自分の能力を超えた問題を抱えることになりかねません。
責任を引き受ける前に考慮すべき点として、まず自分がその案件に対してどの程度の影響力を持てるかを冷静に評価する必要があります。また、失敗した場合のリスクと、成功または適切に処理した場合の見返りを天秤にかける必要もあります。
赤字プロジェクトの撤退処理や、問題を抱えた案件の収束など、一見誰も引き受けたがらない仕事があります。これらの案件に関わることで、問題解決能力を示す機会になる可能性はありますが、同時に大きなリスクも伴います。
例えば、既に問題が深刻化している案件では、途中から参加しても責任の一端を負うことになります。「私が参加した時には既に手遅れだった」という言い訳は、多くの場合通用しません。また、撤退処理がうまくいったとしても、それが必ずしも高い評価につながるとは限りません。組織によっては、失敗案件に関わったという事実だけでマイナス評価となることもあります。
案件の見極めと対処方法
もし困難な案件に関わることを検討する場合は、以下の点を慎重に確認する必要があります。
第一に、その案件の真の状況を把握することです。表面的な情報だけでなく、なぜその状況に至ったのか、これまでどのような対策が取られたのか、関係者の本音はどうなのかを理解する必要があります。
第二に、自分が関わることで何が変わるのかを具体的に想定することです。単に「頑張る」では不十分で、具体的にどのような行動を取り、どのような結果を目指すのかを明確にする必要があります。
第三に、組織文化を理解することです。挑戦を評価する文化なのか、失敗を許容しない文化なのかによって、同じ行動でも評価は大きく異なります。
困難な案件に関わる場合、最も重要なのは「撤退ライン」を明確に設定することです。どこまでやってダメなら手を引くのか、どの程度の損失までなら許容できるのかを事前に決めておく必要があります。
また、一人で抱え込まず、上司や関係者と密にコミュニケーションを取ることも重要です。問題が発生した際に「なぜ相談しなかったのか」と言われないよう、定期的な報告と相談を欠かさないようにしましょう。
最終判断における心構え
責任の引き受け方に正解はありません。自分のキャリアプラン、現在のポジション、組織の特性、案件の性質など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。
困難な案件が必ずしも避けるべきものではありませんが、安易に「チャンス」と捉えるのも危険です。冷静な分析と慎重な判断、そして引き受けた後の着実な実行が求められます。最終的には、自分の判断に責任を持ち、その結果を受け入れる覚悟が必要です。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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