空前の人手不足なのに50〜60代は「人材過剰」の現実

パーソル総合研究所は、企業の約4割が50〜60代社員に対して「人材が過剰」と感じているという調査結果を発表しました。年齢を理由に処遇を一律に見直し、職責を軽くすることで本人の意欲や生産性が低下し、それがさらに過剰感を強めるという悪循環が明らかになったと日経新聞は分析しています。

この調査は、従業員300人以上の企業で働く人事・総務担当者を対象に行われ、有効回答は1,028件でした。50代の社員について「過剰」「やや過剰」とした企業は38%、60代では36%にのぼり、特に大企業でその傾向が強く見られます。

60代社員を「過剰」とみなす企業では、「本人のモチベーションの低下」や「生産性の低さ」が課題として挙げられる割合も高くなっています。60歳や65歳で処遇を見直す企業のうち8〜9割は年収を引き下げており、60歳での平均引き下げ率は28%に達します。

一方で、こうした人材評価に対しては疑問も呈されます。人手不足を訴える一方で、年齢層によっては過剰とされるという姿勢には矛盾があるとの見方もあります。

バブル崩壊後から就職氷河期にかけて社会を支えてきた世代に対し、「処遇を下げて責任を軽くし、やる気を削いでおきながら過剰だと言われるのは理不尽」との声が現場では根強くあります。

年収が下がっても職務に大きな変化がないケースも多く、結果として「頑張ってもサボっても同じ給与なら、やる気は出にくい」といった空気が職場に漂います。

企業は、年金の兼ね合いで退職をした後に低待遇とすることで雇用を維持していますが、こういった慣行もそろそろ限界なのかもしれません。

働き手が不足している今、高齢層をどう扱うかは一貫した戦略が求められます。

上述のパーソル総研の藤井薫上席主任研究員は、「能力や経験は60歳を境に失われるものではない」と指摘し、適所適材の配置や職務・役割に応じた納得感のある処遇の必要性を強調しています。若い人材ばかりに目を向けるのではなく、多様な年齢層が意欲をもって働ける環境づくりが求められています。

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