令和の若者は大学より工業高校に行きなさい

黒坂岳央です。

過去記事で何度か書いてきたが、もはや「大学進学は有利」という従来の常識は、揺らぎつつある。

AI技術は目覚ましく、大卒者が目指す多くの事務職、企画職、営業職、経理職などはAIに代替されるリスクが高まっている。

筆者は工業高校の電気科出身で、同級生の多くは電気工事士や配線工事といったインフラ系の現場に進んだ。そんな自分から見ても、インフラ系の仕事はAI時代においてきわめて合理的かつ持続可能なキャリアであると考えている。

一方で、インフラ関連職である電気、ガス、水道、道路などの分野が輝く。「やりたいことはとりあえず大学に入ってから考える」とか「デスクワークで働きたいから大学へ」という時代が終わり、新たな世界が幕を開けたのだ。

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インフラ業務がAI時代に輝く理由

インフラ作業は現場での物理的な対応が不可欠だ。配線や配管、道路補修などは一つとして同じ状況がなく、ロボットによる完全自動化には技術的にもコスト的にも限界がある。

もちろん「ロボットが進化し、エネルギー問題が解決すれば代替可能では?」という指摘はあるだろう。しかし、そんな時代になれば物理要素が少ないデスクワークの状況は今より人手を必要としなくなる。リスクはどちらが大きいか明らかだろう。

また、インフラ業務は厳しい法規制や資格制度に守られている強みがある。資格取得には一定のハードルがあるが、一度取得すると安定したニーズがあり、業務の責任を明確化する必要性から人間の判断や行動が求められ続ける。

さらにあっという間に消滅した「議事録作成」といった新人が担う業務と異なり、インフラは世界中で人間が社会生活を営む上で必ず必要になる。水やガス、電気にまつわる機械が壊れれば必ず修理が必要になり、それは人口減少が進む日本で、インフラの保守・管理の需要は衰えないどころか担い手不足でさらに強まる。

実際、現在のインフラ系技能職の求人倍率は工業高校卒業生で約20倍という超売り手市場であり、電気工事士の平均年収は約550万円と、日本の平均年収(約460万円)を大きく上回っている。さらに、成績中程度(中学オール2~3程度)でも、トヨタ系や東証プライム企業など大手への就職実績が豊富で、初任給20万円以上、賞与4~7ヶ月という待遇も魅力的だ。

また、インフラ職の大きな特徴は地域格差が少ないことである。都会であろうと地方であろうと、インフラが必要である以上、働き場所を自由に選べ、物価の安い地方でゆとりのある暮らしを送ることも可能だ。

ただし、愛知県や北関東のような工業地帯では大企業への就職が特に強く、工業地帯が少ない地域では地元中小企業や公共事業関連の仕事が中心となる場合がある。それでも、インフラの普遍的な需要は地域を問わず安定している。

大卒から事務職を目指すルートはオワコン

無計画に大卒進学をすると、多くの人は安易に事務職やホワイトカラー職に目を向けがちだ。「肉体労働や接客業を避けるため大学へ」という人も少なくない。だが、この分野はすでに人余りが深刻であり、AIによる淘汰の影響をまともに受けることになる。

人手不足の今の時代でも、すでに事務職は深刻な人余りで、高度なスキルを必要としないデスクワーク職は今後も昇給が期待できない。企業は採用に困ることはなく、AIによる置き換えも進むからだ。もちろん、高度専門職や人手が入ることに高い付加価値が生まれるような仕事は残るだろうが、今後そうした仕事に付ける人は例外になる可能性はある。

さらに状況は変わる。今後、AGI(汎用人工知能)や量子コンピュータなど、今後現れる未知のテクノロジーが「デスクワークにおけるテールリスク」となるだろう。

以上のことから考えなしに大学へ行くのは大きなリスクになった。若ければ軌道修正も可能だが、年を取ってからAI失業すれば行き先に困る可能性も出てくる。

もちろん大学進学を全否定するものではない。医師や研究職など、大卒資格が必要な職もあるし、大学で得られるものも多い。しかし「なんとなく大学」という選択肢は、もはや合理的とは言えない。

令和時代においては、AIに強く、地域にも左右されず、安定した需要と収入が見込め、投資対効果も高い「工業高校」という選択肢を真剣に検討するべきである。ただし、仕事内容や地域の就職環境を理解し、自分に合ったキャリアを見極めることが重要だ。 キャリアの常識は、時代とともに変わる。柔軟に構え、現実に即した選択を取れる者こそが、これからの社会を生き抜いていける。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。