Switch2メルカリ転売がこれほど炎上した理由

黒坂岳央です。

2025年6月5日、待望の新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」が発売された。

だが、発売初日からSNSやネット掲示板上には不満と怒りの声が渦巻いた。その原因は、フリマアプリ「メルカリ」で横行した高額転売。定価4万4,980円(税込)の本体が、発売当日には7万円前後で多数出品されているためだ。

SNSでは賛否両論が巻き起こり、そもそもの転売活動の是非、メルカリの対応などが問題になっている。本稿では、この転売騒動がなぜ炎上したのかを多面的に分析し、問題の根幹にある構造的な課題を考察したい。

任天堂「Nintendo Switch 2」

消費者の怒りが噴出した理由

転売が炎上した主な理由は、「任天堂の好意をメルカリが踏みにじったように”見える”」からと分析する。

そもそも、これだけ大規模炎上と転売ヤーの発生がするには強力なニーズがその根底に必要になる。それについていえば、Switch 2は初代Switchの成功を受けて登場した後継機、グラフィック性能の大幅向上や新しいインターフェースが話題で発売前から予約抽選に何十万人が殺到する人気ぶりだった。

任天堂はこの人気を踏まえ、転売対策として独自の抽選条件を導入。具体的には、応募者に「Nintendo Switch Onlineの有料会員として1年以上登録」「過去に50時間以上のプレイ履歴がある」ことなどを求めた。さらに、日本国内向けモデルの価格を海外版よりも安く設定するなど、ファン重視の姿勢を明確にした。

このような任天堂の心が伝わる対応に対し、メルカリでは数万円利幅を乗せて販売するユーザーが続出。結局、任天堂の出血サービスをメルカリと転売ヤーが横取りした構図となったことで多くの消費者の怒りを買ったのだ。

転売自体は違法ではない!だが…

転売自体は市場原理に基づいた経済活動の一部であり、違法ではない。筆者は転売ヤーを擁護するつもりはないし、この騒動も長年のゲームファンの一人として気持ち良くは感じない。だが需要がある以上、高値でも買う人がいることは問題ないし、ビジネスの本質は「安く仕入れて高く売る」なのでここを否定する根拠を示すことは難しい。

だが、フリマアプリが「なんでもあり」となれば「合法」が免罪符となり、経済的合理性だけが大正義になる。

しかしSwitch 2のような商品においては、次の3点で問題が指摘される。

  1. 任天堂の抽選制度や価格設定の“意図”を悪用していること
  2. 本来のターゲットである子供やライトユーザーが不利益を被っていること
  3. ブランドのイメージや消費者との信頼関係を損ねる結果になっていること

このため、「合法であること」と「社会的に許容されること」は一致しない。

また、フリマアプリではこれまで、盗品が疑われる商品や食品のマーケットになったことで度々問題視されている。

経済的合理性はできるだけ優先しつつも、一線を越えた不健全な手が入ることにはできるだけ規制する必要はあるだろう。そうでなければダークウェブとの違いがわからなくなり、「社会悪や犯罪の温床」という悪評や印象を呼び込む事になりかねない。

転売ヤーへの不買運動は効かない

今回の炎上騒動で「転売ヤーに不買運動だ」という意見も多数見られた。メルカリに「通報」が有効でない可能性は高く、誰も買わなければこの問題は解決する。需要がなければ供給は断たれるのだ。

しかし、これは現実的ではない。なぜならその根底にはあまりに強力な需要が存在するからだ。YouTubeにはすでに多数のニンテンドースイッチ2のプレー動画が投稿されている。これから新しいソフトが出るたび、新たな作品が提供されるだろう。

そうなるとたとえばゲーム配信者にとって「持たざるもの」のリスクはすさまじい。動画クリエイターにとって旬のゲーム配信ができない機会損失は看過できず、どれだけ割高でも転売ヤーから買わざるを得ない。数万円程度高いコストはたった1回の先行配信の広告料で十分ペイできる。今回はそこに純粋にゲームを楽しみたいユーザーが巻き込まれてしまったわけだ。

今回のSwitch 2転売騒動は、単なる「一部の悪質なユーザーの問題」ではない。任天堂の供給体制、メルカリの運営構造、そして我々消費者の行動が複雑に絡み合って引き起こされた、現代型の社会的問題である。

ゲームは本来、誰もが平等に楽しむべき娯楽だ。だが現実には、その入口すら「資金力」や「情報格差」で歪められてしまっているだろう。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。